数十年前にKATOが発売していた、Nゲージ鉄道模型の20系客車(旧製品)のメンテナンスを進めています。
前回は「ナハフ20」を例に、屋根から始めて側面ガラス、車体、前面ガラス、床下・台車といろいろパーツを分解しました。
今回は、古い車輪を新しいものに交換、アーノルドカプラーを台車マウントの「KATOカプラーN」に交換し、幌の取り付けとステッカー貼り替えも行います。
古いNゲージの足回りを中心にグレードアップさせれば、それが再び走って活躍できること間違いなし!
客車だけ整備しても自走できないので、牽引する機関車も一緒に整備しています。
しかし今回は20系客車のみ掲載し、機関車のメンテナンスについては後日更新予定です。
※ガチの中古品のため、キズ・汚れ、元からあったタッチアップはご容赦ください
銀車輪から黒車輪へ
前回の記事で20系客車「ナハフ20」を分解しまくったところの続きからいきます。
本稿から読んでも大丈夫ですが、まだ前回記事を見ていない場合はぜひご覧ください。
車体を取り外した後の床板からは、台車を外しやすくなっています。
旧製品の台車はピン留め方式なので、単純に斜めに引き下げれば外れます。
しかしピンが硬いので、当たり所が悪いとピンが割れてしまうことも。
心配な場合は車体を外した後に上からマイナスドライバーで爪をこじると良いでしょう。
万が一ピンが割れてしまった場合、鉄道コレクションのピンで代用できますよ。
さて、旧製品の台車を裏返して車輪をチェックします。
使われないまま年季が入ったか、踏面の光沢が無くなり、くすんでしまっています。
トレーラー車の車輪を外すのはいたって簡単。
台車を外側に少し広げ、車輪の輪軸を軸受けから外してください。
輪軸が少々長かったものの、集電パーツがないのであっさり外れます。
集電機構が無いので、車輪はただスムーズに転がってくれれば良いでしょう。
このまま車輪の踏面を磨きまくり、光沢を取り戻せば十分です。
しかし結構な作業数になるのと、違う色の車輪も試してみたい。
ので、車輪をまるごと交換します!
KATOの「中空軸車輪(ビス止め台車用・黒)」(品番:11-606)を使ってみましょう。
1袋で8個の車輪(ボギー車両2両分)が入っており、ピン留め・ビス留め台車の車輪として使います。
製品名の通り車輪が黒色なので、銀色の車輪に比べてニヒルな輝きを放ちます。
これが黒色の台車と良くマッチするとの評判を聴き、私も試してみることに。
古い車輪を外した後の台車軸受けに、新しい車輪の軸を嵌め込んでください。
良い黒光りですね!
新品の光沢を得つつも車輪のギラつきが抑えられ、引き締まった見た目になりました。
古い車輪と中空軸車輪、似ているようでちゃんと違いがあります。
車輪の色はもちろんですが、古い車輪はごくわずかに車輪間の幅が狭いですが踏面が広いです。
また、軸が長いので台車にしっかり嵌まります。
中空軸車輪は、車輪間の幅が相対的に広めですが、軸がわずかに短く、台車に嵌めても割かしブカブカ。
たぶん、軸受けに集電シューを取り付けてちょうど良くなるのではないかと思われます。
ですので、車輪を交換する時に台枠が外向きに曲がっていた場合、曲げ癖を付けてゆがみを矯正しておきましょう。
台車マウントのKATOカプラー
次はカプラー交換について解説しましょう。
旧製品の20系客車には、デフォルトではアーノルドカプラーが装備されています。
他の旧製品Nゲージも同じようにアーノルドカプラーが多いのではないかと思います。
もっとも、この20系は元々の持ち主の意向で、先頭部のみKATOカプラー及びマグネマティックカプラーに替わっていましたが。
アーノルドカプラーは扱いやすい上に連結もとても簡単ですが、唯一連結間隔の広さがネックになります。
もちろんこのままでも何ら問題ありませんが、せっかくなので少しだけこだわります。
交換先のアイテムとして「KATOカプラーNJP A(アーノルドカプラー用ポケット対応)」(品番:11-721)を使ってみましょう!
