福島県会津地方の第三セクター・会津鉄道にて運行中の快速「AIZUマウントエクスプレス」は、なんとビックリ東武鉄道の鬼怒川温泉駅まで乗り入れています。

福島県から栃木県に第三セクターの軽快気動車が乗り入れ、東武線内で乗れちゃう、なかなかレアな列車は1日1往復、朝がチャンス!

私は2021年9月の個人取材中は会津鉄道まで行けなかったので、東武鬼怒川線としての終点、新藤原駅まで乗りました。
せっかくの機会ですので、今回は会津鉄道の快速「AIZUマウントエクスプレス」に、東武鬼怒川線内で乗車してみた記録をブログに残したいと思います。

なお、2022年3月12日のダイヤ改正により、快速「AIZUマウントエクスプレス」は1日1往復、朝の鬼怒川温泉駅までの運行となり、東武日光乗り入れが取り止めになりました。



尾瀬口から若松まで

会津鉄道会津線は、福島県南部の会津高原尾瀬口駅から西若松駅までを結ぶ、全長54.7kmの路線。
会津高原尾瀬口駅以南は野岩鉄道と東武鉄道西若松以北はJR只見線の会津若松駅まで乗り入れています。

しかし路線系統は尾瀬口駅から5駅北の会津田島駅でほぼ分断されており、会津田島以南は東武鉄道から特急「リバティ会津」が乗り入れ会津田島以北は気動車のみが走る運行形態となっています。

そう、電化区間では、東京・浅草から1日4往復の特急「リバティ会津」が会津まで来るんです!

「リバティ会津」には、東武鬼怒川線の鬼怒川温泉駅までの乗車に限り、特急券無しで乗ることができます。
それに関しては別記事で詳しく触れてます。

注:2022年3月12日のダイヤ改正により内容を更新しています

まさかの4社直通快速

肝心の「AIZUマウントエクスプレス」は、会津若松~鬼怒川温泉間で1日1往復運転されています。

さらっと言いましたが、鬼怒川温泉~新藤原間は東武鉄道で、新藤原~会津高原尾瀬口間は野岩鉄道尾瀬口~西若松間は会津鉄道、そして西若松~会津若松間はJR…。
驚くことに4つの鉄道会社にまたがって運行されているんです!

2022年3月12日のダイヤ改正により、それまでこの列車は1日2往復設定されていたのですが、1往復のみ、鬼怒川温泉駅までの乗り入れに縮小されました。
鬼怒川温泉駅から東武日光方面には乗り入れなくなってしまったようです。
2022年3月12日以降の設定は以下の通り。

  • AIZUマウントEX1号(鬼怒川温泉9時37分発、会津若松11時53分着)
  • AIZUマウントEX2号(会津若松6時56分発、鬼怒川温泉9時9分着)

2022年3月11日までは1日2往復運行されており、私が乗ったのもダイヤ改正前の時でした。
うち朝の1往復は鬼怒川温泉止まりで、お昼から夕方の1往復が東武日光駅まで乗り入れていました。
2022年3月11日までの設定は以下の通り。

  • AIZUマウントEX1号(鬼怒川温泉9時37分発、会津若松11時53分着)
  • AIZUマウントEX2号(会津若松6時56分発、鬼怒川温泉9時9分着)
  • AIZUマウントEX3号(東武日光16時33分発、会津若松19時55分着)
  • AIZUマウントEX4号(会津若松12時51分発、東武日光16時12分着)

快速と言いつつ停車駅は非常に多く、野岩鉄道の男鹿高原駅会津鉄道の七ヶ岳登山口駅・会津山村道場駅・会津荒海駅・中荒井駅以外の全ての駅に停車します。
(3・4号は会津鉄道線内も各駅停車だった)

もちろん追加料金不要!
それなりに時間はかかるものの会津・日光間を乗り換えなしで結ぶので、狙わずに乗れたらかなりお得な列車ではないでしょうか!?



温泉街と川沿いを行く

前置きが長くなりましたので、あとのことは乗ってから解説します。
今回は東武ワールドスクウェア駅から新藤原駅まで乗車!

その名の通り、この駅は東武ワールドスクウェアの最寄り駅になっており、駅を出て横断歩道を渡った徒歩1分の立地に、ミニチュア世界旅行への入口が待っています。
駅舎も、この駅でしかできないだろうポップな外観です。

また東武ワールドスクウェア駅は2017(平成29)年7月22日に開業した新駅で、1面1線の単純構造ながら全ての特急・SLが停車します。
もちろん今から乗る「AIZUマウントエクスプレス」も停まります。

東武ワールドスクウェア駅17時16分発、快速「AIZUマウントエクスプレス3号」に乗車しました!
「テレーレ↑レー♪」と、もはや第三セクターおなじみのドアチャイムでドアが閉まると、列車はゆっくりゆっくり加速。

この列車は電車ではなく気動車
ですので加速時に床下からディーゼルエンジンが唸る唸る!
気動車の中ではエンジンの音は軽いほうだと思いますが、それでも気動車に乗り慣れていない私からすれば、旅情を誘う良い音です。

夕方の列車ともあって、大して混雑していないものの、それなりに乗客が乗っていました。
しばらくは鬼怒川沿いの森と国道に挟まれた道を進みますが、すぐに開けた土地が広がり、温泉街の車窓に変わって鬼怒川温泉駅に到着します。

周辺は駅名の通りの温泉街。
東武浅草・JR新宿からの特急はこの駅まで乗り入れ、駅前広場には鬼怒川線の観光列車「SL大樹(DL大樹)」機関車の転車台、そしてイベント向けの駅前広場特設ステージも!

