先日、KATOの20系客車(旧製品)をメンテナンスしました。
旧製品独特の分解方法に慣れた後、車輪・カプラー交換や幌取り付けとステッカー貼り替えをしました。

20系客車のヘッドマークを「出雲」にしたので、それにあわせるべく、ディーゼル機関車DD54形も一緒にメンテナンスします。
実は、TOMIX1985(昭和60)年にDD54形を発売していたんですよ!
今回はTOMIXのDD54形の動力ユニットを分解し、点検・清掃ギアボックスへのオイル差しを行います。

もしかするとDD54形以外にも動力構造が同じな機関車がいるかもしれないので、その参考になれば幸いです!
なお、動力ユニットの自力での分解は自己責任でお願いします。
非常に長くなったので、必要であれば目次から各項に移動願います。

※ガチな中古品のため、前のオーナーの手が入っています
※本来のブルートレイン牽引機とは形態が異なるのでご容赦ください



悲運の欧風ディーゼル機関車

とりあえずパッケージから見てみましょう。
年季が入っているのでケースや台紙に使用感がありますがご容赦ください。

これを開けると入っているのは、車両本体、ナンバープレート、メーカーズプレート(三菱重工業)。
すでにナンバーとメーカーズプレートは装着済みでした。

スチロールをどかすと見える台紙内側に説明書きがあります。
交換用パーツは台紙の裏側をご覧ください。

実車のDD54形は1966(昭和41)年、日本の三菱重工業が、西ドイツ(当時)のマイバッハ社・メキドロ社からライセンス供与を受けて製造した亜幹線向けディーゼル機関車
ヨーロッパ型の大出力エンジン(マイバッハ社より)と液体変速機(メキドロ社より)を搭載し、このエンジン1機だけで他の国産ディーゼル機関車に匹敵する超パワーを有しています。

福知山機関区・米子機関区に配置され、山陰地方で客車・貨物の牽引を行っていました。
末期は福知山機関区に集結したそうな。

東京~浜田間で運行していた当時の寝台特急「出雲」の牽引も、京都駅からDD54形が担当していました。
当時の「出雲」は京都駅から山陰本線に入ったため、同機が堂々たる長編成を引き連れ、かの余部鉄橋を渡ったことも想像に難くないでしょう。

画像:写真AC

しかし、そもそも設計ミスがあったことに加え、エンジン故障などトラブルが頻発

  • 契約の関係上、修理にいちいち本国の指示を仰がねばならない
  • なのに仲介人(三菱商事)の対応が悪い
  • 肝心の本国からの回答も遅い

と見事なまでの悪循環により、国鉄からのDD54形への信頼は完全に失墜

悲しきかな全車両が1978(昭和53)年までに引退・廃車となりました。
ブルートレイン牽引機の33号機が、現在も京都鉄道博物館にて静態保存されています。

模型的には、KATO初期形・中期形・ブルトレ牽引機を細かく作り分けて各種製品化していました。
一応、マイクロエースからも発売実績があります。

しかしながら、大手メーカーの中でDD54形をいち早く製品化したのは、実はTOMIXだったんですよ。
それも1985年という、私が生まれてすらいない時代のことです。
今は無きエーダイナイン(永大)はタイプモデルのみの発売でした。

TOMIXは中期形

実際の模型も詳しく見てみましょう。

DD54形は、国鉄ディーゼル機関車にしては珍しい箱型の車体が特徴的。
「く」の字状に突き出た前面が厳ついです。

TOMIXが当時模型化したのは、KATO製品でいうところの中期形です。
前面窓がステンレス窓枠による支持で、前照灯は前面下部側面ルーバー形状屋根上ファンの位置などに違いがあります。
本来はライトの両脇に白い手すり、車体とスカートの境目あたりに解放テコもあるのですが、約40年前だからか省略されています。
自力で真鍮線を曲げ、塗装して取り付けても良いでしょう。

いろいろ調べたところ、エンジンのルーバーが集中している側が1エンドだそうです。
メーカー出荷時はアーノルドカプラーが取り付けられていたはずですが、元々の持ち主のほうで台車マウントのKATOカプラーに換装されていました。

そして、窓がある側が2エンドだとのこと。
こちらはマイクロトレインズのマグネマティックカプラーに交換されています。

また、1・2エンドとも屋根上の信号炎管・ホイッスルモールド表現でした。
もっとこだわれば別パーツに交換できそうです。

側面も見てみましょう。
DD54形のもう一つの特徴ともいえる1軸の中間台車が見られます。

台車はDE10形と同じ「DT131E」ですが、前後の台車だけでは凄まじい軸重がかかるため、軸重を軽減するために中央に1軸の中間台車が設けられました。
そのため、「B-1-B」という特殊な台車構造になっています。
中間台車は駆動しません。

