今回は「鉄道コレクション」の動力を自力で分解してメンテナンス!
その方法を実演していきます。

トミーテック「鉄道コレクション」はNゲージサイズのディスプレイモデルですが、別売の動力ユニットや走行化パーツを組み込むことで、Nゲージ鉄道模型として自走できるようになります。
鉄道模型の動力ユニットには多くの可動部や電気接点がある以上、時間経過や、汚れ・ホコリの溜め込み走行に異常をきたします。

たとえば、お手持ちの動力ユニットでこんな症状はありませんか?

  • 線路は掃除したのに走行が不安定
  • 動力車の中から異音がする
  • そもそも指でつつかないと動かない

これらのトラブル、おそらく車輪を掃除するだけでは解決できません。
でも、鉄コレ動力も自力で分解・修理できるのです!

写真多めで分解手順を解説していくので、ぜひ参考にしていただければ嬉しいです。
本稿では、一般的なボギー台車の動力ユニットについて解説します。
2軸車両向け動力は今回扱いません。

※動力ユニットの分解・再組立は必ず自己責任で作業願います


私鉄気動車の動力を修理したい

今回修理したい動力ユニットは「TM-23 18m級C」。
私鉄・第三セクターの気動車に主に使用する動力ユニットです。
私は江若鉄道キニ9・キハ12に組み込んでいます。

このうち、キニ9号に入れている動力の調子が悪く、線路を拭いたのに走行が安定しない状態が続いたので、そろそろメンテナンスしたいと思っていました。

ちなみに、鉄コレのキニ9号は、キハ14号(元国鉄キハ04)とともに江若交通の事業者限定品として発売されていました。
キハ14号は「TM-11R」(16m級C)で動力化しています。

キハ14号も撮影外でオーバーホールし、要領を掴んできました。
ここからはキニ9号で分解・メンテナンスを実演します!

動力台車以外を先に外す

では、鉄コレ動力を分解していきましょう。
まずは車体側面を少し広げ、動力ユニットから外してください。

他社のNゲージもそうですが、床板と車体は爪で固定されています。
固定爪は車体内側またはガラスパーツのどちらかにモールドされているので、爪の位置を探っていきましょう。

他社製の動力ユニットならここで台車を外したくなるけど、鉄コレ動力はこのままだと動力台車が外せない作りになっています。
ですので先にモーターやウェイトに目を向けましょう。

鉄コレの動力では、客室内にあたる部分にモーター本体やウェイトが鎮座しています。
後述する例外を除き、このウェイト内部にシャフトが隠れていることが多いです。

ということで、次はウェイトを外します。
左右のくぼみ(ウェイト1個で4箇所)に床板・爪の勘合部分があるので、そこをマイナスドライバーで押し広げて外しましょう。

続けてモーターを外します。
モーター本体は床板中央の側面に爪で留まっているので、マイナスドライバーでこじってください。

グリスが塗られていると高確率でシャフトが引っ付いてくるので、失くさないようにしましょう。

ウェイト、モーターを外してはじめて床板集電板も外せるようになります。
前後に取り付けられた集電板押さえで固定され、台車集電板に触れて通電する仕組みになっています。

これも横の穴からマイナスドライバーで押し出しましょう。
ただし、集電板押さえ板には指を添えてください。
外れた反動で押さえ板が吹っ飛ぶ可能性があり、最悪見つからなくなります。

押さえ板の取れた集電板はあっさり床板から外れるようになります。

最後にボディマウントカプラーの取り付けに必要な、車端部スペーサーも先に外すと良いかも。
動力台車の分解時に意外と邪魔になります。

これで、動力台車以外は分解・取り外しができました。

ちなみに、テスターミノムシクリップなどを持っている場合、面倒でなければモーターに直接給電してみてください。

モーターが正しく回転するなら不調の原因は汚れの蓄積と考えられ、各部品の清掃により動力を復活させられます。
モーター自体がダメそうな場合、別の動力からモーターを移植するか動力ユニット自体を交換するほうが良いかもしれません。


