2021年3月13日のダイヤ改正より、JR東日本・東海道本線の新しい特急「湘南」が運行開始しました。
それまでは185系を使用した「湘南ライナー」が東京・新宿~小田原間(新宿発着は「おはようライナー」)で平日朝夕に運行していましたが、同形式の定期運用離脱にともない、日中の特急「踊り子」と共にE257系に統一。
朝は小田原駅発(一部平塚始発)で東京駅・新宿駅へ向かい、夕方は東京駅・新宿駅から小田原駅へ向かう運行形態になっています。
このほど、都内での仕事帰りで混雑を避けたかった私は、東京駅を20時に発車する特急「湘南9号」に大船駅まで乗りました。
ちょうど良い機会になったので、今回は特急「湘南9号」で記録を取り、乗車レポートにしたいと思います。
ライナーから格上げ
特急「湘南」は、185系時代の「湘南ライナー」を特急に格上げしたような列車です。
「踊り子」「湘南」のE257系は外観・内装のリニューアルに加え、窓側に電源を1つ設置しており、車内でフリーWi-Fiを使うこともできますよ。
背もたれのリクライニングもOK!
仕事帰りで疲れた身体がちょっぴり癒されそうですよね。
本稿で取り上げる下り「湘南」は、平日夕方・夜のみ、小田原行きとして運行しています。
東京18時発の「湘南1号」を皮切りに、同駅22時発の「湘南15号」まで、東京始発は1日8本。
停車駅は、品川駅、大船駅から平塚駅までの各駅と国府津駅です。
これから乗車する「湘南9号」は、これに加えて二宮駅にも停車。
川崎駅、横浜駅、戸塚駅には一切停まりません。
一方、新宿始発の「湘南21号」(18時25分発)「湘南23号」(19時30分発)もあります。
時刻表を見るにどちらも横浜駅を通っていないので、武蔵小杉駅から東海道貨物線に入り、東戸塚駅付近で東海道本線に合流していると思われます。
新宿始発の「湘南」は途中、渋谷駅、大崎駅、藤沢駅、茅ケ崎駅、平塚駅、二宮駅、国府津駅に停車。
東京始発に比べると、大船駅と辻堂駅を通過するかわりに2本とも二宮駅に停車するようですね。
特急券に座席未指定券も適用
「踊り子」と同じく、指定席特急券および座席未指定券のシステムが「湘南」にも適用されます。
指定席特急券・座席未指定券ともに料金は同じです。
最長83,9kmの運行区間なので、特急料金は760円(50km以内)か1,020円(51km以上)になりますが、760円になる区間は東京~大船間(46.5km)と品川~辻堂間(48.0km)、大崎~藤沢間(46.3km)です。
これらより乗車区間が長くなる場合、特急券は1,020円になります。
「湘南ライナー」時代のライナー券は最晩年でも520円だったので、最大2倍近くの値上げになってしまいました。
それでも後述の通り、夕方の下り「湘南」には絶えず多くの利用者がいます。
窓側が埋まる乗車率で大船まで
では、ここから特急「湘南9号」に乗っていきます。
発車の7分前くらいに東京駅の9番線に「湘南9号」E257系が入線するので、早速乗車!
今回は、ホームの券売機で指定席特急券を購入しました。
東京駅9・10番線ホーム、普通列車の8・9号車付近に指定席特急券の券売機があり、ここで特急券を買うことができます。
その他の購入方法としては、みどりの窓口、駅構内の指定席券売機、「えきねっと」をご利用ください。
指定席券売機での買い方はこちらの過去記事で説明しています。
さぁ、20時ちょうどに「湘南9号」は東京駅を発車!
私は7号車の7A(熱海方面に向かって左の窓側)に着席しました。
もうこの時点で7号車の窓側は大半が埋まる状況でしたが、座席上のランプが黄色に点灯している席がいくつも見られました。
つまり、品川駅から乗車する人も何人もいるということです。
20時8分に品川駅に到着し、1分後に発車。
案の定、私のいた7号車にも多数の利用者が品川駅から乗車し、左右とも窓側の座席は満席になりました。
この先は大船駅までノンストップ、川崎駅、横浜駅、戸塚駅も通過します。
ということで、これから30分弱を特急の車内で過ごすわけですが、ほどなくして車内には、「プシュ」とお酒の缶を開ける音が響きました。
仕事帰りに特急の車内で飲むお酒はさぞ体に沁みわたること。
それ以外の人はスマホを見ていたようでした。
そんなことを考えながらくつろいでいる間に、「湘南9号」は横浜駅を通過。
先行していた普通列車をここで追い抜きました!
ブラインドを降ろしていたのでしっかり見られなかったものの、20時台の横浜駅は特に混んでいます。
「湘南ライナー」時代からそうだったと思いますが、相当な混雑を避けて移動できるので、追加料金を払う価値は十分あるんじゃないかと思います。
これまで並行してきた京浜東北線が根岸線となって桜木町方面に分かれ、今度は右手の相鉄線も離れていきます。
並行する路線が横須賀線のみとなったら保土ケ谷駅を通過。
次いで、現役最古と言われる清水谷戸トンネルを抜けたら東戸塚駅を通過します。
東海道貨物線を経由する「湘南」は、この付近で東海道本線・横須賀線と離合しますね。
さらに、久里浜方面に伸びる横須賀線の下り線が東海道本線を跨ぎ、進行方向左手に降りてきたタイミングが戸塚駅通過の合図!
