鉄道模型メーカーから多数製品化されている鉄道模型は、もはや当たり前のようにライトが点灯します。
前進時はヘッドライト、後進時はテールライト、さらに種別・行き先・愛称表示や、特殊なギミックにも光が灯りますよね。

しかし、トミーテックから発売されている「鉄道コレクション」シリーズは、そもそもの仕様でライトが非搭載です。
そのかわり、「Nゲージサイズの安価なディスプレイモデル」として、比較的購入しやすい価格で、他社が模型化していない車両を輩出してきました。
それは分かってるつもりですが、長年やっているとやっぱりライトがほしい!

そこで、「鉄道コレクション」に自作ライトユニットを組み込み、自力で点灯化させるために、今回は透けてしまう車体をアクリルガッシュで遮光できるか試してみます。

というか先に結論言っちゃうと、アクリルガッシュで鉄コレを遮光できました。
よろしければ続きをご覧くださいまし!

※本稿と同じ作業をする場合は必ず自己責任でお願いします



そもそもはディスプレイモデル

トミーテック「鉄道コレクション」シリーズは、定義上はディスプレイモデルです。
購入直後はパンタグラフと車輪がプラスチック製のため、そのままでは動かすのに向きません。
しかし車輪を金属製の別売品に交換でき、編成中のどれか1両に動力ユニットを搭載すれば、Nゲージ鉄道模型の一つとして線路上を走れるようになります。

冒頭で述べた通り、それでもなおライトはありません
「鉄道コレクション」シリーズの車両に光のギミックを入れたいなら、自力で加工しないといけないのです。

その大きな助けとなるライト点灯化キットが、サードパーティーのイズムワークスから多数展開されています。
加工が必須とはいえ、比較的お手軽に鉄コレを点灯化させることができるでしょう。

ですが、同者の点灯化キットはだいたい3,300~3,900円と、一昔前の鉄コレ1編成分の価格です。
これから私がやる作業の手間を思えばこの価格には納得ですが、やはり簡単には手を出せない人もいるのではないでしょうか。
しかも、イズムワークスの点灯化キットが非対応な車両もあります。

今回加工を行う車両もまさしくその通り。
京阪電車大津線350型です。

前にガンダムマーカーでドアゴム(戸当たりゴム)に色を付けた時に出演してもらいましたね。
実車の概略はそちらの記事をご覧ください。

350型には残念ながら、専用の点灯化キットがありません
だからこそ、イズムワークスに頼らずに自力でライトを点灯させなくてはなりません。

鉄コレ車体に遮光は必須

とりあえず、実際に車体を見ながら策を考えましょう。
実車がだいぶ昔の車両で、今回は初なので、ヘッドライトだけ点灯させれば十分です。

350型のヘッドライトは前面上部に搭載されているため、自作ライトユニットも天井にセットできれば良いんじゃないでしょうか。

そういうわけでさっそくユニバーサル基板を切り出して電子部品をはんだ付けして…とやる前に、「鉄道コレクション」を点灯化させるならほぼ必須の作業を優先します。
車内の遮光処理です。

「鉄道コレクション」車体は、見た目はそうでもなさそうですがプラ素材としては薄い(らしい)ため、光が透過してしまいます。
光の透過を防ぐには、黒色の塗料で遮光処理を行わなければなりません。

遮光処理を何もしないで、鉄コレの車内にLEDを当てるとこうなります。

照明の下ではそんなでもないですが、部屋を暗くするとどうでしょうか?

