10月中に私は高山本線を訪れ、普通列車および特急「ひだ」に乗りました。
普通・特急どちらを選んでも乗り鉄し甲斐のある、風光明媚なローカル線でした!

2022年12月現在も特急「ひだ」には既存車両キハ85系および、新型車両HC85系が使用されていますが、ついにキハ85系が特急「ひだ」定期列車から撤退することに。

JR東海は12月16日、2023(令和5)年3月18日に行うダイヤ改正について発表し、その中で特急「ひだ」定期列車をHC85系に統一することを明かしました。
当サイトでもHC85系のことを書こうとしていましたが、少し時間が空いてしまったのでこのタイミングでやります。

今回は、2023年3月18日ダイヤ改正以降の「ひだ」定期列車を統一するHC85系の概要と、高山本線のダイヤ改正について見ていきます。



120km/h出せるハイブリッド特急

JR東海のHC85系は、2022(令和4)年7月1日より特急「ひだ」で運行開始した特急形ハイブリッド車両
「HC」とは「Hybrid Car」を意味します。

外観は、窓下にオレンジのラインが入っているキハ85系とはうって変わり、前面下部から側面にかけて斜めにオレンジラインが上がり、窓上にラインを配したデザインになっています。

側面も凹凸の無い、平たく滑らかなフォルムになりました。
が、「Hybrid」と掲げたロゴマークと、そのからへのグラデーションが目を惹きます。
種別・行き先表示は大型のフルカラーLED表示なので、情報量も多く分かりやすくなりました。

駆動システムがハイブリッド方式ということで、主電動機を介して、ディーゼルエンジン1台と主蓄電池それぞれの電力を使って走行します。
客室内の設備への給電には、主に蓄電池の電力を使っているそうな。

加速する際は、エンジンによる発電を中心にモーターを駆動させます。
状況によって蓄電池の電力で補助し、高速走行を行うことができるんだとか。

ブレーキには回生ブレーキを使用し、減速時に発生した電気を蓄電池へと充電する仕組みになっています。
そこで溜めた電気は加速時のアシストや、客室内の設備に用いることができるようになります。
また、停車時にエンジンのアイドリングストップを行えるため、さらに静かに。

気動車と電車の中間、というかほぼ電車に近いシステムのためか、車両形式の記号は「キハ」「キロ」「キロハ」ではなく、「クモハ」「モハ」「クモロ」が使用されています。
そして、東海道本線内ではハイブリッド車両としては初の120km/h運転も行います。

内装には沿線らしさを

内装にも飛騨・南紀地区の要素をふんだんに取り入れています。

普通車の座席は、沿線の紅葉お祭り花火をイメージしたオレンジのグラデーション
ひじ掛けに電源が備え付けてあり、PCやスマホなどの充電ができます。

リクライニングレバーは電源のすぐ上に。
もちろん背面テーブルフックも使用可能です。

指定席は、高山止まりの編成は2・3号車、富山行きの編成は富山方先頭車両(10号車)にあります。
自由席は、高山止まりは高山方先頭車両(4号車)、富山行きは岐阜方先頭車両(9号車)です。
バリアフリー対応座席は3号車と9号車に備わっています。

グリーン車は絨毯敷きの客室で、座席は普通車よりさらにゆったりと。
沿線の新緑美しい川紫色の夕空をイメージした青色明緑色のグラデーションのモケットが使用されています。

グリーン座席では、電源、背面テーブル、フックに加え、ヘッドレスト・フットレスト読書灯も用意されています。
リクライニングした時、背もたれと一緒に座面も傾くありがたいおまけ付き。
グリーン車は岐阜方先頭車(1号車)となっています。

その他、大型の荷物スペース、無料Wi-Fi、多目的室も使用可能。
デッキには多機能トイレや、沿線の伝統工芸品を紹介する「ナノミュージアム」も設置されました。

眺望性そのまま静音性が向上!

