今回も、Nゲージ鉄道模型の動力ユニットを自力で分解・メンテナンスします!
今回お手入れするのは、意外と触れる機会が少なかったTOMIX車両。
それも以前のレールバスのような特殊なタイプではなく、ボギー台車の一般的な車両です。
キハ47形九州色でその方法を実演していきます。
お持ちの鉄道模型で、たとえばこんなトラブルはありませんか?
- 列車の動きが悪い・ギクシャク
- ライトがチラつく
- 動力から異音がする
- そもそも全く動かない、なんならパワーパックのランプが赤い
ギクシャク走行や異音、ライトのチラつき程度なら、部品の清掃・オイル交換により、高確率で改善するでしょう。
そのための分解メンテをぜひ身に付けて、鉄道模型ライフにお役立ていただけたらと!
※鉄道模型の改造・加工及び詳細な分解は自己責任でお願いします
もくじ
TOMIXのキハ47形九州色
改めまして、今回メンテナンスしたい車両は、TOMIXのキハ47形九州色。
元から走行状態は悪くなかったものの、これをレンタルレイアウトに持ち込む機会があり、その前にストレスなく走れる状態にしておきたかったのです。
2025年3月に機関更新車の8000・9000番台が発売されましたが、私が持っているのは機関未更新タイプです。
実車のキハ47形は国鉄時代の1977(昭和52)年に登場し、国鉄からJR九州に継承された個体が、アイボリー車体に青帯を巻いた外観に変更されました。
香椎線で運行していた車両の一部はさらに「アクアライナー」塗装に変わっていましたよね。
キハ31(実車引退済み)やキハ125との混結も日常的に行われており、Nゲージでもカプラーを統一すれば混結できます。

以前の南部縦貫鉄道レールバスとは異なり、キハ47形はボギー台車の一般的な車両。
そのため、TOMIX車両の大半が本稿と同じ要領で分解・メンテできるはずです。
調子の悪そうな個体がいたら、これから一緒にお手入れしてみませんか?
動力ユニットを外側から分解
ではやっていきましょう!
まずは車体裾の爪を外し、車体と動力ユニット(床下)に分けるところから。
室内灯を組み込んでいる場合はそれも外してください。
TOMIX車両の多くにボディマウントTNカプラーが取り付けられています。
狭くリアルな間隔で連結できますが、これがあると座席パーツが外せません。
勘合部分を細いマイナスドライバーでずらし、カプラーを外してください。
先頭車両の場合、スカートごとカプラーを取り外すようにしましょう。
スカート単体でも外せますが非常にデリケートです。
そのため、カプラーの取り付け位置を間違えると配管の間の柱が折れます(キハ40でやらかした)。
座席パーツが動力ユニットのカバーになっており、その側面が爪でダイキャストに留まっています。
細いマイナスドライバーで座席パーツの爪を全て外してください。
片側の端から順番に外すと上手くいきますよ。
爪を折らないように注意しながら、最小限の力で噛み合わせを解きましょう。
カバーを開けると出てきたのは、裏返しになっているウォームギアとその下の動力台車。
ウォームギアはピンセットで持てばすぐに外れます。
どう見てもグリスがギットリしているので、後で拭き取り、新しいオイルを差してあげましょう。
動力台車は斜めに引き下げれば外せます。
最後にモーター本体。
他社製品とは異なり、モーター端子と座席裏の通電部分はスプリングで接続しています。
このスプリングはポロっといくので失くさないように!
今回マストではないけど、床下機器も一応取り外しできます。
ダイキャストの爪に留まっているのをマイナスドライバーでこじってやりましょう。
なんというか、全体的にマイクロエースの動力構造とかなり似ていますよね。
いや、マイクロの動力がTOMIXに似ているといえば良いでしょうか。
明確に違うところは、座席裏の導電部分がTOMIXは基板になっています。
ここに動力台車のスプリングが触れて各部に電気が流れるようですね。
この部分、マイクロエースは銅板でした。
もしミノムシクリップなどを持っていれば、パワーパックからモーターだけに給電してみてください。
その時モーターが正常に回転すれば、不良の原因は動力台車や導電経路にあると考えて良いでしょう。
動きがおかしい、またはショート(パワーパックのランプが緑から赤に)するなら、残念ですがモーターの交換をご検討ください。
動力台車は比較的分解しやすそう?
ここからは、動力台車を分解していきましょう。
組立順を忘れても大丈夫なように作業は1個ずつ進めることをおすすめします。
排障器や台車マウントカプラーなどを取り付けている場合は先に外してください。
他社車両と同じように、TOMIXの動力台車も4箇所の爪で固定されています。
これらをマイナスドライバーでこじって分解しましょう。
他のメーカーに比べて噛み合わせが気持ちやさしめに感じました。
最後に、ギアボックス真ん中のピンをつまようじなどで押し出すと、全ての部品を分解できました。
単体ギアや中心ピンなど、超重要な割に失くしやすいパーツが多いので注意してください。
ここまでくればあとは徹底的に部品を掃除するのみ!
汚れは除去って潤滑油を交換
動力ユニット本体、動力台車とも分解したら、綿棒とティッシュとレールクリーニング液(本稿ではKATOユニクリーナー)を用意!
汚れはしっかり拭き取り、埃の巻き込みはピンセットで除去しましょう!
車輪は、レールに触れる踏面や、台車集電板に触れる位置をクリーナー綿棒で拭いてください。
先にゴムタイヤのない面から掃除すると良さそう。
ゴムタイヤからは高確率で黒い汚れが取れます。
モーターの回転を伝達するギアは、歯が欠けていないか要チェック!
