2022(令和4)年10月1日より10月23日までの連続する3日間は「鉄道開業150年記念 秋の乗り放題パス」の利用可能期間となっていました。
ということで私も、「秋の乗り放題パス」を使った鉄道旅を遂行してきました!
その行き先は、JR東海・JR西日本の高山本線!
岐阜駅から下呂温泉や飛騨高山を通って日本海側の富山駅まで抜ける、壮大なローカル線です。
今回から少しの間、高山本線の車両や車窓・沿線の見どころを乗車レポートとしてざっくり紹介していきますが、あまりにも路線が長いので、本稿では、岐阜~下呂間に区切って取り上げます。
※撮影の都合上、写真の列車は上下線関係なく掲載しています
もくじ
岐阜駅から下呂・高山方面へ
JR東海・JR西日本の高山本線は、岐阜駅から富山駅へと至る全長225.8km、全線単線の路線です。
「日本三名泉」のひとつとして有名な下呂温泉や、「飛騨の小京都」と呼ばれる高山などへ向かい、風光明媚な山々の間を飛騨川沿いに走ります。
景色が非常に良く、観光路線としての人気も高いです。
名古屋駅・大阪駅からは特急「ひだ」も発着し、こちらも多くの利用者がいますよ。
特急「ひだ」は1日10往復(うち1往復は大阪発着)が常設で運行していますが、「高山祭」開催時をはじめ、多客期には臨時列車も運行されます。
それだけでなく、常設の「ひだ」に車両を増結することも。
一方で普通列車は少なく、最も間隔が空くと4時間近く来ない時間帯もあります。
万が一特急に乗らざるを得なくなった場合に備え、所持金はギリギリでなく、多少の余裕を持って準備しておくと良いでしょう。
路線の成り立ちとしては、1920(大正9)年11月、岐阜側は「高山線」として、岐阜~各務原間が開業。
1927(昭和2)年9月、富山側は「飛越線」として、越中八尾~富山間が開業。
岐阜側と富山側からそれぞれ延伸を進め、1933(昭和8)年8月に岐阜側は飛騨小坂駅まで、同年11月に富山側は坂上駅まで到達していました。
最後に1934(昭和9)年10月、飛騨小坂~坂上間開業により、高山本線として全通しました。
使用車両
2022年10月現在、高山本線では以下の車両が活躍しています。
まずは普通列車。
高山本線では大半がワンマン運転を行っています。
JR東海区間(岐阜~猪谷)全てで運行しているのが、キハ25です。
0番台と1000番台の2種類あり、0番台は前面の種別・行き先表示が独立しています。
側面はビードによる凹凸があり、座席は転換クロスシート。
乗れるとかなり快適ですよ。
一方、種別・行き先表示が集約しており、側面が平らなのが1000番台。
こちらの座席はロングシートです。
転換クロスではないけど、座り心地は良いものでした。
快速「みえ」としてなじみの深いキハ75も、一部編成が高山本線で活躍しています。
乗降口にステップが無く、低いホームに対応していないため、運用は下呂以南のみに留まっています。
こちらの座席も転換クロスシートですよ。
本稿では取り上げませんが、JR西日本区間(猪谷~富山)の普通列車は、キハ120が担っています。
JR西日本のローカル線区に幅広く投入されているキハ120、様々なカラーバリエーションがあり、高山本線では富山方が赤、猪谷方が緑色という前面の塗り分けが個性的です。
特急列車は、2022年10月現在、置き換えが進んでいます!
1989(平成元)年にデビューした、既存車両のキハ85系。
客室窓が大きいことから、眺望に非常に優れた特急型車両です。
先頭車両は貫通型・非貫通型とあり、非貫通型では、運転士に近い目線で前面展望も楽しめます!
富山駅まで走行する編成においては、富山方の先頭車両がグリーン車かつ非貫通型なので、ゆったりくつろぎながら前面展望と左右の車窓をじっくり眺めていられます!
2022(令和4)年7月1日には、新型車両HC85系がデビューしました。
キハ85系の眺望の良さはそのままに、ハイブリッド車両の特徴であるエンジンとモーターの併用により、電車並みの静音性を実現しました。
東海道本線(名古屋~岐阜間)にてハイブリッド車両としては初の最高時速120km運転もします!
