東京駅・新宿駅から関東各方面に発着する特急列車には、JR東日本独自の指定席特急料金(通年同額)が適用されています。
通常期・繁忙期・閑散期の区別がなくなり、比較的乗車しやすい料金になりました。
独自設定以外の特急料金は「A特急」「B特急」と区分されています。
房総特急にはB特急料金が残っていましたが、2024年3月16日ダイヤ改正で「成田エクスプレス」(成田駅まで)ともども指定席特急料金に変わりました。
そうなると、いよいよ首都圏で「B特急」なんて見なくなるんじゃ…、と思いきや!
武蔵野線沿線から鎌倉へ行く臨時特急「鎌倉」などは、今もB特急料金を適用しています。
首都圏近郊で季節の臨時特急に乗った時に、「いつもと料金が違う?」って思ったことはありませんか?
そこで今回は、首都圏の臨時特急を中心にまだ見かけることのある、B特急の料金体系について知っていきましょう。
もくじ
武蔵野貨物線経由の臨時特急
特急「鎌倉」は、主に土日の特定日に吉川美南~鎌倉間を1往復運行している臨時特急列車。
2024年8月時点ではE653系を使用しています。
途中停車駅は吉川美南方から順に、南越谷駅、武蔵浦和駅、北朝霞駅、新秋津駅、西国分寺駅、横浜駅、北鎌倉駅。
武蔵野線と他路線との乗り換え駅でこまめに乗客を拾った後、一気に横浜・鎌倉市内に入っていきます。
それにしても、西国分寺駅の次が横浜駅って、かなりの飛ばしっぷりに見えますよね?
実際約35分くらいドアが開きません。
実は西国分寺~横浜間では、府中本町駅から武蔵野貨物線に入り、他に旅客列車がめったに来ない梶ケ谷貨物ターミナル横を通過した上で、武蔵小杉駅南方で横須賀線と並行。
鶴見駅で乗務員交代を行ってから横浜駅に向かうルートになっています。
武蔵小杉駅も川崎駅も通らないので、武蔵野線内停車駅から横浜駅・鎌倉駅まで速い上に乗り換え要らず。
武蔵野線沿線民と、その乗換駅周辺の埼玉県民への恩恵が強い列車だと思っています。
ただし運行本数は1日1往復のみ。
先に走るのは南行で、吉川美南7時48分発・鎌倉9時36分着。
午後に北行が、鎌倉16時24分発・美南18時10分着で運行します。
アジサイが見頃を迎える6月には、「鎌倉(平日おさんぽ号)」が運行されるかもしれません。
快速を特急化、E257からE653へ
もともと特急「鎌倉」は、「ホリデー快速鎌倉」という快速列車でした。
しかも今まさに去就が注目されている185系を、2018年夏まで使用していました。
しかし、2018年夏から使用車両をE257系に変更し、2022年10月からはこれを特急化。
武蔵野線内は8両編成で限界(だと思われる)のため、使用されていたのは5両編成です。
これらの経緯を経て、2024年3月16日ダイヤ改正からは、特急「鎌倉」にE653系が使用されるようになりました。
こちらはE257系より古いとはいえ、7両編成に拡張され、鎌倉方先頭車両はグリーン車です。
2024年8月時点で、首都圏波動用のE653系は国鉄特急色と「フレッシュひたち」風の水色塗装の2種類が存在し、このどちらかが「鎌倉」で使用されます。
どっちが来るかは他の臨時特急との兼ね合いもあるでしょう。
B特急料金とは
特急「鎌倉」はバリバリ首都圏の特急列車。
首都圏の特急といえば、東京駅・新宿駅から、東海道・高崎線・甲信越・房総半島・常磐線に向かう定期特急列車は、全車指定席のかわりに特急料金がちょっと安いですよね。
以下の定期列車であれば、JR東日本独自の指定席特急料金が適用されます。
- 東海道本線:踊り子・湘南
- 高崎線:あかぎ
- 中央線:あずさ・かいじ・富士回遊・はちおうじ・おうめ
- 房総:しおさい・さざなみ・わかしお・成田エクスプレス(成田駅まで)
- 常磐線:ひたち・ときわ
「新宿さざなみ」「新宿わかしお」は臨時列車ですが独自料金が適用されます。
上記の定期特急の料金については過去記事をご覧ください。
「サフィール踊り子」は例外的にA特急料金。
「成田エクスプレス」は成田空港駅・空港第2ビル駅で乗降する際はA特急料金になります。
「だったら『鎌倉』も安く乗れるんだろ?」と思ったら、残念ながらそういうわけではありません。
「鎌倉」にはB特急料金が適用されています。
B特急料金は、以下のエリアで適用される、A特急よりも少し安い特急料金です。
本稿はJR東日本のみ掲載します。
- JR東日本の首都圏エリア
- 磐越西線(郡山~喜多方間)
- 白新線・羽越本線・奥羽本線
- JR東海・東海道本線熱海~三島間
- JR九州全域(例外を除く)
マップのイメージはこんな感じ。
これらの区間がB特急料金適用範囲になり、その料金(大人・普通車指定席・通常期)は以下の通り。
- 営業キロ50kmまで:1,050円
- 100kmまで:1,480円
- 150kmまで:1,890円
- 200kmまで:2,290円
- 300kmまで:2,510円
- 400kmまで:2,730円
- 401km以上:3,070円
閑散期はここから200円引き、繁忙期は200円増し、最繁忙期は400円増しです。
子どもは半額です。
普通車自由席のB特急料金は、上記の指定席料金から530円を引いた額で、それぞれ以下の通り。
- 営業キロ50kmまで:520円
- 100kmまで:950円
- 150kmまで:1,360円