ガッツリ透けます
これでは車体そのものが光を発しているように見えてしまい、リアルではありません。
例えるならホタルイカのよう。
これを防ぐために、車体のプラスチックに黒の塗料を塗って光を遮るようにしていきます。



車体と屋根とを分解

他の人のブログやYouTube動画を見た限りでは、いろいろな塗料が使われているようです。
私は今回、アクリルガッシュを使ってみようと思います。
ジオラマ制作で情景への色付けに重宝しますが、鉄コレの遮光にも有用ならば、今後もこちらを使いたいところ。

長くなりましたが、実際に作業していきましょう。
車体を床板から外した後、先に屋根を外します。

細長い突起が車体の天井部分に差さって固定されているので、下から細いマイナスドライバーやピンセットで押して取り外します。
車両によってはネジ留めも加わるので、ネジも外してください。

350型のヘッドライトは、別パーツで屋根の前後に取り付けられています。
これは、レンズを下から上に押せば外れます。

ライトケースもそんなに堅くないのですんなり外してしまいましょう。

そして、車体の本体とガラスパーツも全て外します。
ガラスの外し方は車両によりきりですが、だいたい側面ガラスを外した後に前面ガラスが取れると思われます。

京阪350型の場合、前面ガラスの左右2箇所に丸いポッチがついていて、これで前面ガラスと固定し合っていました。
慎重にその2箇所を外し、ガラスの内側に力を入れながらピンセットなどで端から順に押し下げてください。

ちなみに、初期の鉄コレに多いのですが、車体と屋根が一体成形の車両もあります。
その場合は屋根の取り外しは考えないで大丈夫。
強いて言うなら、パンタグラフなど、取り外せるパーツを外しておくと良いでしょう。

塗ってけ!アクリルガッシュ

車体、屋根、ライトまわりと分解できたところでようやく本番!
ここからアクリルガッシュを使っていきます。
鉄コレを遮光すべく用意したのは、アクリルガッシュ(ターナー)のジェットブラック
他メーカーの場合でも黒系統を選ぶと良いでしょう。

これを少量開けて、絵具1に対して水0.5程度でうすめてください。
今回は精製水で希釈します。

アクリルガッシュは水性アクリル用うすめ液でも希釈できますが、水のほうが安全です。
今回筆塗りですので、薄過ぎなければ精製水で大丈夫じゃないかな。

ほどほどの濃さに伸ばした黒のアクリルガッシュを、車体前面・側面の内側、ライトケース内側、屋根裏など、光が当たる場所及び導光する通り道に可能な限り塗ってください。

しかし、一度だけでは十分ではありません。
1回ざっと筆塗りし、乾燥させた後にもう一度重ねて筆塗りしましょう。
窓枠に回り込んでも後で絵の具は落とせるので、2回塗りを目安にすると良いかも。

車体の天井部と屋根裏にももちろん塗ります。
屋根裏は、ヘッドライトまわりを中心に、両端から天井の開口部あたりまでは黒を塗っておくと良いでしょう。

ちなみに後で知ったのですが、アクリルガッシュには、ジェットブラックよりも圧倒的に暗い「暗黒ブラック」という絵の具も出ているそうな。
それもお試しあれ。

内装色のすすめ

黒を2回筆塗りしたら、車体前面・側面の内側には内装色も重ね塗りしてみませんか?
アクリルガッシュの不透明つや消しな特性が生きます。
塗膜が厚めにはなりますが、外側から車内を見た時の見栄えが向上します。

京阪350型の車内はたぶん…、YouTubeなどで見る限り淡い緑色だったんじゃないでしょうか。
ターナーのアクリルガッシュなら、パステルエメラルドがちょうど良さそう。
黒と同じく、絵具1に対して水0.5程度で希釈して、まず1回目塗りをしてみました。

メディウムで塗膜を強く

内装色も2回塗りで行きますが、2回目はつや出し材を盛ります。
絵具の半分程度ジェルメディウム(リキテックス)を、パステルエメラルドに混ぜてみました。

ジェルメディウムを絵の具に混ぜると、それ単体よりも強い接着力ツヤを得られ、塗膜のヒビ割れ防止も見込めます。
ジオラマ制作では水面表現に使っていた素材ですが、今回は絵の具と混ぜるのを試してみましょう。

ジェルメディウムとアクリルガッシュをしっかり混ぜてから、内装色の2回目を筆塗りします。
これが乾けば終わりです!