平野部の市街地を行く
それでは、岐阜駅から高山本線に乗ってみましょう!
まずは、起点となる岐阜駅から美濃太田駅まで。
このエリアは岐阜市の市街地に近く、沿線は住宅街が中心です。
鵜沼駅まで、曲がりくねった道は少ないので、列車は速度を出しやすいです。
途中駅の線路分岐でも、特急が速度をあまり落とさずに通過できるようになっています。
また、名鉄各務原線もほぼ同じ場所を通っているので、高山方面に向かって右手に名鉄電車を見られるかもしれませんね。
右手遠方には国宝・犬山城も見えてきます。
名鉄の新鵜沼駅(JR鵜沼駅と乗り換え可能)付近に高山本線への連絡線があり、2001(平成13)年まで名鉄特急「北アルプス」が乗り入れていました。
惜しまれつつ引退した名鉄キハ8500系は、会津鉄道に譲渡され、快速「AIZUマウントエクスプレス」に使用されていましたが、それも現行のAT700形・750形に置き換えられています。
鵜沼駅を過ぎると割と急激に郊外の風景に変わり、坂祝(さかほぎ)駅を経て美濃太田駅に到着。
特急「ひだ」が全便停車し、長良川鉄道とも接続しています。
飛水峡と中山七里を越えて
次は美濃太田駅から下呂駅まで。
ぶっちゃけ、高山本線はここからが本番です!
中川辺駅付近まではあまり大きな変化はないものの、同駅のある加茂郡川辺町に入るといよいよ飛騨川と並行!
この先長い間、列車は飛騨川に沿って高山へと向かうのです。
ちなみに、飛騨川は最下流に来ると木曽川に合流するようです。
飛騨川と合流した後の木曽川には、実は鵜沼~坂祝間で並行していたんですよ。
飛水峡から飛騨川橋梁へ
上麻生~白川口間では、飛水峡という峡谷を進みます。
高山方面に向かって右手に、不規則で、複雑な形の岩場がずっと続き、それが複雑な川の流れを生み出してもいます。
水の色も、まさしく翡翠のような美しい青緑色。
モノクロな岩石とのコントラストに、思わず「すげぇ…!」と声が漏れました。
上麻生駅から下呂駅まで、駅間距離がやたら長いところが出てきます。
そういった区間には信号場が設けられており、上下線ですれ違ったり、特急通過待ちを行ったりする列車も。
上麻生~白川口間ではその1つ目として、飛水峡信号場を通過します。
飛水峡信号場までで峡谷は途切れますが、飛騨川の美しい車窓はまだまだ続く!
白川口駅を過ぎてしばらくすると、いよいよ第一飛騨川橋梁を通過。
これを皮切りに、とにかく蛇行しまくる飛騨川を何度も渡っていくことになりますよ。
白川口駅は、美濃地方の加茂郡白川町に位置する駅。
お茶の産地として知られており、駅舎内の売店では緑茶・ほうじ茶・紅茶が販売されていました。
白川郷のある白川村とは関係ありません。
第二飛騨川橋梁の直前、「道の駅 美濃白川」付近に構える鷲原信号場を越えると、あたりはしばし田園風景に。
その後、下油井~飛騨金山間を境に下呂市に入ります!
中山七里の絶景を見よう
飛騨金山駅を境に美濃路は終わり、これよりは本格的に飛騨路へ進んでいきます。
ここから下呂駅までは、中山七里と呼ばれる景勝地になっていて、山間を進む高山本線の中でも特に山の景色が美しいところ。
飛騨金山~焼石間の途中で福来信号場を通ります。
信号場を過ぎてしばらくすると、左手に下原ダムが出現!
ダム湖の水面の高さが線路と近い、湖面ギリギリの高さで列車が山間を進んでいきます。
思っているよりも水面は近いです!