このカプラーは台車マウントのカプラーポケットに使用してください。
連結器の形状は「KATOカプラーN」と同じ自動連結器タイプですが、こちらにはホースも設計されています。
上下のパーツを組み合わせることで連結器として機能するようになります。
組み立ても簡単ですよ。
基本的に解結しない中間車両同士の連結で台車マウントのカプラーを使用する場合にこのカプラーを使うと、連結しやすいまま一段階リアルな見た目になります。
先頭車両同士の連結には、ジャンパ栓の付いていない「KATOカプラーN」(品番:黒・11-702、グレー・11-707)を使うと良いでしょう。
では実際に台車に取り付けていきます。
まずはアーノルドカプラーを90度ひねり、縦にしてください。
縦になったアーノルドカプラーは、すんなりポケットから外れるようになります。
カプラーが外れたら、次にカプラースプリングも取り外してしまいます。
細いピンセットや爪楊枝などでバネを掴み(すくい)、ポケットから取り除きましょう。
「KATOカプラーN」を使用する際、カプラースプリングは使いません。
アーノルドカプラーと一緒に小分けにしておくと再利用できて便利です。
持ち方が悪いと吹っ飛んでいくので注意しましょう。
スプリングはそれ単体で分売されているので、どうしてもな場合は買い足してください。
さて、カプラーの無くなったポケットに、「KATOカプラーNJP」を取り付けましょう。
やり方はアーノルドカプラーと同じで、まず縦向きでポケットに差し込みます。
したら、カプラーを90度ひねって横向きにセットしてください。
ホースのたるみが下向きになります。
これでカプラー交換も完了です!
全ての台車で車輪・カプラー交換が済んだら、その台車を元の床板に取り付けておきましょう。
KATOカプラー同士の連結はこんな感じです。
幌が付いているので分かりにくいですが、アーノルドカプラーより間隔が狭く、より実感的になりました。
連結面の密度が濃くなり見栄えが向上します。
幌の取り付けに関しては後ほど解説します。
ちなみに今回、「カニ21」先頭部と「ナハネフ23」の車掌室側のカプラーはジャンパ栓なしの「KATOカプラーN」に交換しています。
遊び方の都合上他の機関車・客車と連結させないであろう「ナハフ20」先頭部のみ、マグネマティックカプラーのままにしてあります。
台車マウントで密着連結器のカプラーが必要でしたら「KATOカプラー密連形」もお試しあれ。
とはいえ、他社製のカプラーのほうがさらに見た目が良いので、見た目重視の場合は他社製品もご検討ください。
あと、ボディマウントのカプラーに台車マウントカプラーはそもそも合いません。
ウェイトの赤錆びはお酢で落ちる
ついでにウェイトの赤錆びも落としておきましょう。
集電機構が備わっている場合、錆びは集電に悪影響をもたらし、ライトの点灯不良を招きます。
この旧製品20系に集電機構はありませんが、メンテナンスとあらば赤錆びは落とすに限る!
方法はいろいろあると思いますが、今回私は、キッチンにあるお酢を使いました。
お酢1:水3~4で酢酸水を作り、そこに錆びついたウェイトを投入!
錆び付きの具合にもよりますが、だいたい30分前後漬けておけば十分でしょう。
時間が経ったらウェイトを真水でよく洗い、水気をしっかり拭き取れば、ちゃんと錆が取れました!
輝くほどの綺麗さではありませんが、組み立てた後はウェイトが見えなくなる上に集電機構もないので、これでも十分かと思います。
床板にウェイトを戻す前に、そちらの汚れなども拭き取っておきましょう。
ちなみに、集電用のウェイトや銅板の場合は、錆びを落とすだけでなくしっかり清掃することをおすすめします。
目の細かい耐水ペーパーやパーツクリーナーなどで光沢を取り戻せるはずですが、研磨しすぎには気を付けてください。
レールクリーナーをしみこませた綿棒でゴシゴシするだけでも全然違います。
何はともあれ、これで車両の部品交換と清掃ができました。
そしたら車体の裏側にウェイトをまず戻します。
続いて台車を取り付けた床板を戻します。
そしたら、黒い爪にしっかり噛み合うように、ガラスパーツを嵌め直しましょう。
合わせ方が悪いとガラスが傾いてしまうので、ちゃんと車体の内側にガラスが接しているか確認すること。
ガラスの嵌まり方が問題なければ、最後に屋根を被せて組み立て完了です!
旧製品に幌を付けるには
ここからはおまけです。
さらなる微グレードアップを目指して、幌を取り付けてみましょう。
KATO「5085 ホロ(灰)」(品番:Z5-0808)を使います。
まぁ何ということはないどこでも見かける幌です。
裏側に爪がモールドされ、車体側の爪受けに引っかかる構造になっています。
しかし、20系客車の旧製品には幌用の爪など存在しないので、裏側の爪を切り落としてしまいます。
カットした後は、カッターかヤスリで切断部分を平滑にしておきましょう。
幌の準備ができたら、車体の幌枠(貫通扉周囲の出っ張り)に少量のゴム系接着剤を塗って幌を貼り付けます。
取り外しのため、接着剤は幌枠の上下にのみ塗ってます。
上手くいくと以下の通り。
立体感が生まれ、見栄えが大幅に向上します!