取付状態のまま動力台車を分解

ここまでやってようやく動力台車の分解に入っていきます。
こうでもしないとまともに分解できそうにありません。

というのも、普段は動力台車を斜めに引っ張れば外せるでしょう。
これが鉄コレ動力だと斜めに引き下げても外せないほど噛み合わせが固いのです。
ので、大事をとって外さないままギアボックスを分解していきます。

床下も見てみましょう。
実は、車輪が収まっている部分の構造は他社とほとんど同じです。
前後左右の爪をマイナスドライバーで押したりこじったりすれば分解できます。

左右と前方(車端部側)の爪は特に問題ないものの、問題は後方(車体中央側)の爪。
まだ動力台車が車体から外れない以上、後方の爪はずらしにくいです。

ありがたいことに台車の車体中央側の上部に穴があるので、その上からマイナスドライバーを差し込み、噛み合わせを解いてください。

やっとギアボックスカバーを外せました。

部品が落ちないよう動力ユニットを裏返しにして、ギア単体、ギア付き車輪、台車集電板を取り出しましょう。
これでようやくギアボックスが床板から外れるようになります。
床板を軸にして上に回す要領で取り出してください。

最後にウォームギアカバーを開ければ分解おしまい!
万が一部品の戻し方が分からなくなった場合に備えて、動力台車は1個ずつの分解・清掃をおすすめします。

ちなみに、ギアボックス内にはピン取付のギアがまだ残っていますが、無理に外す必要はありません。
外す場合は外側からピンを押し出して外してください。

他社製の動力ユニットと部品構成はほぼ同じですが、組み付け位置が違う(とくにウォームギア)ので分解手順も大きく変わっていました。
でも、ここまで分解できたらこっちのもの!
車輪や導電経路などを一つずつ綺麗にしていきましょう!

レールクリーナーと綿棒などで徹底清掃!

「鉄道コレクション」動力の分解・メンテナンスといっても、ここまで分解できたらあとはいつも通り!

レールクリーニング液(無水エタノールもOK)綿棒ティッシュ、つまようじなどを用意。
レールクリーニング液(本稿はユニクリーナー使用)で濡らした綿棒で、車輪、集電板、ウォームギア、ケース内側など、各部を徹底的に掃除しましょう。

車輪のゴムにはスパーク汚れが溜まるので念入りに!
単体ギアやギア付き車輪から歯が欠けていないかもチェックしましょう。

部品がホコリを巻き込んでいたなら、ホコリも全部除去すべし!
可動部品に絡まったゴミ・ホコリはギアの回転を妨害してしまいます。

今回修理しているような「〇〇級C」(軸間距離12mm)は車軸集電です。
車軸フランジ裏側も濡らし綿棒で拭いてください。

その車軸集電の集電板はこのような見た目になっています。
細長い部分の開いている面が外側になり、長方形の外側の面とフチ下部が車輪と接触します。

こういう集電板の接点復活には、感熱紙のレシートが良いかもしれません。
なぜなら、指で触るとツルツルな印字面超絶キメ細かい紙やすりのようなもの。
これで車輪と接する部分を磨いてみましょう。

床板集電板の裏側も、レールクリーナー綿棒や感熱レシートでお手入れしましょう。
段差が付いている先端の面に台車集電板が接地します。

モーター本体から伸びている2本の金属端子が床板からモーターに導電します。
少々やりづらいですが、この端子先端も濡れ拭き綿棒とレシートでメンテしましょう。
感熱レシートで磨いた箇所にはレールクリーナー綿棒での濡れ拭きをお忘れなく!

