2022(令和4)年11月、KATOよりNゲージ鉄道模型「58654+50系『SL人吉』」が発売されました!

日本最古のSLとして多くのファンに愛されているSL列車、過去に「SLあそBOY」時代の仕様をマイクロエースが発売したことはあるものの、「SL人吉」はどのメーカーも模型化していなかったんですよ。
しかし、KATOがついに実現!
58654号機単品50系客車のセットDE10形九州仕様(再販)だけでなく、58654号機・50系客車が特別なパッケージに封入された特別企画品も発売しました。

私は珍しく奮発して特別企画品を入手しました!
車両を観察しながら、付属パーツへの交換・取り付けについて解説するのですが、長くなるのでSL・客車・ディーゼル機関車で分けます。

今回は、「SL人吉」を牽引する蒸気機関車・8620形58654号機を解説します。



日本最古のSLを特別なケースに

「58654号機+50系客車『SL人吉』」(特別企画品)の車両は、通常のダークグリーンのケースとは異なり、黒のケースに収められています。

これを開けると入っているのは、車両4両、付属パーツ、説明書、特製パンフレット、そして特製リレーラー。
実は空きスペースにDE10形が2両入るので、持っていればここに移し替えることもできます。

「SL人吉」は、鹿児島本線熊本駅から肥薩線人吉駅までを結ぶ、JR九州の誇るD&S列車(観光列車)の一角。
蒸気機関車・8620形58654号機と、専用客車・50系700番台を使用。
肥薩線開通100周年を迎えた2009(平成21)年より運行し、好評を博しています。

しかし、2020(令和2)年7月に発生した豪雨災害にともない、肥薩線八代~吉松間は2023年1月現在も不通
それを受け「SL人吉」は2021年5月より、鹿児島本線鳥栖~熊本間特別運行を行っています。
2022年11月18日には、八代駅にて58654号機の100歳記念イベントも開催され、58654機も久々に八代駅に乗り入れました!

が、同機の老朽化や技術者不足などにともない、2023年度を最後に運行を終了することに。
乗車・撮影はお早めに、安全とマナーを守って悔いの無いように楽しみ尽くしましょう。

画像:写真AC

8620形(ハチロク)は1914(大正3)年より製造された、旅客牽引用テンダー(炭水車)式蒸気機関車
旅客用の蒸気機関車としては国産初で、総数732両が製造されました。
58654号機は、1922(大正11)年に製造された個体です。

登場当初の58654号機は、浦上機関区を皮切りに九州各線を転々とし、最終的には国鉄(現・くま川鉄道)湯前線で活躍した後、1975(昭和50)年に火を降ろしました。

廃車後の58654号機は人吉市SL保存館にて静態保存されていましたが、九州鉄道開業100周年記念企画として蒸気機関車の復活に抜擢され、1988(昭和63)年、「SLあそBOY」牽引機として復活
「SLあそBOY」時代に一度引退しましたが、2009年に「SL人吉」として再復活を遂げて現在に至っています。

ちなみに、ノベルゲーム『まいてつ -pure station-』にもストーリーの根幹を担う車両として登場しています(作中の車番は「8620」)。

取り出すなら台紙ごと

58654号機のNゲージは非常に精密なので、ケースから取り出す際、一般車両よりも慎重に行わないといけません。
まずはフラップを引き上げ、台紙ごとケースから取り出してください。

58654号機を収めているウレタンには切り込みがついており、広げることができます。
デフレクター(除煙板)の間にウレタンが挟まっているので、これを開きながら外し、機関車とテンダーを同時に持ってウレタンから取り出しましょう。

この車両、細かいパーツが多い上に華奢です。
後で解説しますが機関車とテンダーはドローバーで繋がっている(メンテナンス時に解結可能)ので、両方を一緒に持って取り扱ってください。

無理に力をかけると破損する可能性があるので、それは絶対に避けなければなりません。

精巧・重厚かつ華やかな外観

58654号機の前面から見てみましょう。
金色の文字で刻印された「58654」のナンバーがまぶしい!
前面の連結器はダミーカプラーとなっています。

デフレクターは「門鉄デフ(門デフ)」で、下半分がくり抜かれたような形をしています。
この抜け感こそ九州SLの特徴だと、個人的には思ってるところです!

