2021年9月に東武鬼怒川線を訪れた最大の目的、それが「SL大樹」!
2017年から運行開始した「SL大樹」ですが、秩父鉄道の「SLパレオエクスプレス」と並んで都心からアクセスしやすいSL列車になっています。

運行区間は下今市~鬼怒川温泉間、約12.4km。
短いには短いですが、個人的に東武のSLは激アツです!
都心からあまり離れていない観光地で、蒸気機関車や、そこに情熱を注ぐ人々の姿があるのですから!

さらに、2018年に東武博物館が譲受し、翌年より東武鉄道が復元していたC11形123号機の復元も無事終了。
2022年7月18日よりC11形123号機がデビューしました!

2021年9月に現地を訪れ、記録を取った時の乗車レポートを進めつつ、それに加えてC11形123号機にも少し触れたいと思います。
話したいことがあまりにも多いため、目次からのジャンプを利用してお楽しみいただければと。



最大4往復、2機のSLが駆ける

改めまして、東武鬼怒川線ではおおむね毎日「SL大樹」が運行されております。
運行区間は下今市~鬼怒川温泉間、約12.4km
最大で1日4往復の運行が行われており、その場合はSL・DL合計2機での運行になっています。

また、昨年10月3日からは特定運行日に「SL大樹 ふたら」として、下今市駅から東武日光駅にも入線していますよ。

けん引に使用される蒸気機関車はC11形
JR北海道から借り受けている、2つ目のヘッドライト(通称カニ目)が特徴のC11形207号機と、2020年7月30日に真岡鐵道より譲受し、同年12月20日から運行開始したC11形325号機が運行中です。

【2022/9/8追記】2022年7月18日より、東武鉄道が復元したC11形123号機も、ついに営業運転を開始しました!後ほど触れたいと思います。

SLの後ろには車掌車が連結されます。
本来の車掌車は貨物編成の最後部に連結されるのですが、「SL大樹」では自動列車停止装置(ATS)を車掌車に搭載しているため、SLのすぐ後ろに車掌車、その後ろに客車3両、という編成となっております。

そして客車
ブルートレインとして子どもの頃に憧れた人も多いであろう、青い車体の客車がJR四国から譲受され、日光・鬼怒川の地で走っています!
一部車両はぶどう色2号という茶色に塗装変更されており、それもそれで国鉄時代の雰囲気に。

さらにJR北海道の夜行急行「はまなす」で使用された「ドリームカー」も2019年4月から連結され、客車列車の懐かしい雰囲気そのままに、バラエティのあるSL列車になりました。

なお今回は見れませんでしたが、DE10形ディーゼル機関車がSLの補機や客車のけん引に使用される場合もあります。
ディーゼル機関車のけん引による列車は「DL大樹」(Diesel Locomotive)と呼ばれます。
「SL大樹」「DL大樹」運行予定は東武鉄道「SL大樹」公式ホームページでご確認ください。

SLowで懐かしい客車列車の旅へ

今回は鬼怒川温泉16時43分発の「SL大樹8号」に乗車し、下今市駅までSLowな乗り鉄旅へ!
この日の「SL大樹8号」はC11形325号機によるけん引でした。

「SL大樹」指定券は、鬼怒川温泉駅の場合は券売機・改札機に向かって左側のサービスカウンターで購入できます。
鬼怒川温泉駅から下今市駅まで指定券は大人760円・子ども380円。
「DL大樹」の場合は大人520円・子ども260円になります。

今となっては珍しい硬券
ありがたいことにダッチングマシン体験もさせてもらいました。
硬券左端の日付がマシンで印字されます。

今回指定された号車と座席は、1号車の13D。
下今市方面に向かって左手窓側で、前から4列目の席でした。

お世話になった車両は「オハフ15 1」。
青色モケットの回転クロスシートが並ぶ客車です!

国鉄時代を思い出すメロディ

16時43分、いよいよSLが高らかに蒸気と汽笛を吹き鳴らし、「SL大樹8号」出発の時!
「ガタッ」と車内が揺れることで客車にもSLの始動が伝わり、ゆっくりと鬼怒川温泉駅を発車!

