今回は、JR東海在来線お得な特急料金についてのお話です。
JR各社で特急列車に乗る時、運賃に加えて特急料金を支払う必要がありますよね?

遠くに行くなら交通費が高いのも分かるけど、近距離で特急に乗ると結構な出費になりかねません。
にもかかわらず、ローカル線区では普通列車が少ないことも多いです。
できれば交通費は安くしたいけど、次の列車は特急で、普通列車も1時間は来ない…。

そんなピンチへの救済措置といわんばかりに、JR東海の在来線では、近距離利用時に自由席特急料金が安くなるお得な特急料金があります!
御殿場線それ以外の路線でそれぞれ決められているルールを知れば、上手に列車を乗りこなすことができるかも。

今回は、JR東海在来線のお得な特急料金と、それが適用される駅・区間をご紹介!
フリーパスやおトクな往復きっぷではなく、通常の特急料金であることをご承知おきください。
では見ていきましょう!


A特急料金の基本

お安い金額を知る前に、特急料金の基本を押さえておきましょう。

JR各社の特急料金は、基本的に「A特急」「B特急」の2種類。
A特急は基本的な特急料金で、B特急はそれより少し安い東日本・九州の特急料金です。
B特急料金(東日本エリア)についてはこちらをご覧ください。

JR東海管内では、熱海~三島間を除いてA特急が適用されています。
ゆーて三島駅まででもJR東日本独自の指定席特急料金のほうが最近よく見るんですがね。

普通車指定席(大人・通常期)のA特急料金を距離ごとに出していくと以下の通り。

  • 営業キロ50kmまで:1,290円
  • 100kmまで:1,730円
  • 150kmまで:2,390円
  • 200kmまで:2,730円
  • 300kmまで:2,950円
  • 400kmまで:3,170円
  • 600kmまで:3,490円
  • 601km以上:3,830円

ここから、閑散期は200円引き繁忙期は200円増し最繁忙期は400円増しになります。
子どもは半額です。

普通車自由席は指定席特急料金(通常期)から530円をマイナスした金額となり、以下のようになります。

  • 営業キロ50kmまで:760円
  • 100kmまで:1,200円
  • 150kmまで:1,860円
  • 200kmまで:2,200円
  • 300kmまで:2,420円
  • 400kmまで:2,640円
  • 600kmまで:2,960円
  • 601km以上:3,300円

通年同額、子ども半額です。

JR北海道の近距離利用だと少々料金が変わるのですが、基本的にはこのようになります。
「サンダーバード」「しらさぎ」をはじめ、JR西日本の多くもこんな感じ。

御殿場線特急は一律860円

これを踏まえた上で、JR東海在来線のお得な特急料金を解説していきます。
まずは話が早い御殿場線から。

2024年10月現在、小田急線から乗り入れて来る特急「ふじさん」が、御殿場線松田~御殿場間を走行しています。
小田急ロマンスカー・MSE(60000形)が使用され、6両編成の全車指定席となっています。

松田~御殿場間は23.3km、途中停車駅は駿河小山駅のみ(一部便が停車)。
御殿場線内の走行距離はかなり短いです。
この状況で特急料金がどうお得になるのでしょうか。

御殿場線では、指定席特急料金(通常期)は一律860円となっています。
グリーン車は(今は)ありません。
通常の普通車指定席料金が1,290円なので、430円値引きされています。

御殿場線内だけの行き来ならこれで済みますが、実際は小田急線・御殿場線を跨ぐこともあるでしょう。
主な駅から御殿場駅までの大人料金(乗車券+特急券・通常期)はこんな感じ。

  • 新宿:2,920円(1,310円+1,610円)
  • 新百合ヶ丘:2,680円(1,070円+1,610円)
  • 相模大野:2,500円(990円+1,510円)
  • 本厚木:2,230円(870円+1,360円)
  • 秦野:2,100円(740円+1,360円)
  • 松田:1,370円(510円+860円)