高山本線の個人取材に行っていた時、下呂駅から白川口駅まで特急「ひだ2号」に乗車しました。
取材時点で「ひだ2号」にはHC85系が使用されていました。

HC85系による特急「ひだ2号」は7時32分に下呂駅を発車。
加速の音がユニークで、VVVFインバーターと思われる高音のノイズが聴こえた後にエンジンがかかります。

「(VVVF)ピィィィィー(エンジン)ガラガラガラガラガラ(加速)drrrrrrrrr…」
文字で説明するのが難しいけどこんな感じ。
ブレーキ緩解音も非常にかっこいい!

しかし、客室内に入ると加減速の音が聴こえにくくなります。
加速開始時にディーゼル特有の振動があるものの、体感としては小さめでした。
惰行中はエンジンの音もないので、まるで純然たる電車に乗っていると錯覚するほど静かです(他の利用者の会話は除く)。

キハ85系と違ってハイデッカーではありませんが、窓が大きいので眺望の良さは健在

発車後・停車前に流れる自動放送では、主に国鉄時代の気動車特急で聴けた「アルプスの牧場」のアレンジが流れます。
聴きなじみのあるメロディーが一段おしゃれな曲調になっていました。

今回は聞けなかったけど、観光案内の自動放送には沿線の高校生が参画しているとのこと。
次に乗る時は耳を傾けてみましょう。

「ひだ2号」は8時4分に白川口駅に到着。
名残惜しいですが今回はここで降りました。

従来の気動車よりも静かになり、客室設備も最新基準にアップデート
さらに車内の随所に沿線の要素も取り入れられています。
約30分しか乗らなかったのがもったいないほど車内は快適でした。

なので次回はもう少し長くHC85系を体感したいものです。



2023年3月18日よりHCで統一

2022年12月時点で、HC85系が使用されている特急「ひだ」は以下の通り。

下り(高山・富山行き)

  • ひだ1号(名古屋7時43分発・高山10時16分着)
  • ひだ3号(名古屋8時43分発・富山12時51分着)
  • ひだ15号(名古屋16時3分発・高山18時45分着)
  • ひだ17号(名古屋18時12分発・高山20時51分着)

上り(名古屋行き)

  • ひだ2号(高山6時46分発・名古屋9時12分着)
  • ひだ4号(高山8時0分発・名古屋10時34分着)
  • ひだ10号(高山12時34分発・名古屋15時5分着)
  • ひだ14号(富山13時2分発・名古屋17時4分着)

JR東海が12月16日に発表したダイヤ改正情報によれば、2023年3月18日より特急「ひだ」の全ての定期列車をHC85系に統一するとのこと。
臨時列車運行時の使用車両は分かりませんが、キハ85系による定期運行は3月17日で終了することが明確になりました。
なお、車両自体は置き換わるものの、1往復のみ設定されている大阪発着は存続します。

HC85系は、ハイデッカーではないけど眺望性はキハ85系に匹敵し、その上で静音性と各種設備が現代水準に向上しました。
そのかわり前面展望ができなくなったので、キハ85系に高山本線で乗るならお早めに。
キハ85系グリーン車で富山駅まで乗車したレポートを公開しています。

【2023/1/1 追記】2023年7月より、特急「南紀」に関してもHC85系を投入することが発表されました。
これにより、全ての定期列車がHC85系に置き換わるものと思われます。
臨時列車に関しては分からないので、詳細は今後の公式発表を待ちましょう。

一部特急の停車駅変更

特急「ひだ」の名古屋~高山間の停車駅は、尾張一宮駅、岐阜駅、鵜沼駅、美濃太田駅、白川口駅、飛騨金山駅、下呂駅、飛騨萩原駅、飛騨小坂駅、久々野駅、高山駅です。
岐阜駅、美濃太田駅、下呂駅、高山駅には全列車が停車します。

2023年3月18日のダイヤ改正では、一部「ひだ」の停車駅にも変更が加わります。

下り「ひだ1号」(名古屋7時43分発・高山10時16分着)は、改正前は岐阜駅、美濃太田駅、下呂駅にしか停まりませんでしたが、改正後は上記の全駅に停車するようになります。
高山駅への到着時刻は変わりません。