国鉄形客車の車内メロディ「ハイケンスのセレナーデ」が流れ、車掌の案内放送が流れます。

温泉街の町並みが次第にうすれ、鬼怒川と森が近づいてきて東武ワールドスクウェア駅に到着。

東武ワールドスクウェア駅は2017年に開業した駅で、単線のホームに上下線共用のホームが建っている単純構造のホームですが、内装がワールドスクウェアに寄せたデザインになっています。

行き違いはできないものの「SL大樹」を含むすべての列車が停車しますよ。

東武ワールドスクウェア駅はカーブ上に設けられているものの、発車したらカーブを抜けてストレート区間に入り、そのまま小佐越駅を通過。

このあたりで、各号車に1人ずつのSL観光アテンダントが車内を巡回し、一人一人にSL乗車記念証と、アテンダントさん手描きのSLアテンダント通信を手渡ししてくれました。
アテンダント通信はほぼ全て手描きで作られていて、綿密な取材や栃木県あるあるを掲載した密度の濃い紙面に、アテンダントさんの手描きと思われる挿絵がかわいい。

今回はあえて載せないので、ぜひご乗車してお確かめください!

2021年9月現在、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、乗務員は全員、乗務前の検温と適宜の手指消毒を行い、観光案内は車内放送で行われております。
また、車内の換気は冷房と換気口を通じて常に行われていました。

鬼怒川に響く汽笛を聴こう

次の新高徳駅付近まで鬼怒川と近い距離で並行します。
木々の間から見え隠れする川の流れを、進行方向右手に見ながら進み、新高徳駅を通過。
新高徳駅は島式ホームのため、上下線行き違いもそこそこの頻度で行われます。

通過し終わって線路が1本に戻ったとたん、右に向かって急カーブ
おまけに急こう配も!
どの列車もここでは速度を落とし、車輪を「キィィィィィ」ときしませながら通過しています。

「SL大樹8号」もその例に漏れず徐行することになりますが、急カーブ急こう配とあってか、至難の業とのこと。
こここそ機関士さんの腕の見せ所でしょうか。

カーブを越えると進行方向右側に、今まで並行してきた鬼怒川を渡る絶景
鬼怒川、そして日光連山に汽笛を響かせ橋りょうに進入!

沿道での撮影時も、「SL大樹8号」乗車時も、鬼怒川橋りょうには多くの撮影者がカメラを構えていましたよ。
「左側では手を振ってくれる方がいらっしゃいますので、お応えしつつ右側もお楽しみください」とアテンダントさんが案内していました。

大桑駅での離合は超アツい

鬼怒川橋りょうを渡り終えた後も急カーブの切り通しを通過。
急カーブが終わると今度は砥川橋りょうを渡ります。

橋りょうに進入する際に汽笛が鳴るので、ぜひ耳を傾けてみましょう。
砥川橋りょうから大桑駅まで、さり気なく上り坂になっているところを「SL大樹8号」はぐんぐん進みます。

大桑駅も1面2線の交換駅になっており、「SL大樹8号」は会津鉄道直通の快速「AIZUマウントエクスプレス3号」と行き違いを行いました。

そしてSL・DL2機体制の日には、大桑駅で鬼怒川温泉行きの「大樹5号」と下今市行きの「大樹4号」が行き違いを行います!!

最初に「大樹5号」が入線および運転停車し、その横を「大樹4号」が通過。
入線・通過時には機関士さん、アテンダントさん、ノリの良い乗客が車内から手を振ってくれますよ。

私の来訪は土日だったため、「SL大樹4号・5号」入線時刻には多くのファンが集結!
ホームが狭いので周囲に気を付けて撮影し、手を振りながらお見送りしました。

花畑を通りながら今市市街へ

大桑駅を通過後は進行方向右側、倉ケ崎SL花畑にご注目!