私鉄特急がJR線に乗り入れるのは個人的にロマンを感じますが、JR・私鉄を跨ぐ際に料金が加算されるのには注意しましょう。


50kmまでの自由席がグッと安い

つぎは「ふじさん」以外の特急について。
JR東海のお得な特急料金はここからが本番です。

同社の在来線特急のうち、以下の列車と該当区間にお得な特急料金が適用されています。

  • ふじかわ:富士~甲府
  • 伊那路:豊橋~飯田
  • しなの:多治見~塩尻
  • ひだ:岐阜~猪谷
  • 南紀:※名古屋~新宮

※伊勢鉄道線を通行する場合、JRの料金に加えて伊勢鉄道線内の料金が加わります

自由席特急料金が安くなる条件は、上記の区間で普通車自由席を利用すること。
そして、1回の乗車距離が30kmまたは50km以内に収まること!

お得な特急料金は、乗車距離が30km以内だと330円
50km以内だと660円で、とくに前者は通常の760円に比べて半額以下になります。
これに加えてJR線内の普通乗車券は、30kmまでで最大590円、50kmまでで最大990円です。

いずれも都市部から離れていくにつれて普通列車が少ない線区に入っていきます。
だから、普通列車の少ない本数を補いつつ、短距離での特急利用時に負担がかかりにくいようになっています。
路線ごとに見ていきましょう。

身延線「ふじかわ」では

身延線を走行する特急「ふじかわ」には、3両編成の373系が使用されています。
朝夕の静岡県内では「ホームライナー」としても見かけることがあるでしょう。
静岡~富士間は東海道本線を走行し、富士駅でスイッチバックして身延線に入ります。

画像:写真AC

身延線内で、営業キロが30km以内に収まる特急停車駅(富士に近い順)とその距離は以下の通り。
以下の場合で「ふじかわ」を利用すると、自由席特急料金は330円になります。

  • 富士~富士宮(10.7km)
  • 富士宮~内船(23.4km)
  • 内船~甲斐岩間(26.2km)
  • 身延~市川大門(26.3km)
  • 下部温泉~東花輪(24.6km)
  • 甲斐岩間~甲府(28.1km)

次に、身延線内で営業キロが50km以内の特急停車駅と距離はこの通り。
この場合の「ふじかわ」自由席は660円になります。

  • 富士~身延(43.5km)
  • 富士宮~甲斐岩間(49.6km)
  • 内船~南甲府(49.9km)
  • 身延~甲府(44.9km)

50kmまでの特急利用なら、路線のだいたい半分くらいまで縦断できます。
自由席は富士方の2両(3号車・2号車)ですが、車端部のセミコンパートメントは指定席です。
また2号車はまるまる指定席になる日もあるそうなので注意されたし。

飯田線「伊那路」では

飯田線豊橋~飯田間で運行する特急「伊那路」も、3両編成の373系を使用しています。
1日2往復運行です。

私鉄の集合体みたいな形で国有化されたため、JRの山岳ローカル線にしては異常なほど駅数が多いのも一つの特徴。
身延線以上に長い路線なのに速度を出しにくい線形が多いため、特急列車でも全然遅いです。
それでも停車駅同士を行き来するとなれば、特急に乗れたほうが便利ですよね。

飯田線内で営業キロが30km以内になる停車駅(豊橋に近い順)とその距離は以下の通り。
この場合に「伊那路」自由席は330円になります。

  • 豊橋~新城(21.6km)
  • 豊川~湯谷温泉(29.3km)
  • 湯谷温泉~中部天竜(24.4km)
  • 中部天竜~水窪(11.9km)
  • 水窪~温田(27.9km)
  • 平岡~天竜峡(22.4km)
  • 温田~飯田(27.1km)

次に、営業キロが50km以内になる特急停車駅と距離は以下の通り。
この時「伊那路」自由席は660円になります。

  • 豊橋~湯谷温泉(38.0km)
  • 新城~中部天竜(40.8km)
  • 本長篠~水窪(42.2km)
  • 中部天竜~温田(39.8km)
  • 水窪~天竜峡(41.9km)
  • 平岡~飯田(35.5km)