ちなみに、モーターの前後に取り付けられている真鍮の円筒がフライホイールです。
中心にシャフト受けの穴があるので、グリスが古くなっていたら取り除き、後で差し替えてください。

この他、ウォームギア本体やカバーの内側も、古いグリスを可能な限り徹底除去してください。
不調の原因がゴミ・汚れの場合は、このような各部品の清掃と接点磨きで改善するはずです。


ギアボックスを床板に取り付け動力台車を組む

車輪、集電板、ウォームギアの清掃ができたら、動力台車を組み直していきましょう。
とはいえ、動力台車を先に組むと床板に取り付けできなくなるのが困りもの。

なのでギアボックスを先に、上から滑り込ませるように元の位置に戻しましょう。
ピン留めギアを外した場合は先にそれを戻してください。
ウォームギアは最後に取り付けます。

ギアボックスが勝手に外れないように、動力を裏返しに置きます。
その状態で、台車集電板と単体ギアを戻してください。

したら、集電板がフランジの裏側に来るように押さえながら、車輪も戻します。

全て正しい位置に取り付けできたら、ギアボックスカバーを被せ、爪が「パチッ」と鳴るまでしっかり固定してください。
ちゃんと嵌まったように見えてあと一歩な箇所も出てくるので、カバーの爪受けをよく押さえましょう。

正しく組み戻すことができたら、穴から見えている歯車に「ユニクリーンオイル」(タミヤのセラグリスなどもOK)を差しておきましょう。
穴1つにつきほんの1滴で大丈夫。
あとは車輪が回ればオイルが勝手に伝播されます。

不調の原因がオイル切れだった場合、このように新しいオイル・グリスを可動部に差すことで可動部の異音が収まるはずです。

そしたら動力ユニットを元の向きに戻し、ウォームギアを戻しましょう。
必ずシャフト受けが車体中央を向くように取り付けてください。

最後にウォームギアカバーを被せて固定すれば、動力台車が元に戻ります!

横から飛び出た導電部が床板集電板に触れるので、ここに接点グリス(タミヤ)を少量つけておくと良いですよ。
接点不良を防いでくれます。

もう片方の動力台車も作業方法は同じ。
分解してから各部を清掃し、組み直してから潤滑オイル滴下・接点グリス塗布まで行いましょう。

動力ユニット本体を組み戻す

両方の動力台車をメンテナンスできたら、動力本体も組み直していきます。

まずは床板集電板。
両端が一段高くなっている面が上を向きます。

集電板が動かないように注意しながら、集電板押さえを取り付けてください。
床板側面に爪受けがあるので、そこにパチッと嵌めこみましょう。
これで床板集電板を固定しつつ、ウェイトを乗せてもショートしない足場が作られます。

そしたら今度はモーターとシャフトを取り付け。
床板(または床下のウェイト)とモーター本体の矢印が同じ向きになるように取り付けてください。
その時、両方のシャフトを台車・モーター両側に差し込んでから固定しなければなりません。
ちょっと大変ですが頑張りましょう。

シャフトとシャフト受けには噛み合わせがあるので、適当にぶち込んでも入りません。
指で少しずつ回しながら、シャフトが奥まで入る位置を探ってください。

モーターの集電端子には、床板集電板と接する位置に接点グリスを差しておくと接点不良を防げます。

そしたらこれが最後!
ウェイトを元の位置に戻して再組立ておしまい!

あとは、車体を取り付ければ動力車が復活します。
が、この状態で一度慣らし走行をさせておくと良いでしょう。


これ以外の部品構成は

今回修理した動力は「TM-23」(18m級C)でしたが、動力ユニットの種類によって部品構成が異なる場合があります。
私が持ってる限りですが、別パターンのメンテ方法もご紹介しましょう。

まずは、軸間距離が14mm以上ある動力台車。
「〇〇m級A」(B・Dも含む)がこのパターンになると思います。
軸間距離14mm以上の動力台車ピボット集電(車軸先端から集電)です。

この場合、尖った車軸先端や、集電板の軸受け部分レールクリーナー綿棒等で綺麗にしてやってください。
ギアボックスの組み立て時は、車輪・集電板・台車レリーフを先に組むとやりやすいです。

ウォームギアカバーの爪形状も4つ爪になっています。
位置をよく見て、割らないように気を付けましょう。

小型ディーゼルのTM-11R

次は、譲渡車を含む国鉄キハ04形系列や、私鉄・第三セクターのレールバス型気動車に使用する「TM-11R」(16m級C)について。
この動力ユニットには、シャフトを避けたU字型のウェイトが使用されています。