乗務員扉の手すりと側面の窓枠には白い色差しが入っていました。
3箇所の溶接位置はモールド表現です。

メンテナンスをする前に一度試走台で通電させてみました。
まさかのこのままでも走った

少々引っかかりがあったとはいえ、走行はおおむね良好です。
旧製品らしい「ジーーーー」と音を発して動いてくれました。
現代Nゲージに比べれば音は大きいですが、ディーゼル機関車ですしこのくらいはむしろアリでしょう。

モーターがまだ生きていると分かったので、台車の汚れを取り除いたり、接点を清掃したりすればさらなる調子の回復が見込めます。

KATO・マイクロエースの後発製品に比べれば造形はあっさりですが、ちゃんと整備すれば今でも通用するはず!
そのためにも、動力ユニットを分解していろいろ点検していきましょう!



動力ユニット本体の分解

そしたらまずは車体を取り外します。
車体下部を少し広げて動力ユニットとの噛み合わせを外してください。

金属のダイキャストが出て来て、その前後にスカートとライトユニットが取り付けられています。
モーターはダイキャストの中です。

車体とダイキャストですが、車体内側にある3連続の丸い突起がダイキャストのくぼみに嵌まることで固定されています。
3連突起は左右とも2箇所にあるので、両者の位置関係を把握しましょう。

ちなみに、前面の内側にはヘッドライトプリズム黒の遮光版もセットされています。
どちらも割と外れやすいので失くさないようにしましょう。

動力ユニットを分解するには、先にスカートとライトユニットを外します。

まずはスカート。
ちょうど良い硬さで留まっているので、引き抜いて外します。

ライトユニットは、車体中央寄りのスキマにマイナスドライバーを差し込み押し出してください。
ヘッドライトしか点灯しないので構造は単純です。

できるなら、これをLEDに交換すれば低電力・低熱量強力な光を放ってくれますが、今回はパスで。

このタイミングで動力台車を外しておきます。
台車の根本付近を持って、斜めに引き下げ外してください。
持つところが悪いとギアボックスだけが分解するので、必ず台車全体をダイキャストから外しましょう。

中間台車は駆動しないので、ここでは触れません。

この車両、集電もダイキャスト集電です。
線路から車輪に伝わった電気が、集電シューのスプリングからダイキャストに流れ、モーターの駆動とヘッドライト点灯を促すしくみになっています。

台車のメンテナンスは後ほど解説します。

動力ユニット本体の分解を続けましょう。

側面の中央付近を見てください。
床下パーツから左右2箇所ずつ、太いT字状の爪がダイキャストに噛み合っています。

このT字の爪をマイナスドライバーでこじり、全て外します。

T字の爪の太さで取り付ける向きが決まっているので、正しい向きを把握しておきましょう。

ちなみに、ダイキャストで隠れていた部分に床下機器を固定していると思われる爪もあります。
これを外せば中間台車も外れるようになりますが、中間台車はこのままでも清掃できるので、ここの分解は行いません。

最後に、ダイキャストを中央の割れ目に沿って左右に分解しましょう。
ウォームギアカバーの突起が外れ、モーターが出てきました!

モーターの回転を動力台車のギアに伝えるウォームギア。
TOMIXのDD54形は、まさかのスプリングウォームでした!

TOMIXの旧式の動力にスプリングウォームはよく見られます。
すぐ思いつくものだと、箱根登山鉄道1000形もスプリングウォーム駆動だった気がする…。

ゴミ・グリス汚れ除去&接点清掃

さて、それでは清掃やりますか!

レールクリーナーまたは無水エタノール、そして綿棒・ティッシュ・キムワイプなど用意しましょう。
綿棒にレールクリーナーを浸み込ませ、スプリングウォームに絡まった埃・糸くずや古いグリス全て除去してください。

といっても、今回のグリスは大して悪さしてなかったので、盛られ過ぎてるところを拭って終わりにします。

動力台車の集電スプリングはダイキャストの上部に接しています。
その部分もレールクリーナー綿棒で拭いておきましょう。
以下の写真だと、丸いくぼみ(台車取り付け部)の奥が集電スプリング接地部になります。

清掃できたら、スプリングウォームにカバーを取り付け、ダイキャストの最も外側の穴に突起を差し込みましょう。
片方のダイキャストにカバーが嵌まったら、もう片方のダイキャストもそのまま組めます。

ライトユニットの基盤に関しても、左右の導電部分をレールクリーナー綿棒で拭きましょう。

そしたら基盤を下にして、ダイキャスト上部の取り付け位置に、奥までスライドさせて取り付けてください。
この時、電球が付いている側が外側になります。

これでひとまず動力ユニット本体のメンテナンスは完了です!