編成中間にも最後部にも入る「ナハネフ23」の車掌室側貫通扉には、幌の取り付けは特におすすめです。
長編成での運行時は通り抜け可能で、末端区間ではこれより後ろの車両を切り離すことも多かったため、そのどちらにも見立てやすくなります。
なお、貫通扉と簡易種別幕とテールライトの塗装は元々の持ち主によるものです。
ありがとうございます…!
今でも使えるステッカー
最後に、ステッカーを貼り替えましょう。
旧製品の20系客車はライトが点灯しないので、愛称板はシールで決めることになります。
デビュー当初に東京~博多間を結んだ「あさかぜ」はもちろん、長崎・佐世保方面(当時)の「さくら」、鹿児島方面(当時)の「はやぶさ」、現在の「サンライズエクスプレス」に継承された「出雲」「瀬戸」など収録されていました。
さらには新大阪始発の「安芸」「彗星」や、上野発青森行きで東北本線経由の「はくつる」、常磐線経由の「ゆうづる」などなど、意外と種類が豊富です。
さて、このシールを枠の通り(気持ち一回り小さめがちょうど良い)に切り出し、「カニ21」「ナハフ20」の前面に貼り付けましょう。
元々、「カニ21」には「はやぶさ」、「ナハフ20」には「さくら」が貼ってありましたが、少々もったいないけど貼り替え、新たに「出雲」を設定しました。
20系使用当時、「出雲」は東京~浜田間(京都から山陰本線経由)で運行しており、出雲市以西では「ナハネフ23」より後ろの車両を切り離していました。
譲受した車両だけで末端区間運用が再現可能だったのでこれを選んだ次第です。
古いシールとはいえ意外とちゃんと貼れています。
「あれ?ナハフ20に出雲はおかしくね?」
と思った人は筋金入りのファンでしょう。
「ナハフ20」は「出雲」には使用されませんでしたが、20系独特の顔立ちをどうしても編成に入れたいがあまりに、模型ならではのなんちゃって仕様として組みこみました。
いただきものという偶然から生まれた模型事情なので大目に見てくださいな。
ガチ中古品が今でも走れる
では、いつものように試走台に乗せて撮影してみましょう。
全部は繋げられないので2両くらい置きました。
まさか、私がブルートレインのNゲージを整備することになるとは思いませんでした。
しかし一度展開すると、子どもの頃の夢がよみがえってまぁ楽しいこと!
幼少期当時、本で読んだ「北斗星」や「トワイライトエクスプレス」などにめちゃめちゃ憧れました!
結局一度も乗れませんでしたがね。
「カニ21」「ナハフ20」の優美な外観が本当に目を惹きます。
後者は実車の「出雲」には連結されませんでしたが、模型的にはやっぱりアリかも。
「ナハネフ23」が最後部の編成も良いですね。
これはこれで、ごちゃごちゃした見た目が楽しいです。
「KATOカプラーNJP」に交換した連結面ですが、想定通りの一段リアルな見た目になってました。
幌も効果絶大!
また、古い車輪から交換した中空軸車輪の転がり具合も良好です。
あまり急なカーブは通過できない可能性が高いので、フロアー運転でスペースを広く取るか、レンタルレイアウトに持って行くと良いでしょう。
うちでの20系客車の連結相手は、TOMIXのDD54形。
山陰地方にのみ配属されていたディーゼル機関車で、日本離れした外観が個性的な車両でした。
一丁前にヘッドマークも用意してます。
ただしこれしか持ってないので、実際のブルートレイン牽引機とは形態が異なります。
私も分かっていますので、揚げ足取り系のコメントはお止め願います。
機関車のカプラーも「KATOカプラーN」に換装しています。
加工が必要でしたが上手くできたみたいで、お互いのカプラーの高さがほぼ一致しました。
DD54形のメンテナンスの様子も公開してますので、よければぜひ!
20系もDD54も何十年前のNゲージですが、ちゃんとメンテナンスすれば現代でも十分通用します。
偶然自宅にあった場合や中古ショップで興味が湧いた場合に、もう一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
さいごに
今回は、KATOが発売していた20系客車(旧製品)の車輪・カプラーの交換と、幌取り付けとステッカーの貼り替えをやってきました。
後日、この20系とDD54をレンタルレイアウトに持って行ったところ、両方とも無事に走ってくれました。
私の目論見は成功です!
銀色車輪から黒い車輪に、アーノルドカプラーからホース付きのKATOカプラーに交換したことで、車輪の色が落ち着き、連結面の密度も濃くなりました。
今回たまたま旧製品でしたが、他にもピン留め・ビス留め台車や、台車マウントのカプラーを使用する車両であれば同じようにできるはず。
中古ショップでも見かけるか分からないほど古い鉄道模型だって、ちゃんと手入れすれば走れます!
ぜひご参考になればうれしいです。
今回はここまで!
ありがとうございました!