自由席は豊橋方の2両(3号車・2号車)で、車端部のセミコンパートメントは指定席。
2号車はまるごと指定席になる可能性があります。
このあたりの条件は「ふじかわ」と大差ありませんね。


中央西線「しなの」は東海区間の山岳部で

名古屋~長野間を結ぶ特急「しなの」では、JR東海管内で山岳区間に当たる多治見~塩尻間がお得な特急料金適用区間になっています。
制御付き振り子の特急形車両383系を使用し、カーブが多い木曽川沿いを高速で突っ切っていきます。

多治見~塩尻間で営業キロが30km以内になる特急停車駅(多治見に近い順)とその距離は以下の通り。
時期によって臨時停車する駅もいくつかありますが、本稿は定期列車停車駅のみ掲載します。
この場合、「しなの」普通車自由席の特急料金は330円になります。

  • 恵那~中津川(11.6km)
  • 中津川~南木曽(19.0km)
  • 南木曽~上松(26.9km、1号・2号・25号のみ)
  • 上松~木曽福島(7.3km)

次に、営業キロが50km以内になる停車駅と距離はこうです。
この場合の「しなの」自由席は660円になります。

  • 多治見~中津川(43.7km)
  • 恵那~南木曽(30.6km、2号・25号のみ)
  • 中津川~上松(45.9km)
  • 南木曽~木曽福島(34.2km)
画像:写真AC

こちらは「ふじかわ」「伊那路」とは対照的に、振り子機能をフル活用し、木曽川沿いの山岳区間を高速で突っ切っていきます。
そのため、多治見~塩尻間の全便停車駅は中津川駅・木曽福島駅のみに絞られ、恵那駅・南木曽駅・上松駅は一部便のみ停車。
必ずしも思い通りの特急利用ができるとは限らないので注意しましょう。

383系の基本編成は6両編成で、自由席は名古屋方の2両(6号車・5号車)
長野方先頭車両の1号車はパノラマグリーン車、2~4号車は普通車指定席です。
ただし、名古屋方に2~4両増結する可能性もあります。

高山本線「ひだ」もJR東海管内で

お次は高山本線の特急「ひだ」
JR東海管内の岐阜~猪谷間でお得な特急料金が適用されます。
すっかりHC85系が定着した同線は、岐阜~美濃太田間は名古屋のベッドタウン的要素もありますが、美濃太田以北からガラッと様相が変わります。

岐阜~猪谷間で営業キロが30km以内の特急停車駅(岐阜に近い順)とその距離は以下の通り。
この時「ひだ」の普通車自由席は330円になります。

  • 岐阜~美濃太田(27.3km)
  • 美濃太田~白川口(25.8km)
  • 白川口~飛騨金山(13.6km)
  • 飛騨金山~下呂(21.6km)
  • 下呂~飛騨小坂(20.5km)
  • 飛騨萩原~久々野(26.5km)
  • 飛騨小坂~高山(27.6km)
  • 久々野~飛騨古川(28.1km)

営業キロが50km以内の特急停車駅と距離は以下になります。
この時の「ひだ」自由席は660円です。

  • 鵜沼~飛騨金山(49.4km)
  • 白川口~飛騨萩原(43.6km)
  • 飛騨金山~飛騨小坂(42.1km)
  • 下呂~高山(48.1km)
  • 飛騨小坂~飛騨古川(42.5km)
  • 飛騨古川~猪谷(37.9km)

2年前の秋に体感済みですが、高山本線は一駅間の距離が長い!
おまけに普通列車も少ない!
全然駅を通過しない割にかなりの距離を進んでいることが、ここでは割と起こり得ます。
とくに美濃太田~下呂間や飛騨古川~猪谷間は個人的に難所じゃないかなと。

「ひだ」の名古屋発着便はグリーン車付きの4両編成で、自由席は高山・名古屋方の4号車のみ(5号・16号では8号車)。
岐阜方先頭車両の1号車がグリーン車で、2・3号車が普通車指定席です。