もちろん、この場合はモーター・シャフトを先に外してください。
ウェイトとモーターの順番以外は本稿と同じ手順でメンテナンスできます。

京阪大津線向けのTM-20

次は、実車も石山坂本線で活躍中の、京阪電車600形・700形に使う「TM-20」(15m級C)です。
この動力ユニットは、片方の床板集電板がモーター端子と一体化していました。

この場合、モーター本体を爪受けから外した後、本体を取り出さないまま集電板押さえを先に外すことになります。
モーター本体が宙ぶらりんになると重みで端子が折れるかもしれないので注意願います。
端子と反対側の集電板は何も問題ありません。

初期の鉄コレ動力は

最後に、鉄コレ黎明期の車両に使用されていた「TM-03」(12m級)「TM-04」(15m級)です。
本稿では「TM-04」を例にします。

これらの動力ユニットは後発の動力と異なり、両軸集電・片軸駆動です。
つまり、電気は両方の台車で拾えるものの、モーターで動く台車は片方だけです。

この場合も基本的にやることは同じ
床板側面の爪を外し、ウェイト、モーター、集電板の順に分解していけば良いでしょう。
台車は駆動側・非駆動側とも同じ構造で、ピボット集電です。
ただし、集電板押さえは床板に一体成形されています。

前述の通り、モーターと繋がっていない台車も集電だけはできます。
手を抜かず、通電経路の汚れを除去し、綺麗に整えてあげましょう。
片軸駆動とはいえ、ちゃんと修理すれば現行品に引けを取らない性能で走行できます。

「TM-03」「TM-04」を使う新製品は今のところありませんが、中古ショップで稀に見かけるかも。
中古品で見かけたらぜひ手に取り、自分の手で蘇らせてやってください。


鉄コレ動力も自力で復活!

というわけで、無事に鉄コレ動力ユニットの分解・メンテナンスができました。
修理前にギクシャクしがちだった動力は、古グリスや汚れを除去して電気接点を磨き、潤滑オイルを新しくしたことによって見違えるほどに復活しました!
写真だと分かりにくいですが確かに手ごたえアリです。

前進・後進どちらも、低い電圧からなめらかに発進しました!
修理したばかりでは効果が実感できなくとも、新しいオイル・グリスがなじめば効果が出てくるはずです。

鉄コレ動力は低い電圧で起動するかわりにライトが点灯しないので、ちゃんと走るかどうかが最大のポイント。
買ってから、または最後にメンテしてから時間が開いた動力ユニットをぜひ詳しく調べてやってください。

さいごに

今回は、トミーテック「鉄道コレクション」の動力ユニットのメンテナンス方法を実演してきました!
本稿で主に扱ったのは「TM-23」(18m級C)など、ボギー台車の動力ユニットです。
ノス鉄などの2軸車用はまた今度にしましょう。

動力の全体的な構造は他社製動力とほとんど変わりません。
部品の清掃オイル・グリスの差し替えで、だいたいのギクシャク走行や異音は解消するはず。
ただし部品の位置が大きく異なるので、ウェイトやモーターを優先して動力台車は後で外すほうが良いのは他社動力と違うところでしょうか。

ちなみに、鉄コレは別売品の動力ユニットも多いので、動力だけ買い替えてパーツを新品に移植することもできます。
が、毎回それをやってたら出費がかさむし、鉄道模型のスキルアップも望めません。

だから、鉄コレ動力は(も)まず自分で治してみること。
できるできないじゃなくて、やってみるのが大事
それで万が一失敗しても代わりの動力が入手しやすい、そこが鉄コレのありがたいところです。

そして、それをやってみようと思った時のためにこういう記事があるのです。
安全と自己責任をお守りの上、説明書代わりにお役立ていただけたら嬉しいです。

今回はここまで!
ありがとうございました!