また、58654号機先頭部の握り棒は左右とも白色になっています。
漆黒のボディが特徴的な蒸気機関車において意外と目を引きそうですよね。

続いて側面。
機関車各部の装飾や、キャブ下部の検査表記類がきめ細かく再現されています。
機関車自体が黒いボディなのもあって非常に目を惹きます。

動輪のロッドは銀色赤色で華やかに。
車輪にはスポークの抜けた車輪が使用されていて、実感的な外観になってます。

キャブの屋根上周辺も精細に再現。
配管類やらハシゴやらでごちゃごちゃしているのは、模型的に非常に楽しいです。
安全弁と汽笛も金色で、見た目のアクセントになってますね。

テンダーはこんな感じ。
まさかの3軸台車だと今更知りました。

テンダー後部です。
こちらにもライトが付いていますが、製品仕様上点灯しません

後部に取り付けられているハシゴは、実はカプラーホルダーとなっており、外せます。
テンダー後部のカプラーを交換する際に触るので、それはまた後で。

ざっと見ただけでも、各部の塗装、パーツ、スポークの抜けた動輪など、実車の魅力がNスケールに落とし込まれており、語彙力を失うくらいには感動しています。

お恥ずかしながら一度も「SL人吉」の実車に乗れていないので「せめて模型だけでも!」と思いきって特別企画品を予約しましたが、その判断は大正解でした。



SL前面にヘッドマークを!

ここからは、58654号機のパーツ交換手順を詳しく解説します。
まずはヘッドマーク

製品の付属パーツとしてSL人吉」ヘッドマークが用意されています。
ヘッドマークの無いステーも一緒のランナーに付いてますよ。

もちろん私はヘッドマークを付ける!
ヘッドマーク自身を切らないようにゲートから切り出し、ゲート痕も取り除いてください。

上から見ると、車体の先頭部に取り付け穴があることが分かります。

ヘッドマークを折らないように注意しながら、ピンセット等で穴に差し込んでください。
ヘッドマークの無いステーも同様に。

パーツはキツすぎず緩くもない、ちょうど良い硬さでフィットします。
これを取り付けるだけでカッコよさが大幅アップ

付属パーツには機関車前面の重連用カプラーもありますが、「SL人吉」として走行させる場合、重連用カプラーに交換する必要はないと思われます。
58654号機を他の機関車の後ろに連結させる場合に必要になるので、その際は製品付属の説明書をご参照ください。

テンダーのカプラー交換

次はテンダー後部(客車と連結する側)のカプラーを交換します。
購入時点ではアーノルドカプラーが取り付けられています。

しかし、これで客車と連結すると間隔が広く空きすぎ、正直不格好です。

58654号機にはテンダー後部用のナックルカプラーも付属しているので、是が非でも交換したい!
手順が難しいかもしれないので詳細に解説したいと思います。

先に、機関車とテンダーを解結させておく作業が楽になりますよ。
両者は床下のドローバーで留まっているので、引き抜けば外れます。

そんなに堅く留まっていないので、無理な力は入れずに外しましょう。

カプラーホルダーは床下の爪で留まっているので、これをマイナスドライバーなどで押し出します。
カプラー側の輪軸中央付近にドライバーを当てましょう。

なお、ホルダーごと吹っ飛んでしまわないように、ハシゴを抑えながら爪を外してください。

外れたカプラーホルダーはこんな形。
カプラー本体はスプリングで支持されています。
床下の爪だけでなく、ハシゴ上部の引っかけや配管の途中の差し込みもあるので、先にハシゴ上部をテンダーから外しておくと良いでしょう。

触った感じ、カプラーホルダーは柔らかいプラスチックだと思いますが、それでも丁寧な作業を心掛けましょう。

では、製品付属のナックルカプラーを用意してください。
連結器の反対側にある突起スプリングを嵌め込み、カプラーを支えます。

アーノルドカプラーを外し、かわりにナックルカプラーを装着!
カプラーの突起にスプリングが被っていれば成功です。

ちなみに、スプリングはカプラーホルダー以上に失くしやすく、簡単に吹っ飛んでしまいがちです。
失くしてしまった場合や、それが心配な場合は、機関車用のカプラースプリング(品番:Z01-0042)を用意しておくと良いでしょう。

無事ナックルカプラーへの交換ができたら、カプラーホルダーをテンダーに戻します。
床下に爪をはめ込み、ハシゴをテンダー上部に引っ掛け、配管の途中にある突起を差し込み穴に差してください。

最後に機関車と繋ぐドローバーを嵌めなおせば、作業完了です!