- 200kmまで:1,760円
- 300kmまで:1,980円
- 400kmまで:2,200円
- 401km以上:2,540円
子ども半額で、通年同額です。
このため、「新宿さざなみ(わかしお)」や「踊り子」「あずさ」などの増発便を除き、臨時特急にはB特急料金が適用されます。
定期列車だけど「草津・四万」もB特急です。
B特急のグリーン料金
グリーン車を利用する場合は、特急料金にグリーン料金が加算されます。
JR東日本区間内で乗り降りが完結する場合、グリーン料金は以下の通り。
- 営業キロ100kmまで:1,300円
- 200kmまで:2,800円
- 400kmまで:4,190円
- 600kmまで:5,400円
- 700kmまで:5,600円
- 701km以上:6,600円
B特急のグリーン車で201km以上の大移動なんて稀だと思うので、基本的に1,300円か2,800円でお考えください。
主要5方面特急のグリーン料金はこちらに掲載しています。
この時、特急料金・グリーン料金の合計はこのように計算します。
乗車日に適用(繁忙・閑散期を反映)する普通車指定席-530円+グリーン料金
首都圏普通列車のグリーン料金はこちらをご参照ください。
「サフィール踊り子」のプレミアムグリーンなど、上記の例外もあります。
「鎌倉」の特急料金はどうなる
では、武蔵野線内と神奈川県内の行き来で「鎌倉」特急料金(普通車指定席・通常期・大人)はどうなるのでしょうか。
鎌倉駅・北鎌倉駅と武蔵野線内停車駅間の料金は以下の通りになります。
- 西国分寺:1,480円
- 新秋津:1,480円
- 北朝霞:1,480円
- 武蔵浦和:1,480円
- 南越谷:1,480円(北鎌倉)または1,890円(鎌倉)
- 吉川美南:1,890円
横浜駅から武蔵野線内停車駅までは以下の通り。
- 西国分寺:1,050円
- 新秋津:1,050円
- 北朝霞:1,480円
- 武蔵浦和:1,480円
- 南越谷:1,480円
- 吉川美南:1,480円
まとめると、鎌倉~武蔵浦和間と北鎌倉~南越谷間が1,480円。
どっちも吉川美南駅まで乗り通すと1,890円かかります。
横浜駅からは西国分寺駅・新秋津駅まで1,050円、北朝霞以遠は1,480円ということに。
ここに、閑散期・繁忙期・最繁忙期の値段増減や、グリーン車利用時はグリーン料金がかかります。
グリーン料金が付くとこう
特急列車のグリーン料金アリの特急料金は基本「乗車日の普通車指定席-530円+グリーン料金」です。
「鎌倉」の場合、グリーン料金はだいたい1,300円で済みますが、鎌倉~南越谷間と北鎌倉~吉川美南間で2,800円に跳ね上がる(走行距離100kmを超える)ので注意!
それを踏まえた上で、大人・通常期の特急料金合計(530円引き後の特急料金+グリーン料金)はこうなります。
- 横浜~西国分寺・新秋津:1,820円(520円+1,300円)
- 横浜~吉川美南:2,250円(950円+1,300円)
- 北鎌倉~南越谷:2,250円(同上)
- 鎌倉~武蔵浦和:2,250円(同上)
- 北鎌倉・鎌倉~吉川美南:4,160円(1,360円+2,800円)
えきねっとで少しお安く
なお、特急「鎌倉」は臨時特急ですが「えきねっと在来線チケットレス特急券」の対象です。
「えきねっと」のチケットレスサービスで「鎌倉」の特急券を買うと、紙の特急券から100円引きになります。
吉川美南~西国分寺間のいずれかから北鎌倉駅・鎌倉駅で乗降する場合、「トク割」で35%の割引を受けられることも。
吉川美南~鎌倉間の普通車指定席が、紙のきっぷで1,890円のところ、35%オフで1,220円(本来1,229円だけど一の位切り捨て)となり、かなり安く乗れます!
通常の特急料金が1,480円の場合は960円(962円を一の位切り捨て)となり、なんと1,000円切ります。
(諸条件あり、えきねっと公式も要閲覧)
このように、「踊り子」「あずさ」「ひたち」「しおさい」などの、今主要になってる特急列車とは料金システムが異なっている首都圏の臨時特急。
あちらの独自料金とはちょっと価格が違うので、把握しておくとより便利に乗りこなせるのではないでしょうか。
さいごに
今回は、首都圏発着の主要特急とは違う、B特急料金について解説しました。
「草津・四万」や臨時特急「鎌倉」などで、今もこの料金体系が適用されています。
JR東日本の公式サイトで季節ごとに発表されている臨時特急では、毎日運行している特急列車より少々料金が高くなるかもしれません。
元々はB特急料金が適用されてましたがね。
臨時特急「鎌倉」に関しては、「えきねっと」に会員登録していれば、特急料金をちょっぴりお安くできるかもしれません。
武蔵野線と横浜・鎌倉市を行き来する際に武蔵小杉駅・川崎駅での乗り換えが不要なのは大きなメリットなので、機会を見つけて乗ってみてはいかがでしょうか。
今回はここまで!
ありがとうございました!
参考
『日本鉄道旅行地図帳 4号 関東2』 監修:今尾恵介 新潮社 新潮「旅」ムック 2008年8月
JR東日本公式サイト きっぷあれこれ
えきねっと 在来線チケットレス特急券サービス
関連実績
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