時間が時間なので、「AIZUマウントエクスプレス3号」の乗客の大半が鬼怒川温泉駅で降りていきました。
まぁホテルのチェックインとか夕食の時間とかありますもんね。

東武としての終点は山間の中継地点

鬼怒川温泉駅から先は本数が減り、上下線とも1時間に1~2本程度の本数に。
列車が動き出し、線路が単線に戻ると、進行方向左手には鬼怒川沿いにホテルが続く町並み。

夜になると、お部屋に灯る明かりが遠目で大変美しいこと!

ですが、次の鬼怒川公園駅に近づくにつれてだんだん廃ホテルも見られるように…。
線路は道路より少し高い位置にあるため、かつて旅行客でにぎわっていただろう寂れた建物をちょうど良い目線で眺めることになるでしょう。

そして鬼怒川公園駅の先は景色がさらに変化。
鬼怒川沿いのホテルは次第に消え、右手に山が、左手に国道を隔てて鬼怒川がすぐ近くまで迫る、ガチな山岳区間へと突入します!

しかもこの付近のカーブはかなりキツく、列車が徐行運転を強いられるほど。
カーブ通過時は車輪が「キィィィィン」と甲高くきしむ音が渓谷に響きわたるのです。

その最後は会津方面に向かって左に急カーブし、「AIZUマウントエクスプレス3号」は17時29分に新藤原駅に到着しました。

東武鉄道としてはこの駅が終点ですが、そのまま野岩鉄道会津鬼怒川線の起点になっているため、直通電車はそのまま会津方面のトンネルに消えていきます。
なので終点という趣きはうすく、山間部の中継地点といった感覚でしょうか。

ただ、誰もが見たことあるようなコンビニはこの周辺には存在しないので、真面目に散策するなら鬼怒川温泉駅あたりで準備することを推奨します。

今回はこの駅で降りましたが、「AIZUマウントエクスプレス3号」は野岩鉄道・会津鉄道と進み、最終的には会津若松まで向かいます。
最後まで乗っていた場合、会津若松駅到着は19時55分。
東武・野岩・会津・JRの4社にまたがって走るので、完全に都市部の地下鉄乗り入れみたいな繋がりを感じます。

私が降りた後も、列車の中には10人前後の乗客を確認しました。
人数こそ少ないですが、日光・鬼怒川と会津を結ぶ重要な足になっているのが分かりました。



リクライニング・転換クロスのどちらか

今回私が引き当てた車両はAT-600・650形の2両編成でした。
窓周りがグレー、それ以外の部分は白を基調に緑とオレンジのラインがあしらわれた外観です。

座席はなんと転換クロスシート
頭部カバー横の取っ手を持って反対側に倒すだけで座席の向きが変わります。
掛け心地も素晴らしい!

新型コロナウイルスの飛沫感染防止のため、対面で座るのは極力やめましょう。

運の良いことに、今回乗れたAT-652号の窓下には細長いテーブルが折りたたまれていました。
まさかの木製テーブル!
飲み物や軽食程度であればここに置き、適宜つまみながら車内で過ごせますね。

時間の関係で今回はAT-650形にしか乗れませんでしたが、次の日に撮影したらAT-750形も見ることができました。
漆塗りを彷彿とさせる赤い車体に緑のライン、乗降ドアの横には「あかべぇ」も。

AT-700・750形のほうがAT-600・650形より内装が豪華で、座席が背面テーブル付きのリクライニングシートになっています。

どちらの車両に乗れるかは運次第ですが、いずれの場合も追加料金不要でゆったりくつろぎながら、4社直通ディーゼルカーを堪能できます。
東武鬼怒川線・野岩鉄道・会津鉄道・JR只見線(会津若松~西若松間)を訪れた際はぜひ乗ってみてくださいな!

さいごに

今回は、東武・野岩・会津・JRの4社をまたに駆ける、会津鉄道・快速「AIZUマウントエクスプレス」乗車レポートをお送りしました。
夜の鬼怒川温泉駅、暖色の明かりがめっちゃ綺麗。

快速といいながらほとんどの駅に停まり、鬼怒川と会津を乗り換えなしで結ぶディーゼルカー。
追加料金なしで転換クロスかリクライニングシートのどちらかに座れる、乗り鉄的にたいへんありがたい列車でした!

末端区間とはいえ、大手私鉄の路線でこのディーゼル列車に乗れるんですよ。
2022年3月のダイヤ改正で運行区間が縮小されてしまったとはいえ、普通列車に特急列車にSLにと、随分にぎやかな地域の中でひと際個性が光る列車ではないでしょうか。

ということで今回はここまで!
ありがとうございました!