湖面との距離感とその美しさは、ぜひ列車に乗って見ていただきたいです。
さて、下原ダムを通過したらまもなく焼石駅。
下呂駅まであと1駅ですが、飛騨川と共に深い山沿いを引き続き走行。
景色が開けてくると、少ケ野信号場を通過します。
1973(昭和48)年までは貨物駅だったらしく、よく見るとホーム跡も残されているとか。
ここを過ぎるとさらに市街地が広がっていき、下呂駅に到着です。
「日本三名泉」の温泉街
下呂は「日本三名湯」の一つとして有名な温泉地。
泉質はアルカリ性単純温泉で、疲労回復、病後回復、神経症、神経麻痺、リウマチ、運動機能障害などに効果があるとのこと。
私も少し駅付近を歩いたところ、あちこちにホテルや旅館が多数並んでおり、由緒正しき温泉街であることが実体験で分かりました。
駅前やホームにも温泉の噴水が置かれていて、絶えず湯煙を漂わせていました。
「一羽のシラサギが同じ河原に何度も訪れており、不思議に思った村人が近づくとそれは温泉だった」という趣旨の、下呂温泉に伝わる「白鷺伝説」が、駅前の石碑に書かれていますよ。
高山本線としてはまだまだ途中ですが、この駅で降りる人も一定数います。
特急列車の到着に合わせ、旅館のスタッフが「歓迎」と掲げて観光客を待つ光景も温泉街あるあるでしょうか。
普通列車の運行本数は
岐阜駅から下呂駅までの普通列車ですが、岐阜~美濃太田間は1時間に2本程度。
その大半は、美濃太田駅から太多線に乗り入れ、中央本線の多治見駅まで運行しています。
ですのでたいていの場合は美濃太田駅で乗り換えが発生するでしょう。
美濃太田~下呂間の普通列車は、朝夕は1時間におおむね1本ですが、日中は2~3時間に1本しかありません。
一応、美濃太田駅から下麻生発着、白川口発着、飛騨金山発着の設定はあります。
また、途中駅の数が少ない分、駅間の距離が長いので、岐阜~美濃太田間の普通列車の所要時間はだいたい40分台。
美濃太田~下呂間の普通列車はだいたい1時間20~30分はかかります。
特急だと、岐阜~下呂間で1時間10~20分程度の範囲ですかね。
いずれにしても運行本数が少ない上に1駅進むのにかかる時間も長いので、乗車の際は時間や乗り越し・乗り間違いなどに十分注意しましょう。
ちなみに、岐阜~美濃太田間ではICカードを利用できます!
駅備え付けの簡易改札機にカードをタッチして精算しましょう。
しかし美濃太田以北ではICカードが使えなくなるので、その場合は必ずきっぷか現金で乗車すること。
万が一そうなってしまった場合は、乗務員に申し出ましょう。
私の乗車時も、ICカードで入場したまま美濃太田駅を過ぎてしまった人がいて、運転士がその対応を行う場面がありました。
高山方面に続く
岐阜駅から下呂駅までは88.3km。
富山駅までの半分にもまだ届いてませんが、ここでいったん区切りましょう。
高山本線の美濃太田駅までは割と都市部の趣きがありましたが、そこから景色は一変!
飛水峡、飛騨川橋梁、中山七里を経て温泉街に到達します。
その時のワクワク感は、普通・特急どちらでも良いので実際に乗ってみれば体感していただけるはず!
列車の中で高めた期待を胸に沿線の観光に出てみれば、きっとさらに旅が楽しくなること!
「日本三名泉」と名高いだけあって、下呂温泉を目的地にするのももちろんアリですが、高山本線としてはまだまだ先に進みます。
次回は、下呂~高山間の車窓・沿線をピックアップします。
今回はここまで!
ありがとうございました!
参考
『鉄道手帳 西日本編』 監修:今尾恵介 東京書籍 2009年9月
『日本鉄道旅行地図帳 6号 北信越』 監修:今尾恵介 新潮社 新潮「旅」ムック 2008年10月
『日本鉄道旅行地図帳 7号 東海』 監修:今尾恵介 新潮社 新潮「旅」ムック 2008年11月
『【図説】日本の鉄道 中部ライン全線・全駅・全配線 第4巻塩尻駅―名古屋東部』 編著:川島令三 講談社 2010年7月
『【図説】日本の鉄道 中部ライン全線・全駅・全配線 第6巻加賀温泉駅―富山エリア』 編著:川島令三 講談社 2010年9月
『JTB小さな時刻表 2022年季刊夏号』 発行:JTBパブリッシング 2022年7月
JR東海公式サイト 高山本線ものがたり
下呂市公式観光サイト げろたび 下呂温泉の紹介
リンクはいずれも別タブで開きます