SLを含む鉄道撮影にうってつけのスポットで、地元の方々によって季節の花が整備されています。
鬼怒川線の架線柱は線路の両側に柱が立てられていますが、花畑での架線柱は片側のみに立っているため、列車の雄姿を架線柱にさえぎられることなく撮影できるのです。

大桑駅から歩いて20~30分。
車でお越しの場合の駐車場も近くに用意されています。
来訪時は決して花々を荒らさず、大事に扱ってくださいね。

大桑駅から倉ケ崎SL花畑まで歩くと距離があるので、スケジュールには余裕を持ってお楽しみください。
私は倉ケ崎で撮影後すぐの鬼怒川方面に乗らなければならなかったため、PC背負ったまま並木道を猛ダッシュして超絶ギリギリで間に合いました…。

のんびり歩いていたら間違いなく電車を逃していたでしょう。
それくらい長い道のりです。

大谷川を越えて下今市へ

その後もひたすら田園地帯を駆け、急カーブ上の大谷向駅を通過!
名前の通り駅の近くに大谷川が流れており、駅の急カーブを抜けると同時に大谷川にさしかかります。

左右どちらの車窓からも川の景色を楽しめるところを、SLは速度を落として走行。

この川を越えたら最後に大きく左カーブ。
東武日光方面からの線路と合流し、17時18分、下今市駅に到着しました!

駅舎・構内はSLが活躍した昭和をイメージしたレトロな外観になっています。

下今市駅にはSLの機関区が併設されており、合わせてSLの転車台も設置されています。
東武日光・鬼怒川温泉寄りの旧跨線橋はギャラリーに。

個人取材として、2日間かけて沿線のあちこちで「SL大樹」撮影してきましたが、もともと「乗り鉄」な私としてはやっぱり乗ってこそ楽しめるというもの!
寝台特急では無いものの、幼少期に憧れだった青い客車を北関東で楽しめました。

ちなみに「SL大樹 ふたら」はここから東武日光駅まで駆け上がります。
ひたすら上り坂が続く東武日光までの道のりをSLは力強く走るので、タイミングを合わせてぜひ訪れてはいかがでしょうか!

音で感じる客車のロマン

SLにけん引される客車は、電車・気動車のように自走できません。
発車・停車時にモーターやエンジンの音が聞こえるわけでもありません。

だからこそ、客室内の冷房の音や、線路のジョイント「ドドンドドン」の音車内メロディや車掌の声、SLが鳴らす汽笛の音床下の電源の音などなど。
モーター音がないからこそ、それ以外の様々な音が耳に入りやすいと感じました。

そしてSLの汽笛は、車外では離れていても聞こえる音量ですが、客車内では耳に優しい音色に聞こえなくもないかも…?

ただ見た目の懐かしさに惹かれるだけでなく、車内で聞こえるいろんな音も記憶に残りやすいのも客車の魅力になるのではないでしょうか。



お楽しみは発車待ちの間にも

「SL大樹」が終点に到着したからといって、さっさと駅を離れてしまうのはもったいない!
時間に余裕があれば、転車台を見学してみましょう。

下今市駅では駅改札内の転車台広場・SL機関庫前に、鬼怒川温泉駅では駅前広場に転車台が設けられています。
今回は鬼怒川温泉駅で撮影しました。

ちなみに夜はライトアップしてました。

「SL大樹」到着後、まず機関車・車掌車が客車と切り離され、機関車・車掌車のみが転車台へのアプローチ線まで移動します。

転車台に入線すると、作業員が転車台を操作し始め、転車台の回転がスタート!
180度向きを変え、客車の元まで向かっていくのです。

転車台でのSL方向転換シーンも大人気で、私の撮影時も多くの人でにぎわいました!
回転中も機関士さんと転車台作業員さんは手を振ってくれるので、東武さんのファンサービスの厚さもうかがえます。

SL・DLの転車台入線時刻は東武鉄道「SL大樹」ホームページにも掲載されているので、転車台シーンを見学したい場合は参考にしましょう!

展望車オハテ12で風を感じる

2021年10月15日に、12系展望車が報道関係者に公開されたとのこと!

JR四国より譲受した12系客車を大規模改造し、開放型展望デッキを新設。
座席は固定式ボックスシートで、レトロな雰囲気が一層強くなって登場したとのこと。

ぶどう色2号がベースの「オハテ12-1」、青15号がベースの「オハテ12-2」が、今後の「SL大樹」に連結されると見込まれるので、これからもSLを見て、乗りたくなることは間違いないでしょう。

というか私自身がまた行きたくて仕方ない。

復元機がついに登場!

