今回から数回に分けて、KATO旧製品のDD13形ディーゼル機関車を、かつて琵琶湖西部に存在した江若鉄道タイプに改造する制作工程をご紹介します!
昨年、オハ31形旧型客車を江若鉄道タイプに塗り替え改造することができました。
客車を改造したんだから次は機関車!
動力不動の中古品として入手し、動力を修理し、ライトをLED化したDD13形ですが、いよいよ車体の塗り替えに着手します。
ところがこれが、オハ31形の比ではないほど難しい改造となりました…!
本稿では、江若鉄道DD13形の超ざっくりな概要と、塗装前の準備として不要モールドの撤去、水洗い、塗装棒への固定を掲載いたします。
車体の詳しい分解方法や動力のメンテナンスについてはこちらをご参照ください。
この作例を通して、模型制作の参考にしていただいたり、純粋にお楽しみいただけたら嬉しいです。
初期は試作も兼ねてた江若機
国鉄時代、車両基地での入れ換えや、ローカル線区で貨物・客車牽引を行う小型ディーゼル機関車としてDD13形が存在していました。
1958年から9年かけて計416両が製造された同形式は、初期型・後期型で大きく見た目が異なっています。
初期型はヘッドライト1灯、後期型は2灯となっている他、台車やグリル形状も違います。

そして、現・JR湖西線の前身たる江若鉄道にも、51号機・52号機の2両が存在しました。
51号機はヘッドライト1灯の初期型で、1957(昭和32)年に登場。
実は国鉄のDD13形の試作機にも位置付けられる個体で、量産機よりも500mmほど車体が長かったそうです。
車体はダークグリーンをベースに白いラインを巻き、ボンネットの両エンドで下にカーブしていました。
対する52号機はヘッドライト2灯の後期型。
こちらは国鉄機とほぼ同形態となっています。
カラーリングは51号機と同じで、完成した模型で先にお見せするとこんな感じだったと思われます。
どちらも国鉄機とは異なり、ランボード上の手すりが大型化され、前面のナンバーは飾り板に変更されています。
キャブ外側下部にあった汽車会社の銘板は大型楕円形のプレートになっていました。
貨物輸送、および湖水浴シーズンの臨時列車の運用をこなしていたそうです。
多客期には国鉄から20m級の客車を借りて牽引したこともあったとか。
1969(昭和44)年の江若鉄道廃線後、51号機は別府鉄道で廃止まで活躍。
52号機は、岡山臨港鉄道を経て最終的に水島臨海鉄道に移ったそうですが、残念ながら水島臨海では部品取りに使われて終わったらしいです。
KATO旧製品のDD13を私鉄タイプに
今回改造を施すDD13形はKATOの旧製品。
現行ロットと構造が異なり、特にランボードは足場・手すりでパーツが分かれていないため、取り扱いに気を付けねばなりません。
それでも、これまでに動力不動を分解・メンテナンスで復活させたり、ムギ球だった前面ヘッドライトをLED化させたりして、少しずつ手を加えてきました。
車体をまるごと塗り替え、しかもラインのカーブまで再現するのは、今までとは比べ物にならない難しさが予想されます。
しかし、キットも完成品も手に入らないなら自分で作るのみ!
意を決して始めます!
昨年のオハ31形同様、今回も色だけ再現します。
そのため、手すりの実車再現やテールライト1灯化はしません。
前面飾り板は切り込みが細かすぎるので、飾り板は簡略化させます。
また、汽車会社のメーカーズプレートは四角形で代用します。大型楕円のインレタが手に入らなかった。
このように実物と違う点も多々あります。
しかし、この記事のタイトルで「タイプ」って言いきっちゃったので、できる限りで実車の雰囲気に近づけていきましょう!
不要モールドは塗装前に撤去
何はともあれ、作業を進めていきましょう。
まずは分解しつつ、不要なモールドを削り落とすところから。
撤去するもの一つ目は区名札受け。
国鉄機は所属する基地の漢字1文字が書かれた札を掲出しますが、江若機はほぼ同じ位置に社紋が貼られるため、区名札受けが邪魔になります。
まずはデザインナイフで大まかに四角形のフレームをカット。
関係ない部分に傷をつけないよう、マスキングテープで上下を覆っておくと良いでしょう。
朱色の塗装ごと剥げて、灰色の成形色があらわになったらOK!
