西武鉄道は2017年より、平日は東京メトロ有楽町線の豊洲駅へ土休日はみなとみらい線の元町・中華街駅まで乗り入れる座席指定列車「S-TRAIN」を運行しています。
同列車は、東京メトロおよび東急東横線・みなとみらい線では数少ない、追加料金を払えば確実に座れる列車。
朝夕の運行なので、タイミングが合えば混雑を避けて快適な移動が保証されること間違いなし!

しかし、複数の鉄道会社にまたがって運行する分、追加料金もそれなりにかかります
特に土休日の「S-TRAIN」では、元町・中華街~西武秩父間を乗り通すと、きっぷ1,510円で座席指定券は1,060円、合計で2.570円(大人)。
乗れれば楽ですが、それなりにお金がかかります。

そこで思ってることがあります!
東横線・みなとみらい線だけなら、安く快適移動できるのではないか?と。

ということで、西武鉄道「S-TRAIN」に東急東横線・みなとみらい線内のみで乗車し、記録を取ってきました。
本稿では、土休日の「S-TRAIN」をメインに扱います。



土休日一日5本の座席指定列車

西武鉄道「S-TRAIN」は、西武池袋線から東京メトロ有楽町線(平日)および副都心線・東急東横線・みなとみらい線(土休日)に乗り入れる座席指定列車。

本稿で取り上げる土休日の「S-TRAIN」のうち、下りは以下の設定があります。

  • 西武秩父行き「S-TRAIN1号」(7時46分発・秩父10時5分着)
  • 飯能行き「S-TRAIN3号」(16時53分発・飯能18時34分着)
  • 所沢行き「S-TRAIN5号」(19時55分発、所沢21時9分着)

対する上りは以下の通り。

  • 飯能9時18分発「S-TRAIN2号」(元町・中華街10時56分着)
  • 西武秩父17時7分発「S-TRAIN4号」(元町・中華街19時40分着)

【2023/4/28更新】2023年3月18日のダイヤ改正により、「S-TRAIN1号」の時刻が繰り下げられました。

本来、東横線・みなとみらい線は渋谷駅から元町・中華街方面に向かう方向が下りですが、西武池袋線は池袋駅から秩父方面に向かうのが下りなので、「S-TRAIN」も秩父方面が下りになっていると思われます。

停車駅は元町・中華街駅から順に、みなとみらい駅、横浜駅、自由が丘駅、渋谷駅、新宿三丁目駅、副都心線池袋駅、石神井公園駅、所沢駅、入間市駅、飯能駅、西武秩父駅。
特急「ちちぶ」が停車する横瀬駅は通過します。

このうち、下りの横浜駅、みなとみらい駅が乗車専用駅に、副都心線池袋駅と上りの横浜駅とみなとみらい駅が降車専用駅になっています。
乗車専用駅で「S-TRAIN」から降りることと、降車専用駅から「S-TRAIN」に乗ることはできません

距離の短いみなとみらい線はまだしも、上下線とも副都心線池袋駅が降車専用駅になっていることには気を付けましょう。

L/C車両のクロスシート

使用車両の40000系は、ロングシートとクロスシートを切り替え可能な車両。
「S-TRAIN」としての運行時はクロスシートになり、各席でドリンクホルダーフック、窓側に一つある電源も使用可能に。
車内では無料Wi-Fiも使えます。

座席は青色で、桜の模様が散りばめられたおしゃれなデザイン。
座り心地もちょうど良いフィット感ですが、L/C車両の宿命なのかリクライニングはできません

10号車(元町・中華街、西武秩父方先頭車両)に導入された「パートナーゾーン」は、登場当時、話題になりましたよね。
大きな荷物、車いす・ベビーカーの利用者も広々と過ごせますし、ベンチに腰掛け、大きな窓から車窓を楽しむこともできそうです。

また、4号車にトイレが用意されています。
乗車中のいざという時もご安心を!
その他、前後方向天井のディスプレイや、たまご型の吊り手が設置されていたりもします。
袖仕切りや貫通扉のガラスにも桜の模様があしらわれています。

ちなみに、西武40000系にはロングシート専用編成もありますが、「S-TRAIN」で使用されるのはロング・クロス転換車両のみ。
両者の違いは、座席だけでなく、前面・側面に貼られたステッカーを見てもわかります。

指定券は駅かインターネットで

「S-TRAIN」乗車時には、事前に座席指定券を購入しておかねばなりません。
指定券は最も高い場合で、元町・中華街~自由が丘のいずれかから西武秩父間の大人1,060円・子ども540円となっています。