動力台車の分解方法

続いて動力台車のメンテナンスもやります。
バラした部品を戻せなくなると困るので、1つずつやって行きましょう。

動力ユニット本体から外した直後の動力台車はこうなっています。
本来はアーノルドカプラーのはずですが、この台車にはマグネマティックカプラーが付いており、1.0mm径のビスで下から固定されています。

まず最初に外すべきはスノープロウ!
カプラーポケットに2箇所の爪で留まっているので、マイナスドライバーなどでずらして外しましょう。

スノープロウを外したその次に、カプラーを外します。
本来、ギアボックスを分解すればアーノルドカプラーも外れると思いますが、今回はビスが貫通しているため、先にビスとカプラーを外さねばなりません。

台車の裏側から、細いマイナスドライバーを回してビスを外します。
パーツ清掃後にマグネマティックカプラーを組み込むなら、特にスプリングを失くさないようにしてください。

私は分解後、カプラースプリングを飛ばしてしまい、代用もできないので別のカプラーに替えました。
詳細は後ほど。

カプラーを外した後は、台車の前後左右に計4箇所ある爪を、マイナスドライバーで外してください。
前後の爪には上から、左右の爪には下からドライバーを通しましょう。

これでギアボックスが分解できます。

動力台車を(ほぼ)分解しきると以下の通り。

構造は他のTOMIX製品とあまり変わらないものの、集電シューが車輪の内側(フランジの後ろ)に接しています。
カプラーポケットには、カプラー本体に加え、高さをかさ上げする用のプラ板も入ってました。

徹底清掃および消耗品交換

したら動力ユニット本体と同じように、レールクリーナーまたは無水エタノールと、綿棒・ティッシュ・キムワイプ等を使い、ありとあらゆる汚れを取り除いていきます。

車輪は、踏面に残っている汚れを除去すればOK!
中間台車もちゃんと手入れしておきましょう。

しかし…、車輪のゴムが溶けていたのか、綿棒で拭いている最中に切れてしまいました。

急遽、台紙裏に指定されている「車輪ゴム(Φ6.2mm・10個入)」(品番:JG01)を買ってきて、新しいゴムを車輪に装着させました。

ギアボックス内に残っている大型のギアは、金属ピンで固定されています。
ピンを爪楊枝で押し出せばこのギアも外れますが、今回は付けたままにしてます。

他のギアも全て、古いグリスやゴミが絡まってないかしっかり見て、掃除していきましょう。

写真を撮り忘れましたが、集電シューにも汚れがありました。
車輪の軸と接する薄い面(スプリングの反対側)を綿棒で拭ったら、綿棒が直線的に黒く染まったほど。
集電シューの拭き掃除もお忘れなきよう。

動力台車の組立とカプラー

全パーツの点検・清掃ができたら、集電シュー、ギア、ギア車輪を組んでいきます。

ギアには向きがあります!
カプラーポケットを左側にした時、ギアが上(奥)側に位置するように組み立ててください。
組めたら台車兼ギアボックスカバーを装着しますが、その際も下に空いた四角形の穴からギアが見えるように装着しましょう。

今回最大の問題はカプラーですかね…。
メンテ前にあったマグネマティックカプラーが、スプリングを飛ばしてしまい、代用品もないので使えなくなってしまいました。
ビスも再利用するつもりでしたが、カプラーポケットの一部に亀裂が入ったため、これも諦めることに…。

そこで、KATOの機関車用ナックルカプラープラ板でかさ上げし、1.0mm径の丸プラ棒を少し削ってビス穴に差し込み固定しました。
補強のため、カプラーポケットの外側から丸プラ棒をゴム系接着剤でコーティングしています。

板バネが無いのでナックルカプラーはほぼダミーカプラーとなってしまいましたが、元々のビス穴を有効活用できました。

もう片方の動力台車も同じようにメンテナンスします。

こちらには「KATOカプラーN」が使用され、0.3mm径の真鍮線で固定されていたものの、カプラーが少々下向きにズレていました。
清掃後、新しい「KATOカプラーN」に垂直に穴を開けかさ上げ用プラ板と共に元に戻しました。

動力台車を2個とも清掃できたら、動力ユニットに戻す前に「ユニクリーンオイル」を差しておきましょう。
ギアボックス下部の穴1つにつき1滴、オイルを少量滴下し、車輪を回して馴染ませてください。
これでギアパーツの潤滑と保護に繋がります。

なお、これより硬めのグリス(タミヤなど)を使用する場合は、カバーを閉じる前にグリスをギアに塗っておいてください。

矢印に注意し再組立

各パーツの点検・清掃が終わったらいよいよ再組み立て!