そのあたりで自動放送が流れ、まもなく進行方向左手に根岸線も合流。
20時36分、「湘南9号」は大船駅に到着しました。
短距離利用だと思っていましたが、私以外に同じ号車から大船駅で降りる人が5人くらいいました。
純粋に大船駅乗換(下車)の利用者も少なくないのでしょう。
また、根岸線沿線に住んでいる場合も大船駅で乗り換えて帰れるので、横浜駅乗り換えより時間がかかるものの確実に座れますよ。
朝の「湘南」は停車駅バラバラ
参考までに、上りの特急「湘南」にも触れておきましょう。
上り「湘南」は平日朝のみ、小田原駅を始発(「湘南2号」のみ平塚駅始発)に、東京行きまたは新宿行きとして運行しています。
平塚6時25分発の「湘南2号」を皮切りに、東京行きは「湘南14号」まで7本ありますが、「湘南4号」(6時20分発)以降は全て小田原始発です。
新宿行きは、「湘南22号」(6時30分発)「湘南24号」(7時9分発)「湘南26号」(7時45分発)の3本です。
上り「湘南」は全列車共通で、茅ケ崎駅、藤沢駅に停車。
東京行きの場合、都内に入ったら品川駅に停まります。
新宿行きの特急「湘南」は、都内に入ると大崎駅、渋谷駅に停車します。
これらに加え、列車によっては国府津駅、二宮駅、平塚駅、辻堂駅、大船駅、新橋駅(地下ホーム)にも停車します。
新橋駅地下ホームに停車する「湘南8号」「湘南10号」に至っては、東京駅の到着も横須賀・総武快速線地下ホームとなります。
列車ごとの停車駅や東京駅の到着ホームがバラバラなので、自分のいる駅から乗れる列車や、その到着ホーム等をできれば事前に確認しておきましょう。
普通列車グリーンと選ぶなら?
【2024/3/18 ダイヤ改正に合わせて更新】
同じ区間で走っている普通列車にもグリーン車が連結されていることを考えると、「湘南」とどっちがお得なのかも気になるところではないでしょうか?
以下はあくまでも私見です。
時間の余裕が取れ、停車駅の条件が合う場合なら、特急「湘南」を選んだほうがお得だと思います。
まず注目すべきは着席の確実性。
普通列車のグリーン車では、4ドアの普通車と違ってかなりの確率で立席を回避できますが、座席の指定はされません。
グリーン券を買っても、万が一の場合は座れない可能性があります。
対して、全車指定席の特急「湘南」であれば、特急券を購入した時点で着席が保障されます。
次に、追加料金も気にかけるべきところ。
「踊り子」「湘南」指定席特急券と普通列車グリーン券の料金はほぼ同じなのです。
普通列車グリーン券の場合、通常料金(紙のきっぷ)は50kmまで1,010円。
51km~100kmで1,260円です。
Suicaグリーン料金だと50kmまで750円、51~100kmが1,000円となります。
「湘南」普通車指定席は760円または1,020円ですが、普通列車グリーン車とあまり変わらないのです。
なんなら、普通グリーンはSuicaで乗らないと特急料金より高額になっています。
近い料金設定で、着席が確実になり、待てる時間があって停車駅もなんとかなるなら、平日朝夕は特急に乗れるとかなり快適に移動できるのではないでしょうか。
とはいえ、特急の運行まで待っていられない場合や、宇都宮線・高崎線に直通する場合は、無理に「湘南」に乗り換えずに普通列車グリーン車を使う選択肢もアリです。
2024年3月15日までより高いですけれども…。
時間帯にもよりますが上野東京ラインは東京駅を境に乗車率が変動しやすいので、それより前に着席できれば普通車グリーンも十分快適なはずですよ。
さいごに
今回は、東京駅20時発の特急「湘南9号」に大船駅まで乗ったことをきっかけに、特急「湘南」のレポートを進めてきました。
平日朝夕に小田原・平塚方面と東京・新宿方面を結ぶ通勤向けの特急「湘南」。
185系「湘南ライナー」時代に比べれば実質的に値上げされたものの、平日のラッシュ時間帯に川崎駅や横浜駅の混雑を避けられる恩恵は大きいです。
特急利用者もそれなりに多いとはいえ、特急券を買えれば着席が確実になる点もありがたいですよね。
ただ、普通列車みたく上野方面に直通しているわけではないので、乗降駅の場所や時間次第では、普通列車グリーン車のほうが良い場合もあります。
住んでいる地域や滞在するホテルの立地などをふまえた上で、使い分けてみてはいかがでしょうか。
今回はここまで!
ありがとうございました!
参考
『鉄道手帳 東日本編』 監修:今尾恵介 東京書籍 2009年
『JTB小さな時刻表 2022年夏号』 JTBパブリッシング 2022年