私は渋谷駅から元町・中華街駅まで乗ったので、その指定券は350円でした。
渋谷~元町・中華街間で「S-TRAIN」に乗る場合、降車駅にかかわらず指定券は大人350円・子ども180円です。

乗車券自体は、東急東横線渋谷~横浜間は280円、みなとみらい線は横浜~元町・中華街間は220円。
指定券と合わせても、渋谷駅から東横線の横浜駅までは630円元町・中華街駅まで乗り通しても850円で済みます。

座席指定券のお求めには、駅の窓口・きっぷ券売機西武鉄道のウェブサービスを利用することになります。
私はいつも駅の券売機で購入していますが、その場合は自分で座席を選べないことに注意。
ICカードのみ、ホーム上の指定券券売機からも購入可能です。

これらを忘れて車内で座席指定券を購入した場合通常の指定券料金に200円加算されるので要注意!

恐ろしく空いてた座席指定列車

前置きが長くなりましたが、ここからは「S-TRAIN」に乗りましょう!
撮影時間の都合上、写真の大半がは飯能行きですがあしからず。

ひっきりなしに入ってくる他の電車の合間を縫い、18時56分に「S-TRAIN4号」が渋谷駅地下4番線に入線。
乗降ドアは片側4ヶ所に設置されていますが、「S-TRAIN」の時は1ヶ所しか開きません
足元かホームドアの「S-TRAIN」乗車位置をよく見て待ちましょう。

東京メトロから東急電鉄の乗務員に交代し、18時58分、「S-TRAIN4号」は渋谷駅を発車!
代官山駅付近までは地下を走行し、同駅から地上に上がりますが、まだ日が長いとはいえ外はだいぶ暗くなっていました。

今回は3号車の4D(元町・中華街方面に向かって左の窓側)に着席。
車内の様子ですが、驚くほど空いてる
同じ号車で私以外の利用者が二人しかいませんでした。
他の号車にもちらほら利用者はいたものの、それでも座席のほとんどが空いていました。

正直なところ、秩父まで楽に移動するなら池袋発の特急「ちちぶ(Laview)」がありますもの。
以前「Laview」に乗った時も、そちらのほうが人気のようでした。
よほどのことがない限り「S-TRAIN」が満席になる可能性は低いかもしれません。

まもなく「S-TRAIN4号」は中目黒駅に運転停車。
運転上の都合(と思われる)により、東横特急停車駅の中目黒駅、武蔵小杉駅、菊名駅にも停車するようになっています。
しかし、あくまでも通過駅なので乗り降りはできません。

各駅停車が祐天寺駅まで先行するため、「S-TRAIN4号」はあまり速度を出せません。
が、祐天寺駅では中央の通過線を利用して各駅停車を追い抜きます。
それ以降、今までの速度制限が嘘みたいな高速域に!

学芸大学駅、都立大学駅と続いて通過しますが、高架や、そもそもの地形ゆえの勾配が続き、通勤路線だと思うには意外なほどアップダウンが激しい路線を一路、元町・中華街方面へ駆けていきます。

自由が丘駅には19時7分に到着。
私の見えた範囲では、2人ほど乗車して後ろの号車に移動していきました。

そして、到着して1分後に自由が丘駅を発車。
この先は武蔵小杉駅と菊名駅で運転停車を挟むものの、横浜駅までドアが開きません。

目黒線が合流し、田園調布駅と多摩川駅を通過したら、右に大きくカーブした先で多摩川を渡ります!
朝の「S-TRAIN」なら、住宅街と多摩川の風景がより鮮明に見えることでしょう。

小杉や日吉を通って横浜市内へ

武蔵小杉駅を発車(通過)後、隣の元住吉駅では、右手に停車中の各駅停車をほぼ最高速で追い抜きました。
マジで速いので、気づかないうちに通り過ぎるかもしれません。

その後、相鉄・東急直通線の工事が進む日吉駅も通り過ぎ、綱島駅、大倉山駅と続いて通過。
菊名駅で運転停車を行い、さらに横浜駅へ進みます。

横浜駅と元町・中華街駅へ

菊名駅を出ると、終点まで待避設備がありません。
白楽駅とその前には割と急なカーブがあり、加えて今回は先行列車に近づいていたのか、東白楽駅通過後に地下トンネルに入ったあたりで速度を落としていました。

