マイクロエースから2003年に発売された「国鉄151系 特急『こだま』」のメンテナンスを行っています。

すでに全部のトレーラー車のメンテナンスは終わっており、車輪・床板集電板をレールクリーナーで拭き、台車の集電パーツにグリスアップを行い、先頭車のライトユニットの金属パーツを集電しやすく位置調整をしました。

その結果、先頭車は前照灯・後部灯・ヘッドマークライトの光り方がわずかですが改善しました!
今回はいよいよ、マイクロエースのNゲージの動力車をメンテナンスします!

今日私が作業する車両はかなり前に発売されたものの、動力車の構造は他のマイクロエース製品とほとんど変わらないので、今回やるメンテナンス方法は他の製品にも応用できるはず。

トレーラー車以上にガチな内容になりますがぜひ最後までご覧ください!

※鉄道模型の独自の分解・清掃等は基本的に自己責任でお願いします



座席パーツを外すまで

マイクロエースの特急「こだま」(パーラーカーあり)基本セットは、東京方の2両目「モハ151-11」が動力車になっています。

マイクロエースの動力車の特徴として、断面ほぼ四角形なカバーで覆われ、床下機器のモールドは表面から見える程度に留められています。
151系は床下が黒いので分かりにくいとはいえ、見慣れた形のカバーであることは2003年から変わらないようです。

ささ、とりあえず車体を外しましょう。
トレーラー車よりも簡単に外せました。

座席パーツの枕カバー部分は白く塗り分けられています。
こういう細かい部分を丁寧に表現してくれることはマイクロエースの良いところですよね!

しかし今回はその座席パーツも外さねばなりません。
端から順にピンセットマイナスドライバーでずらして外しましょう。

ただし、マイクロエースの動力カバー(座席パーツ)は爪が硬いです。
折らないように少しずつこじって外してください。
また、連結器にボディマウントカプラーを使用している場合、必ず座席パーツ取り外しの前にカプラーを外しておきます。

なお、各パーツを外すときは必ず元々の向きに合わせて外したり、置いたりしましょう。
そのほうが後でパーツを組み直す時に分かりやすいので助かる。

座席パーツを外したところ。

座席パーツの裏側には集電板が貼られているので、動力台車から流れてきた電気集電板をつたい、下の画像で中央右寄りの集電金具を通じてモーターに流れることでモーターが回転する仕組みです。
メーカーによって細かな違いはあれど、大まかな構造は変わらないはず。

マイクロエース動力には、絶縁のため黒いビニールシート(上画像の右下)が仕込まれていましたが、経年劣化ために半分に切れてしまっていました。
残りの半分は座席パーツの裏側に貼り付けられています。
下手に折り曲げるとボロボロ崩れてしまうので、このままにしておきましょう。

このためか、最近のマイクロ製品では絶縁シートが透明プラスチックシートに替わっているそうです。

取れるものを順番に分解

そしたら次は台車を抜きとりましょう。
動力台車の上部、ウォームギアが組み込まれている部分が黒い三日月形のパーツで固定されていますね。

まずはこの三日月形のパーツを取ります。
ピンセットで簡単に取れますよ。

三日月形のパーツを外すと、その動力台車は特に力を入れずともポロっといっちゃいます。
逆に三日月形の押さえを付けたままではウォームギアは外れません

動力台車を外したら、次はそれを上下に分けます。
台車を斜めに押し下げ、さっきまで三日月形のパーツで留まっていた上半分と分解しましょう。

したら今度はギアボックスも分解。
動力台車の裏(地面側)から前後左右に爪で固定されています。
まず前後の爪を押し外し、その次に左右の爪を押し外すことで、ギアボックスも分解できますよ。
けっこう硬めに留まっているので、ピンセットマイナスドライバーで頑張りましょう。

ギアボックスのギアは5個。
中央のギアはピンで留まっていて、両端のギアは輪軸にくっついてます。
左右とも2個目のギアが取れやすいので、失くしたり、向きを間違えたりしないように注意!