上りの「ひだ18号」(高山16時34分発・名古屋19時6分着)は途中、改正前は下呂駅、飛騨金山駅、美濃太田駅、岐阜駅に停まっていました。
改正後、高山駅の発車が16時33分となり、停車駅に飛騨萩原駅が加わります。

大阪発着便と併結する列車にも変更が加わります。
名古屋駅9時39分発の「ひだ5号」(岐阜駅から大阪発ひだ25号と併結)は、改正前は上記の全駅に停まっていましたが、改正後の途中停車駅は岐阜駅、美濃太田駅、下呂駅、高山駅のみになります。

そのため、高山駅の到着は12時14分となり、改正前に比べて10分短縮
終点の飛騨古川駅到着は12時35分で、改正前より9分速くなります。
大阪発の「ひだ25号」は高山止まりです。

改正前は高山駅15時33分発の「ひだ16号」(岐阜駅まで大阪行きひだ36号と併結)は、飛騨萩原駅、下呂駅、美濃太田駅、岐阜駅に停まっていました。
ダイヤ改正後、高山駅発車は15時34分となり、さらに飛騨萩原駅を通過します。
その他の発着時刻には変更が無く、名古屋駅には18時6分に着きます。

この中で速達化が著しいのは「ひだ5号・25号」ですが、その他の列車にも停車駅の変更が見られます。
3月18日以降にご旅行の際は、時間や停車駅の読み間違いに注意しましょう。

普通列車のダイヤの変化は

高山本線普通列車にもダイヤ改正で一部変化があります!

改正前、深夜の下り・高山行き(岐阜21時46分発・高山0時27分着)と、早朝の上り・岐阜行き(高山4時44分発・岐阜7時29分着)は、下呂~高山間で快速運転をしていました。
快速区間での停車駅は各停タイプの「ひだ」と同じです。

しかしダイヤ改正後、快速区間が丸ごと運転取り止めになります。
岐阜駅21時46分発の高山行きは下呂止まり(23時36分着)に、高山駅4時44分発の岐阜行きは下呂始発(5時35分発)になります。

このため、下呂~高山間の下り終電が約1時間10分早まり、上り初電が約40分遅くなることに。

かわりに日中の空白時間帯が改善されます!

下りでは、美濃太田駅9時55分発の下呂行き(下呂11時18分着)が高山行きに!
改正後、当該列車は下呂駅を11時35分に発車し、高山駅には12時34分に到着します。

上りでは、下呂駅13時59分発の美濃太田行き(美濃太田15時9分着)が高山始発に変わります!
改正後、当該列車は高山駅を12時45分に発車し、下呂駅には13時57分に到着
そこから先は改正前と同じだと思われます。

これにより下呂~高山間の普通列車が日中2~3時間間隔に改善されるので、4時間半または5時間半も待たされることがなくなります!
あわよくばもっと早くにテコ入れしてほしかったくらいです。

過去記事の高山本線乗車レポートは岐阜~下呂間、下呂~高山間、高山~富山間(ひだ13号)で区切っていますので、よろしければそちらもご覧ください。

さいごに

今回は、2023年3月18日のダイヤ改正で特急「ひだ」を統一するHC85系について、概要や体感、高山本線に関係するダイヤ改正内容を見てきました。

HC85系は、鉄道ファンの間では好みが分かれるかもしれませんが、鉄道に興味がない人の立場で考えるとかなり快適に過ごせる列車ではないかと感じました。
現代基準の設備と静かな空間はやっぱりありがたいですもの。

キハ85系の「ひだ」も素晴らしい列車です。
それだけに置き換えが残念に思う人もいると思います。

安全とマナーとモラルを守った上で、乗車・撮影をお楽しみください。

今回はここまで!
ありがとうございました!

参考

『鉄道ジャーナル 2022年10月号』 発行:鉄道ジャーナル社 2022年10月

『図解入門 よくわかる鉄道の技術と仕組み』 監修:秋山芳弘 著:阿佐見俊介、磯部栄介、出野市郎、佐藤盛三、千代雄二、鷲田鉄也 秀和システム 2020年11月

JR東海公式サイト
2023年3月ダイヤ改正について
車両のご案内 HC85系
NEW 特急ひだ 在来線新型特急車両HC85系

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