とはいえ地下区間に入ってしまえばあと少し。
19時28分に「S-TRAIN4号」は横浜駅に到着!
私が見た限りではお一人が降りていきました。

この先はみなとみらい線の区間。
みなとみらい駅でも私以外の利用者が大半降りていき、3号車には私以外誰もいなくなりました。
そして19時34分、「S-TRAIN4号」は終点の元町・中華街駅に到着しました。

今回記録を取った限りでは利用者がかなり少なかったのですが、追加料金と引き換えに東横線・みなとみらい線内で混雑を避けて移動できるのは大きなメリット。
ロング・クロス転換車両特有の制約はありますが、「S-TRAIN」を渋谷~横浜・元町間で利用するというのもアリではないでしょうか。



平日の「S-TRAIN」は

ちなみに平日の「S-TRAIN」は、朝は上りのみ運行し、所沢駅から豊洲駅まで。
夕方は下りのみの運行で、豊洲駅から小手指駅まで運行しています。

停車駅は小手指駅から順に、西所沢駅、所沢駅、保谷駅、石神井公園駅、練馬駅、飯田橋駅、有楽町駅、豊洲駅。

朝は、練馬駅を除く西武線内停車駅が全て乗車専用駅で、有楽町線内停車駅は全て降車専用です。
夕方はその逆で、有楽町線内停車駅が全て乗車専用駅になり、練馬駅を含む西武線内停車駅が全て降車専用に。

つまり、平日の「S-TRAIN」に乗ったら必ず、上りは有楽町線、下りは西武線まで行かなければならないようですね。
座席指定券も一律で大人510円・こども260円となっています。

こちらは完全に通勤客向けの輸送ゆえか、土休日の「S-TRAIN」と異なり利用者は多いようです。
以前、仕事帰りに有楽町線の飯田橋駅で見かけましたが、土日の閑散っぷりは何だと言わんばかりに多数の利用者がいました。

東横線内に着席サービスの予兆

実際問題、「S-TRAIN」はみなとみらい線・東横線と西武線を乗り換えなしで行き来するのに向いていますが、短距離利用には不向きにも思えますよね。

自由が丘駅で大井町線との乗り換えに対応できるものの、中目黒駅、武蔵小杉駅、菊名駅で乗降が発生しないために、「S-TRAIN」から目黒線やJR横浜線、横須賀線、東京メトロ日比谷線などにアクセスしにくい
座席指定列車に理解があっても、それを活かしにくい人も少なくないかもしれません。

しかし2022(令和4)年7月29日、東急電鉄は、現在大井町線で運行しているロング・クロス転換車両および有料着席サービス「Q-SEAT」を2023年度以降に東横線にも拡大すると発表しました!

【2022/11/4追記】リリースの更新により最初の投稿時点のリリースがリンク切れしていたので、最新のリリースも参照しております

東急電鉄公式のお知らせによると、東横線のロング・クロス転換車両は、一部の10両編成の4・5号車に導入するといいます。
また、当該号車には赤いラッピングを施す予定で、公式サイトにもそのイメージ図が掲載されています。
単純ながら明らかに目立つ外観なので、実際に導入されたら、鉄道をよく知らない人にも分かりやすそうですね。

なお、大井町線のL/C車両はオレンジ色のラッピングで3号車に連結されています。
他の号車の装飾が少ない分、その存在感は言わずもがな。

【2023/8/2更新】
東横線の「Q SEAT」サービス開始が2023年8月10日と発表されました!それに合わせ、大井町線の「Q SEAT」にも乗車しています。

さいごに

今回は、土休日の「S-TRAIN」に東急東横線の渋谷駅からみなとみらい線の元町・中華街駅まで乗った上での所感をお送りしました。

土日でさえ混雑する確率の高い東横線で、追加料金を払ってそれを回避できるメリットはかなりのもの。
リクライニングはできないけれども渋谷から横浜市内までの距離で十分にくつろげました。
ところどころに散りばめられた桜柄も個人的には気に入ってます。

しかし、横浜駅までの間に自由が丘駅にしか停まらないのが歯がゆいところ。
2023年8月10日から「Q-SEAT」が東横線でもサービス開始するので、「S-TRAIN」でなくても有料着席サービスを活かせる機会がまもなく訪れます!

だいぶ長くなったけど今回はここまで!
ありがとうございました!

参考

西武鉄道公式サイト
特急列車・座席指定列車 S-TRAIN

東急電鉄公式サイト 2022年10月21日
【再掲】東横線におけるロング・クロス転換車両の導入について

関連実績

マイナビニュース 2020年11月28日
横浜市内から西武秩父駅へ、40000系「S-TRAIN」で全区間乗り通した

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