近年のマイクロエース製品では、三日月形の押さえパーツは無くなっているかと思います。
その場合は、先にウォームギアから動力台車のギアボックスを外すことでウォームギアも外れるようになりますよ。

一方、動力台車の上半分には、らせん状の歯車、ウォームギアが仕込まれています。
モーターの回転に合わせて黒い棒(シャフト)が回り、一緒に回転しているウォームギアがギアボックスの歯車に回転を伝えることで車輪が回る仕組みです。

しかし…、画像でもうっすらテカっている通り、古い油(グリス)が固まってます

動力台車の全パーツを分解するとこうなります。
ウォームギアとそのカバーギアボックスのギアに古い油が固まってしまっており、これが動力不調の原因と思われます。
そりゃ走るわけがない。

なお、本来はモーターカバー(床下機器レリーフ)とモーターも分解できますが、カバーがやたら硬かったのと、モーターの性能をまだ見ることができていないので、今回はモーターの点検はパスします。

分解だけでだいぶ長くなりましたが、いよいよここからが本番!
パーツの清掃をしましょう!



車輪やギアを徹底清掃!

動力車・動力台車のパーツの清掃ということで、やることはただ一つ。

レールクリーナー(無水エタノールやパーツクリーナーもOK)綿棒ティッシュ・キムワイプ・ウェス・ショップタオルなどのいずれかを用意し、クリーナーを綿棒やティッシュ類に取ります。
そしたら、車輪の踏面、集電パーツの軸受け部分、全部のギア、ウォームギア、ギアボックスやウォームギアカバーといったありとあらゆるパーツから、できるだけ全ての古いグリスを取り除いてください。

とくに、粘性のあるグリスが劣化していたりすると、今回みたいにギアの動きを阻害する原因になりかねません。
私も片っ端からパーツを拭いてみたところ、古い油を取った綿棒やティッシュには黄色く汚れていました。

どうしても綿棒などが入りにくい部分があったら、古いグリスを除去できる最低限でも大丈夫。
メンテナンスしようとしてパーツを壊してしまったら本末転倒なのでね。

一通りパーツの清掃が終わったら、集電パーツの軸受け部分にはタミヤ接点グリスを差しておくと良いかも。

根気よく動力台車を組み直し

パーツ清掃ができたら動力台車を組み直します。
まずはギアボックスにギアを戻しましょう。

歯車の取り付ける向きは決まっています
床下機器側(シャフトがあるほう)を左側、車端部側(カプラーを取り付けるほう)を右側と見立てた時、ギアは全て上に寄ります。
中央のギアは中心に大きな歯車が来ますが、小さい歯車が大きい歯車の上に来るように考えてください。
正しく台車カバーを嵌め直した場合に、上に少しずれた四角い穴から歯車が見えればOK!

逆に、正しい向きで組まないとギアが噛み合わず、やり直しになるでしょう。

ギアと一緒に車輪と集電パーツも組み、台車レリーフをギアボックスの爪に嵌めれば固定完了!
これがとにかく難しく、台車レリーフを嵌めてる間に単体ギアが外れたり、車輪と台車レリーフの位置が合わなかったりと、正直言ってすっごい苦戦しました。
ちゃんと嵌まればギアボックスはひとまず組み終わるので、あきらめずにトライ

ギアボックスを組み直したら、次はその上にウォームギアとシャフト、そしてウォームギアカバーも嵌めましょう。
動力台車の組み直しができます!
ウォームギアの左右には黒いパーツが嵌まり、それによってカバーにギアを固定しつつシャフトとつながるので、黒いパーツを必ずウォームギアに取り付けてから組んでください。

片方の動力台車だけでも文字にしたらすごい長文になってしまいました。
もう片方も同じようにパーツ清掃と接点グリス差しをしましょう。

ギア潤滑に注油をしよう

モーターに台車を嵌め直す前にもう一工夫!
KATOから発売している「ユニクリーンオイル」をギアに流し込み、パーツへの注油をしましょう。

「ユニクリーンオイル」は透明でサラサラした潤滑油で、これを少量垂らすだけでパーツの潤滑化と保護ができるようになります。
箱の中にはボトルと一緒にノズルも入っているので、これを注油口に装着した上で、ギアボックスの裏の歯車が見えてる穴に1ヶ所1滴ずつ、ほんの少量だけ垂らしてください。