はみ出しは濡らし綿棒で落とせる

この手の作業をしていると時々、窓枠に絵の具が回り込むことも。
割と濃いめに溶いてるとはいえ、元はアクリル絵の具なので水で落とすことができます。

客室窓・乗務員窓のフチへ塗料の回り込みはいったん気にせず進め、塗り終わった後で、水で濡らした綿棒でこすって落としてください。
アクリルガッシュは乾くと耐水性になるものの、濡らした綿棒で根気強くこすればさすがに落ちます。

塗料のわずかな厚みで窓ガラスを戻しにくくなるため、ガラスと干渉する部分にはみ出た絵の具は必ず処理しておいてください。

ちなみに、薄めに溶いた塗料を流すように着色し、乾燥後に希釈剤で拭き取る工法は、エナメルの塗料・溶剤を使った墨入れと似た方法です。
しかし、エナメル溶剤は配分を間違えるとプラスチックに悪影響を及ぼします。
似た要領で水とアクリルガッシュを使ってみると、プラスチックを傷めにくくて安心です。



ダメそうならガラスを一部カット

アクリルガッシュを計4回重ね塗りしたことで、塗膜がそこそこ厚めになってしまいます。
仕方がないことですが、その状態でガラスパーツを戻そうにも嵌め合わせが悪く、ガラスを戻せなくなる事態が起こり得ます。
実際に私にもありました。

遮光・内装を塗った後にどうしてもガラスを戻せなくなったときは、車体と噛み合う部分のガラスを数ミリ程度カットしてみてください。
外側から見えない部分に刃を入れるわけです。

ですがやり過ぎは禁物で、ミリ程度の幅で繋がっている部分を切り落とすとガラスが分割してしまいます。
また、車体と噛み合う部分を切り過ぎるとガラスが緩くなり、床板や動力を組み入れにくくなります。
正直なところ私もまだ慣れてません。

アクリルガッシュで遮光できたか

何はともあれ遮光塗装ができたので、ガラスパーツを戻しましょう。

この状態で、試作の光源を使って車内に光を当てるとこんな感じ。

なるほどなるほど、パッと見は良い感じです。
では、部屋を暗くしてみたらどうでしょう。

遮光できてる!
車体から光が透けて、ホタルイカみたいな状態にならなくなりました!

さらに、試作を進めた点灯化状態をお見せするとこうです。

車体が光を透過しなくなり、車内の光が窓からのみうかがえるようになりました。
自作ライトユニットにより、ヘッドライトを光らせることも成功しました。

しかし、黒を塗りきれなかった部分は光が透け、構造上の都合、どうしてもヘッドライト周辺の光漏れは避けられませんでした。
可能ならライトケースを設ける、あるいは車内に遮光板(内装の充実も兼ねて)を増設するなどで対策できると思います。
が、350型に仕込んだ自作ユニットが初めてだったので、ぼちぼち改良していきます…。

とりあえず本稿の回答としては、鉄道コレクションはアクリルガッシュで遮光できる
今後も随時進めていこうと思います。



さいごに

今回は、鉄道コレクションを自力でライト点灯化させる前段階として、鉄道コレクションの車体をアクリルガッシュで遮光できるか検証しました。
アクリルガッシュで鉄コレを遮光できました

ガッシュに限らず筆塗りの宿命ですが、スプレーやエアブラシよりも塗装面は厚くなります。
見映え重視で内装色を重ねたところ、ガラスを戻すのに苦労しました。

あと気になるのは、側面に回り込んだ絵の具を落とすのがけっこう面倒なことでしょうか。
大変といえば大変ですが、上手くできればサードパーティー製品を買うよりも安く点灯化にこぎつけられるので、自己責任の下、試してみてはいかがでしょうか。

そして、自力で遮光・点灯化させてイズムワークスのありがたみを感じた私でした。

今回はここまで!
ありがとうございました!