モーターとライトユニットを正しく取り付けたダイキャストを床板に装着させます。
T字の爪の太さダイキャストの爪受けを合わせてください。

したら動力台車を嵌め込み、車体を取り付けましょう。
動力台車の集電スプリング先端には、少量の接点グリスを差しておくとなお効果的です。

写真では分かりにくいですが、車体内側にもダイキャストにも矢印が刻印されています。
矢印の向きを合わせ、ダイキャストの爪受けに3連突起を嵌め込んでください。

この時、遮光板とライトプリズムがズレていないか念のため見ておきしょう。
ズレると車体が正しく入りません。

お疲れ様です!
これにてDD54形の動力ユニット、修理完了です!



HMがほしくなったら

ここからは「なんちゃって仕様」を目指したおまけです。
20系客車、ひいては寝台特急を牽引させるってのなら、ヘッドマークがほしくなりませんか?

そこで、モリヤスタジオのヘッドマークを買ってきました。
ステッカーと真鍮タイプの2種類がありますが、今回は真鍮タイプを選びました。

今回購入したもの以外にも、同社からは主に国鉄形機関車・気動車・電車用ヘッドマークが多数販売されています。
セット付属のステッカーを失くした場合の代替手段になるかもしれません。

この中から「出雲」を選び、2エンド側前面にゴム系接着剤で取り付け!
調べたところ、東京発浜田行きの下り「出雲」では2エンド側が先頭に立ってる写真が多く見られました。

それゆえ、ナックルカプラー(ほぼダミー)も2エンド側に取り付け、1エンド側で客車と連結するようにしてあります。

ちなみにサムネイルの時点で分かる人にはわかると思いますが、正確には中期形のDD54形はブルートレイン牽引機ではありません
ブルトレ牽引機のDD54形は前面窓がHゴム支持に変わり、客車用のジャンパ栓がスカートに追加されています。

「だったらそれを買えよ!」と怒られてしまいそうですが、私の持ってる個体がこれしかなく、ミニカーブを通行できない車両は基本的にあまり集めないので、開き直って「なんちゃって仕様」と見立てることにします。

重厚な走りが好調に復活

最後に、試走台でもう一度試運転をしてみましょう。

復活!!!

スプリングウォーム駆動の重厚な走りと現代Nゲージではかえって聴けないモーター音が、実車の力強さまで模型に落とし込んだかのような迫力を見せてくれます!
今回電球は交換していないので、残念ながらライトは暗いまま。
しかし、まず動力を復活させられたことが重要!

「なんちゃって仕様」とはいえ「出雲」牽引用に整備しましたもの、20系客車も繋げてみましょう。
スペースの関係上1両のみ連結してます。

本当に大迫力
実車と若干違うけど治せてよかった

TOMIXのDD54形、KATO旧製品の20系客車ともたぶん私が生まれる前の製品ですが、動力・足回りを整備して令和の現代でも無事走行できました。
実際問題、自力での修理は自己責任もあって不安なもの。
それでも挑んでみて、古い車両がよみがえった時の感動は極上です。

機関車・客車間は「KATOカプラーN」による連結ですが、これも大成功です。
カプラーに垂直に穴を開けることができていたため、かさ上げ用のプラ板と合わせて、両方のカプラーがほぼ同じ高さに合いました。

カプラー問題は今回最も心配でしたが、無事に解決できました。
今後、この「なんちゃって出雲」編成もレンタルレイアウトに持って行って満喫しようと思います。

さいごに

今回は、TOMIXが1985年に発売していた旧製品、DD54形の動力ユニットのメンテナンスと、KATOカプラーへの対応を行いました。
これを修理した後、さっそく近所のレンタルレイアウトで走らせてきました。
本当に大満足!

動力台車の内部は現行品とあまり変わらなかったので、いつものやり方で分解・清掃しましょう。
ダイキャスト集電・スプリングウォーム駆動をふまえ、電気的な接点動力伝達部分も意識できればなお良いですね。
清掃後のユニクリーンオイルまたはグリスと、(可能なら)接点グリスもお忘れなく!

もしかしたらこのDD54形のように、車内にダイキャストが鎮座しているモーター車が他にもあるかもしれません。
お手持ちのNゲージと照合の上、参考にしていただければ幸いです。

長くなったけどここまでです!
ありがとうございました!