ホコリを巻き込んでいたら全部除去してください。
埃・糸くずの巻き込みは動力不調の原因になります。
台車集電板は、車両によって方式が違うと思われます。
キハ47の場合はフランジの裏に接地して電気を拾うタイプでした。
車輪・車軸に接する面をレールクリーナー綿棒で適度に拭いた後、感熱紙のレシートで磨きます。
感熱紙のレシートは、印字面が超絶キメ細かい紙ヤスリとして研磨に使えます。
磨き過ぎる可能性は低いですが、一応やりすぎに注意しましょう。
レシートで磨いた面を再度濡れ拭きし、研磨跡も拭き取りましょう。
お次はウォームギアとカバーにお手入れ。
購入状態のままだと黄色いグリスがべったり塗られているので、可能な限りそれを拭き取ります。
このグリスは大丈夫ですが、古くなったグリスは固くなる上にゴミも巻き込むため、やはり動力不調の原因になりかねません。
したら元どおりに組み直しておきましょう。
黒いカバー両端の爪が白いスペーサーの溝に噛み合って固定されるので、スペーサーを失くさないように!
清掃後の動作部品にはオイル注油またはグリス塗布をします。
グリスの場合はこの時点でウォームギアに少量塗布しましょう。
KATOユニクリーンオイルの場合、組み立てた後にギアに注油しても良いです。
いずれにせよやり過ぎはNG!
そして忘れちゃいけない床板集電板…というか床下基板。
金色の部分が導電部なので、そこをクリーナー綿棒で拭いておきましょう。
動力台車を再組立
全ての部品の清掃が終わったら、動力台車を元通りに組み直していきましょう。
ギアボックスを裏返しにしたまま、集電板をセット。
中央の大型ギアを外した場合、この時点で元の位置に戻します。
単体ギアを取り付けます。
TOMIXの動力台車には向きがあり、最終的にギアが裏蓋の穴から見えるように取り付けなければなりません。
本稿では、写真奥側に歯車が来るように取り付けていきます。
続けてギア付き車輪も取り付けます。
フランジ集電は集電板がフランジの内側に当たるように組み合わせてください。
ピボット集電は車軸先端を集電板に収めましょう。
なお、車輪を戻す前にタミヤ接点グリスを少量塗っておくと、接点不良防止に役立ちます。
車輪を元に戻したら、最後にギアボックスカバー(兼台枠)を被せます。
全て嵌め込んだように見えてあと一歩なところがないよう、4箇所の爪を全てしっかり押し込んでください。
KATOユニクリーンオイルを使う場合、この段階で少量ギアボックスに差しておくと良いでしょう。
車輪を指で回せば、だんだんギアボックス全般にオイルが行き渡ります。
このように、モーターが正常なのにギクシャク走行する場合、動力台車や導電経路をメンテナンスすれば高確率で復旧します。
異音の場合はオイル切れと考えられるので、該当部分にオイルを差せば大抵は解消するはずです。
ここまでが動力台車1個分の作業になります。
もう片方の動力台車も同じように分解・清掃し、オイル・グリスで保護した上で組み立ててください。
車体を組み戻してメンテおしまい!
ここまでやればあと少し!
ダイキャスト中央にモーターを入れた状態で、シャフトを嵌め込み、ウォームギアを元の位置に戻しましょう。
そしてウォームギアの下に動力台車を差し込みます。
マイクロエースと違ってウォームギアの隙間から動力台車のスプリングが集電板に接触します。
ちなみに、ライトのスイッチがズレると座席パーツが綺麗に嵌まらないので注意しましょう。
上手くいかない場合は、先にウォームギアだけ組み込んで座席パーツを戻すのも構いません。
動力台車を後から取り付けましょう。
座席パーツを組み戻したらボディマウントTNカプラーも取り付けできるようになります。
スカート付きのカプラーは、よほどのことがない限りTNカプラーと合わせたままにしておく方が良いです。
元通りに組み直すことができたらメンテナンスおしまい!
お疲れ様でした!
安定走行・安定点灯が復活
メンテナンスしたTOMIX車両を線路に乗せて通電させてみると、その効果を実感できるでしょう。
走行の安定性が向上し、ライトもより安定して点灯するようになります!
ちゃんとレールも掃除しておきましょうね。
撮影外でキハ40もメンテしておきました。
こちらも低速から滑らかに走り出し、ライト類も安定して光っています。
どちらも「M-9」モーター搭載車両で、これは現在主流の「M-13」モーターの1世代前。
しかし、正常に動作し、かつ適切な手入れも行き届いていれば、まだまだ活躍できます。
私の体感ですが、適切な固さでパーツが噛み合っていたため、TOMIX動力はメンテしやすいほうだと思いました。
とはいえ、個体差な可能性もあるので、油断せず丁寧に扱ってくださいね。
さいごに
今回は、TOMIXの一般型車両の例として、キハ47の動力ユニットを分解・メンテナンスしました。
走行が不安定、またはライトがチラつく、という場合は動力台車や通電部分を清掃しましょう。
動力車から変な音が聴こえたらオイル・グリスを交換してみましょう。
大元のモーターがダメになったらさすがに…ですが、軽度の不具合なら自力で解決できます。
自身の鉄道模型への理解・愛着アップも兼ねて、ぜひお試しください。
ちなみに本稿で撮影したキハ47は、その日の午後に行ったレンタルレイアウト取材でさっそく活躍しました。
…そうなんです、「電撃ホビーウェブ」(KADOKAWA)でやらせてもらった「首都圏レンタルレイアウト探訪記」の初回に、このキハ47形が登場しています!
車両チョイスがマニアックすぎた気がしますが、特にトラブルなくお店のレンタルレイアウトを走ってくれました。
以下の「関連実績」より、ぜひ「レンタルレイアウト探訪記」もお楽しみください。
今回はここまで!
ありがとうございました!
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