しかし、デザインナイフだけではまだモールドは残っています。
600番の耐水ペーパーで、元々のモールドが分からなくなるまで削ります。
周りの側板も一緒に削れていきますが、多少は必ずそうなるので割り切ってやっちゃいましょう。
耐水ペーパーでプラスチックを削るなら、水研ぎもできます。
研磨対象を水で濡らして削ることを水研ぎと呼び、削りカスが飛びにくくなるメリットがあります。
水研ぎした箇所は適宜ティッシュや綿棒で拭き取りましょう。
また耐水ペーパーといえど、何度も水を含ませればさすがに早く消耗します。
ヘタったら新しいペーパーに交換しましょう。
研磨対象が水に弱い場合は水研ぎはやめましょうね。
二つ目の削る箇所はキャブ屋根のホイッスル。
これを別パーツ化したいので、一体成形になってるところをデザインナイフで切り落としてしまいましょう。
切り落とした箇所に0.6mm径の穴を開け、完成直前にホイッスルを固定します。
目立ちやすい位置なら均したほうが良いですが、ここは別パーツを上に置くので、切りっぱなしでも問題ないかと思います。
3つ目はランボード手すりのチェーンを切除。
両エンド左右の手すりを繋いでいるチェーンは、資料を見た限り江若機にはほぼありませんでした。
ですのでひと思いにニッパーでカット!
左右の垂直になっている手すりは残すので、残すべき箇所を巻き込まないように注意してください。
分解・洗浄した後、塗装棒に装着
不要なモールドを削り落としたので、全てのパーツを分解します。
キャブのガラスは固かったですが、しなりを利かせながら、前後左右バランスよく押し下げて外します。
あまりにもやりづらかったので前後のガラスは分割しました。
再組立時にプラ板の端材を貼って繋げることにします。
ボンネット両端からはヘッドライトレンズを外します。
写真のようにシャーペンで押すと傷つけるリスクがあるので、綿棒でやるか裏からピンセットで引き抜くほうが良いです。
外したガラスや塗装しない部品はひとまとめでの保管をおすすめします。
私はカードショップの小さな袋に入れておきました。
塗装対象とする部品は、一応、中性洗剤入りの水で油分を落とすこと。
デリケートな部品を折らないように要注意!
引き揚げた時にはしっかり水分を拭き取ってくださいまし。
したら、キャブにもう一手間を。
この時点で元々のナンバープレートとメーカーズプレートだけマスキングします!
ここでマスキングしておくことで、後で白いラインを残す際に高さ・太さの目安になります。
今回のラインの太さは1.2mm。
1ミリ以下の数値なんて測りようがないので、カッティングマットの模様と直感を頼りに切り出しました。
専用のケースがあるタミヤのマスキングテープはともかく、剝き出しで保管するとどうしてもテープにゴミが付いてしまいます。
太さにもよりますが、できればテープを切り出して使いましょう。
ケースがないマスキングテープは、例えばジッパー付きのポリ袋に入れておくとゴミが付きにくくなります。
さて、塗装前のマスキングもできたなら、あとは塗装棒に部品を固定するのみ!
幅の広い大きなパーツは、前回同様、スチレンボードで先端に足場を設けた割りばしに両面テープ留め。
蓄電池箱は割りばしに直接両面テープで固定してます。
キャブにはピッタリなものがなかったので、竹串の先端にウレタンの端材を刺して塗装棒にしました。
これで今回の塗装は準備完了!
車体に塗料を吹き付けて新しい色にしていけます。
が、区切りが良いので今回はここまでにしましょう。
さいごに
今回は、KATO旧製品のDD13形ディーゼル機関車を江若鉄道タイプに改造する制作工程の初回!
デザインナイフと耐水ペーパーで不要なモールドを削除し、水と中性洗剤で洗浄、そして塗装棒に装着する準備段階をご紹介しました。
こんな超マイナーな仕様はまず一般販売されないでしょう。
ならば、色だけでも良いから自分で作るしかないのです!
振り返ると、普通の車両に比べてDD13形は部品も多く、正直塗り替えだけでも高難度だったのでは…とも考えています。
しかし、なんだかんだでそれを成し遂げたからこそこの記事を書けています。
気に入ったノウハウは参考に、そうじゃないところは反面教師にし、鉄道模型を制作・改造するモチベーションに繋げていただければ嬉しいです。
次はスプレー塗装について解説します。
今回はここまで!
参考
『RM LIBRARY 252 江若鉄道(下)―琵琶湖西岸の気動車王国―』著:高橋修 ネコ・パブリッシング 2021年6月
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