正しくナックルカプラーを取り付けられれば、このようになっているはずです。

客車の連結器もナックルカプラーに換装した上で、両者を連結させるとこんな感じ。
連結間隔の違いは一目瞭然ですね。

これよりも実車並みの連結間隔に近づけたい場合は、別売のナックルカプラーもお試しください。
その場合は通過可能な曲線半径に制限が出るかもしれないのでご注意願います。



重厚かつ華やかな動作に感動

50系客車の加工も終わらせたので、早速試走台で試運転しましょう!
客車は全部は繋げられないので、1号車(オハフ50-701)のみ連結しています。

最高だ…!!!

パワーパックのダイヤルを回すと動き始めるロッドの動き
それに合わせて回転する動輪
ロッドの銀色赤色が技巧的な動作を美しく飾り、単純な往復運動を引き立たせています。

もちろん、ロッドと動輪の動きは他の蒸気機関車でも見られますが、58654号機は金・銀・赤・白のアクセントが調和し、他車よりワンランク上の特別感を演出しているような気さえしました。

動力とライトの調子は

肝心の動力性能ですが、起動電圧が低くヘッドライトが点灯する前にSLが発進します。
SLのヘッドライトを常点灯で光らせておくのは難しいかもしれません。

その分動力性能は非常に良好で、静かで、低速が利きます。
実車さながら、ゆっくり速度を上げていくあのロマンをNゲージサイズで!
サウンドボックスがあると臨場感が一層上がるのではないでしょうか!

さすがにレールの手入れをしないと走るものも走らないと思うので、Nゲージの運転前後、特に久しぶりに走らせる時にはレールの手入れを必ず行っておきましょう。

テンダー・客車のナックルカプラーの効果も十分に出ています。
両者の間に一瞬だけ見えるジャンパ栓(オハフ50側)が、刺さる人の好みに刺さる。

走行中は目で追えないかもしれませんが、停車中のアクセントとしてぜひ。

見て楽しいし、走らせても楽しい。
九州の大人気SL列車がNゲージで登場すると聞いて、予算の確保ができた段階で予約し無事入手できましたが、これは本当に本当に買って良かったです。

時間を作れたら、シーナリーの充実しているレンタルレイアウトにも持って行ってみようと思います。

なお、客車の後ろにDE10形ディーゼル機関車を連結させる場合、DE10形の動力台車を非トラクション化させると良いでしょう。
当該リンクは末尾にあります。

さいごに

今回は、昨年11月にKATOが発売したNゲージ鉄道模型「58654+50系700番台『SL人吉』」(特別企画品)の中から、蒸気機関車・8620形58654号機を観察し、パーツ交換の解説も行いました。

機関車の装飾を細かいところまで的確に再現。
白色の握り棒や、銀色・赤色のロッドの塗り分けも美しく、ひとたび走り出せば、精巧かつ重厚で技巧的な動きから感じる迫力は素晴らしいもの!
付属パーツを使ってヘッドマークの掲出や、ナックルカプラーへの交換もやってみてはいかがでしょうか。

繰り返しですが、値段以上のクオリティだと見受けて一人勝手に感動しています。
なんなら日本のNゲージ業界に名を残すほどの車両にもなり得るのではないでしょうか。
鉄道模型を通して、私も「SL人吉」を応援しています。

今回はここまで!
ありがとうございました!

ちなみに、肥薩線不通区間のうち、八代~葉木間および一勝地~人吉間ではタクシーによる代行輸送が行われているとのこと。
詳しくはJR九州公式ホームページ等もご参照ください。
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