動力台車をモーターに組み直す前であれば、シャフトを手で回すことでギアが回転し、差したオイルが他のギアにもまわっていくんですよ。
組み終わった後に差す場合、レール上で走らせながら「ユニクリーンオイル」をなじませます。
だからオイルは少しだけでOKです。

「ユニクリーンオイル」の他にタミヤなどのグリスも役立ちますが、固めのグリスを差す場合はギアボックスを元に戻す前に各部に少量塗っておくことをおすすめします。

噛み合わせを意識してシャフトを戻す

動力台車の組み立てとギアへの注油・伝播ができたら、動力のメンテナンスは終盤!
シャフトをモーターに戻します。
モーターに差さっているシャフト受けに、まっすぐシャフトを差し込んでください。

シャフトとシャフト受けにも噛み合わせがあるため、適当にぶち込んでも奥まで入りません。
少しずつシャフトを回しながら、奥まできっちり噛み合う向きを慎重に探りましょう。

ちゃんと噛み合えば、シャフトは力を加えずともすんなり受けパーツに嵌まります。
シャフトが奥まではまったら三日月形の押さえで動力台車を固定。
それを両方行えば、台車のメンテナンスはおしまい!!



集電板も拭いたり磨いたりすべし

動力車を完全に元に戻す前に、座席パーツ裏の集電板にも手を加えましょう。
トレーラー車と異なり薄い銅板で集電しているようでした。

これもクリーナー綿棒でグリグリ拭いて、汚れを取り除きましょう。
面倒であれば、各部の集電パーツと接する部分のみでも良いかと思います。

あまりにも汚れ過ぎていたり錆びていたりする場合は、目の超細かい紙やすりで磨くのもやむを得ないでしょう。
ヤスリがけした後は必ず濡れ拭きで粉を取り除いてくださいね。

絶縁シートの切れた半分は、座席パーツを床板に嵌め直す前にモーターの集電金具に引っ掛けておきます。

その際に注意すべきことがあって、絶縁シートの欠片が絶対にコイルの回転部分に入り込まないようにしてください。
万が一絶縁シートの欠片がモーター内部に入り込むとそれが回転を邪魔し、モーターが止まります。

上手くいったかな?

台車の組み込みもOK、集電板のメンテナンスもOK、座席パーツを床板に嵌め直してカプラーも元に戻して車体をかぶせたら…。
動力車両のメンテナンスは完了!!

パーツを全て正しく組み直せていれば、レールに乗せて電気を送れば、メンテナンス前の不調が嘘みたいに動き出してくれるはずです。
マイクロエースの151系「こだま」に関しては、モーターが古いものだからか駆動時に発生する音が妙にやかましく、低速走行がよく利くわけでもありませんでしたが、メンテナンス前に比べて見違えるほどに復旧しました!

後日、近所のレンタルレイアウトにマイクロエース151系「こだま」を持って行きました。
お店の大型レイアウトで伸び伸びと走ってくれたので、私がやったことはちゃんと上手くいっていたことがわかり、ひとり大いに感動しましたよ。

さいごに

今回は、マイクロエースのNゲージ鉄道模型「国鉄151系 特急『こだま』」の動力車をガチ目にメンテナンスしました。

カバーになっている座席パーツを外した後、中のギアが全部出て来るまで動力台車を分解。
パーツの汚れと古い油を取り除き、グリスアップと潤滑油の注油を行って組み直せば、今まで不調気味だった車両がよみがえります!

分解と再組み立ては慣れないとしんどいかもしれません。
実際私も初めてやってみたけどギアボックスの組み上げがかなり大変でした。

でも、自力で動力台車のメンテナンスをできるようになれば、動かなくなった車両を自らの手で復活させるスキルが身に付き、より鉄道模型に愛着を持って楽しめるようになります。
この「こだま」は東海道新幹線開業前の大スター的な列車で、本来私めが持つようなものではありませんが、いただきものとして受け取ったことがきっかけで私自身の手で復旧させることができ、本当に嬉しい限りです。

マイクロエース以外のメーカーでは動力車の構造が多少異なるかと思いますが、電気の流れと動力伝達の基本構造は変わらないはずなので、ご自身の車両に置き換えて、本記事を参考になさってくだされば。

長くなったけど今回はここまで!
閲覧ありがとうございました!