【2022/9/8追記】

2019年より東武鉄道が進めていたC11形123号機の復元作業が終了し、2022年7月18日よりついに営業運転を開始しました!

123号機はもともと、1947(昭和22)年に滋賀県の江若鉄道が発注し、日本車輌製造で製造された私鉄発注の個体。
製造当初はC11形1号機でした。
江若鉄道で活躍後、1957(昭和32)年より北海道に渡って貨物をけん引していたのだとか。

1975(昭和50)年に廃車となり、日本鉄道保存協会にて静態保存されていたようですが、それを東武博物館が2018年に譲受し、翌2019年より東武鉄道が復元作業を行っていました。
譲受当初の車番から「C11形123号機」と改め、2022年7月18日より運行を開始。

営業運転初日は、下今市9時33分発・鬼怒川温泉10時9分着の「SL大樹1号」にC11形123号機が就き、始発駅の下今市駅では出発式も開催されました。
駅や沿線には多くのファンが駆けつけ、当日のSL列車も全てほぼ満席になりました。

これにより、C11形123号機は国内で動態保存される唯一の私鉄発注国産蒸気機関車となり、国内唯一、同一形式によるSL3機体制(207号機はJR北海道から借り受け)も実現!
より柔軟なSL運行が可能になるので、今後の東武の計画次第では鬼怒川線以外でのイベント走行も可能になります。

都心からあまり離れていない地域で、3両ものSLを見ることができるのは日光・鬼怒川だけ!
ぜひSLに乗りに行きませんか!?



さいごに

今回は東武鉄道「SL大樹」の概要あれこれと、鬼怒川温泉16時43分発「SL大樹8号」の乗車レポートを繰り広げてまいりました。

東武鉄道「SL大樹」公式ホームページによれば、SL復活運転に「鉄道産業文化遺産の保存と活用」「地域活性化」「東北復興支援の一助」を掲げているとはいえ、プロジェクト発足時点では、東武鉄道社内にSL技術・技能・免許を有している人がいなかったとのこと。

そこで、すでにSLに関して知識経験のあるJR北海道・真岡鐵道・秩父鉄道・大井川鐡道、DLについては真岡鐵道・会津鉄道の協力を得たそうです。

下今市駅の転車台は山口県の長門市駅から、鬼怒川温泉駅の転車台は広島県の三次駅から、いずれもJR西日本より譲渡されたものでした。

私は2日間個人で取材して、SL運行に取り組む関係者、沿線で手を振ってくれる来訪者や地元の人々を見てきたこと、そして事業への協力に携わった他社の話を見聞きしたことで、
「SL大樹」にはいろんな人の熱い魂が交差していると実感しました。

過去に仕事の案件でSL取材に参加させてもらったことがありましたが、当サイトでもかなり熱くなってしまいましたね。

「随分大げさだな」と思う人もいるでしょう。
しかし現地を訪れてもらえれば、なぜこんなに胸が熱くなるのか分かっていただけるはず。

新型コロナウイルス感染対策を徹底した上で、ぜひ日光・鬼怒川のSLを楽しみましょう。

めっちゃ長くなったけど今日はここまで!
ありがとうございました!

参考

東武鉄道「Sl大樹」公式ホームページ
(別タブで開きます)

関連実績

当サイトの「実績」以外は全て別タブで開きます

マイナビニュース・鉄道カテゴリ

2020年2月25日「東武鉄道「SL大樹」で珍道中!? 車内で江戸忍者や五右衛門が大奮闘
2020年8月2日「東武鉄道、C11形325号機が南栗橋に到着 – 青い機関車&客車も公開
2020年10月18日「東武日光駅に「ふたら」が入線、地元の子も「ミニSL大樹」で出迎え

【2022/9/8】追記
2022年4月23日「東武鉄道が復元、C11形123号機が試運転 – 運行開始前に3重連披露も
2022年6月20日「東武鉄道が復元したC11形123号機「SL大樹」3重連イベントで先頭に
2022年7月18日「東武鉄道が復元、C11形123号機の営業運転開始 – 下今市駅で出発式

たびハピ
2022年4月29日「東武鉄道の旅に「SL大樹」は外せない!下今市~鬼怒川温泉は乗車しよう