いわゆる「大阪ひだ」(25号・36号)は2両編成(多客期は4両)が岐阜・大阪方に併結しており、この編成では大阪方の1号車が自由席に。
富山ひだ」で富山駅まで乗り入れる2両編成(多客期は4両)は、岐阜方先頭車両9号車が自由席です。
マジでややこしいので駅や公式サイトの案内などもご参照ください。

関西本線・紀勢本線「南紀」は伊勢鉄道線経由

最後にしてちょっと複雑なのが、名古屋駅から関西本線・紀勢本線を紀伊勝浦駅まで行く特急「南紀」
JR東海区間の名古屋~新宮間でお得な特急料金が適用されますが、関西本線河原田駅から紀勢本線津駅の間は第三セクター・伊勢鉄道線を走行します。

「ひだ」と同じHC85系を使用しますが、こちらは基本的に2・4両で運行し、グリーン車がありません。
手持ちの写真に「ひだ」しかないのはご容赦を。

「南紀」のJR線内の乗車距離は、JR線内は普通に計算しますが、その計算は伊勢鉄道線内に入ったらいったんストップ
津駅または河原田駅を通過してから計測再開します。

この上で、JR線内の営業キロが30km以内になる特急停車駅(名古屋に近い順)とその距離は以下の通り。
※がない区間では、「南紀」自由席は330円です。

  • 名古屋~桑名(23.8km)
  • 桑名~四日市(13.4km)
  • ※四日市~松阪(26.0km+伊勢鉄道)
  • 津~多気(27.0km)
  • 多気~三瀬谷(25.4km)
  • 紀伊長島~尾鷲(24.9km)
  • 熊野市~新宮(22.6km)

※伊勢鉄道線を通ると乗車券520円・特急券320円が加算されます

続いてJR線の営業キロが50km以内になる特急停車駅と距離は以下の通り。
※以外の区間で「南紀」自由席は660円です。

  • ※名古屋~津(44.1km+伊勢鉄道)
  • ※桑名~多気(47.4km+伊勢鉄道)
  • 松阪~三瀬谷(33.3km)
  • 三瀬谷~紀伊長島(30.5km)
  • 尾鷲~熊野市(34.3km)

※伊勢鉄道線を通ると乗車券520円・特急券320円が加算されます

特急は1日4往復あり、紀勢本線の普通列車で最も本数が減る三瀬谷~紀伊長島間は9往復しかないので、特急停車駅間であれば少ない負担で移動しやすくなるかもしれません。
自由席は名古屋方先頭車両の1号車ですが、日によっては4両編成で運行する場合もあります。


さいごに

今回は、JR東海の在来線で、近距離で自由席に乗ると適用されるお得な特急料金について、路線ごとに挙げてきました。
特急自由席の利用区間が、30km以内で330円50km以内で660円、です!
御殿場線は一律860円でしたね。
これに加えて乗車券が、30km以内は最大510円、50km以内は最大990円かかります。

これらのお得な特急料金を駆使すれば、該当線区の移動で負担がかかりにくくなるはず。
乗り鉄的には、「青春18きっぷ」「秋の乗り放題パス」など、特急に乗れないフリーきっぷを使っている最中に足止めを食った場合に、最小限の運賃でそのエリアを抜けやすくなるかもしれません。
「青空フリーパス」「休日おでかけきっぷ」「乗り鉄☆たびきっぷ」のように、別途特急券を買えば特急に乗れるフリーきっぷはさらに恩恵を受けやすくなるでしょう。

地元の方なら日常利用、旅行ユーザーならJR東海各エリアの探訪にぜひ活かしてみてください。

今回はここまで!
ありがとうございました!

参考

『鉄道手帳 東日本編』監修:今尾恵介 東京書籍 2009年9月
『鉄道手帳 西日本編』監修:今尾恵介 東京書籍 2009年9月

『JTB小さな時刻表 2023 季刊秋号』発行:JTBパブリッシング 2023年10月

『全国版 コンパス時刻表 2024年10月号』発行:交通新聞社 2024年9月

JR東海公式サイト お得な特急料金
A特急料金