2021(令和3)年3月28日、長野県上田市の上田電鉄別所線にて、上田~城下間の千曲川橋梁が復旧し、全線で電車運転が再開されました。

2019年10月の「令和元年東日本台風」から約1年半、ようやく別所線の電車が上田駅に入れるようになりました!
全線復旧おめでとうございます!

昨年12月に橋の工事の様子を知るべく上田に降り立った時から、また当日に来ようと考えておりました。
金銭的にも余裕ができたため、復旧日の3月28日に再び上田電鉄を訪れることができたので、その時のことを書きつづってまいります。



真っ赤に塗り直された橋梁

ということで3ヶ月ぶりに長野県の上田駅に降り立ちました。
前回は軽井沢駅からしなの鉄道を使いましたが今回は新幹線でビュン!
記念乗車券を発売するとのことで、朝は屋外まで長蛇の列ができていました。

上田駅の温泉口からまっすぐ歩けばすぐに千曲川の堤防に差し掛かります。

12月来訪時に支保工が組まれていたトラス橋は、見事に復活していました!

午前中は関係者による記念式典が行われたため、城下側の踏切周辺が通行可能になったのは午後から。
城下側の踏切周辺で観察してみると、崩落した鉄橋が赤く鮮やかに塗り直されているのが分かりました。

また、トラスの骨組みに打ち込むリベットが、他のトラスに比べて目立つようになったのも特徴でしょうか。

それからもう一点、前回工事中だったため、近くからの撮影を避けていた巨石水制にも、水が引かれていました。
組まれた巨石に水流がぶつかり、水の勢いが弱まっているのがわかります。

なお、復旧にあたって上田電鉄は国の補助金を受けることができたそうですが、その要件として、別所線の千曲川橋梁のみ「上下分離」が行われたとのこと。
つまり別所線の中で千曲川橋梁だけは上田市の保有となりましたが、鉄道運行は今まで通り上田電鉄が行う方式です。

(2020年1月20日 上田市ホームページ「上田市長記者会見資料一覧」より)

当日は無料乗車デー

全線復旧を記念して、当日の別所線は特別ダイヤで運行する「無料乗車デー」となりました。
そのため電車の前面には「ワンマン」と表示されているものの、全ての電車に車掌が乗務(日中のみ)し、全ての駅で全てのドアが開きました。

本来は、上田駅と下之郷駅以外では、1両目の後ろのドアから乗車し、運賃後払いの上で一番前のドアから降りる方式となっています。

まぁよくあるワンマン列車の乗り方です。
都市部以外のバスも同じ感じですよね。

別所線の上田駅は高架になっていますが、発車すると別所温泉方面に向かって左に急カーブしながら地上に降りてきます。
最初の踏切のところでちょうど地上に降り切りますね。

時速40kmの制限速度でゆっくり千曲川橋梁を渡ります。
ゆっくり渡るとはいえ、電車が橋を渡る時の音はその存在感を示すには十分。

千曲川橋梁を渡り終えたら下り勾配にさしかかりつつ右にカーブ。
すぐに線路が分岐して、城下駅に到着です。

後日SNSを見ていたところ、城下駅のプレハブ駅舎は役目を終えたとのことで、数日後に無人駅に戻ったようです。

本来、日中の別所線は下之郷駅で列車交換をするのですが、当日は特別ダイヤということで電車が増発しており、城下駅でも行き違いを行う様子が見られました。

もちろん当日の利用者数も半端ではなく、たいへん多くの乗客を電車は乗せまくっていました。
休日とはいえ日中なのに立席が出るほどで、沿線でも千曲川橋梁を中心に多くの住民やファンに見守られながらの運行でした。

しかし、本当は上田駅構内でテイクアウト限定の「上田駅ナカ横丁」も開催されるはずでしたが、新型コロナウイルス感染症の上田市内の警戒レベルレベル4に引き上げられたため中止。

駅ナカ横丁の中止は残念でしたが、未だコロナ禍も続いてる以上仕方のないことです。

みんなが待ってた

全線復旧の初日で、記念乗車券で長蛇の列ができ、電車も今までにないレベルの混雑となった別所線ですが、わたしが見た限り、殺伐とした雰囲気はどこにもありませんでした。

地元住民や各地の鉄道ファンが千曲川橋梁に多数訪れて、カメラを向けたり電車に手を振ったり。

前述の通り、午前中は橋梁の城下側では関係者のみによる記念式典が行われたため、一般の人は近づくことができませんでした。
そのかわり橋梁の上田側では同じタイミングで、一般の人々は七色の傘を持ちながら電車に手を振ってお見送り!

これは上田東ロータリークラブさんの企画で、一般住民・ファンにその場で協力を呼びかけ多くが快諾してくれたことで実現した光景です!

約1年半前の災害から立ち直った別所線で、本当に多くの人の笑顔と喜びと活気にあふれた一日でした。

 

 
心の内を明かすと、実は私は高校時代、某百貨店の某鉄道フェアに出展していたローカル鉄道の関係者からこんなことを聞いたのです。

「ローカル鉄道は地域と結びつかなければ生きていけない」

頭ではだんだんわかるようになりましたが、じゃあそれは何をもって証明できるのか、ずっと答えを出せずにいました。
しかしこの日、災害から見事全線復旧をとげたローカル鉄道と、それを大いに祝う住民、ファン、そして自分の様子を振り返って、ようやく一つの答えを出せました。

「ローカル鉄道と地域の結びつき」の証明として、俺は学びの成果を写真に収めることができたのかな?



さいごに

今回は3月28日に千曲川橋梁が復旧し、全線運転再開を果たした上田電鉄別所線を、3ヶ月ぶりに再訪してきました。

2019年10月の台風で千曲川堤防の崩落、橋梁の落下という被害を受けた上田市および別所線でしたが、このたび鮮やかに塗り直され、千曲川に架かる5連トラス鉄橋が復活!

本当によかった…!

上田市の人間でない自分は、地元の方から見ればただの部外者も同然ですが、それでも「ローカル鉄道が人の心を豊かにする」ひと時に立ち会うことができたのは、いち鉄道ファン、そしてライターの端くれとして大変光栄なことでした。
この度は全線復旧まことにおめでとうございます。

今回はここまで!!!
ありがとうございました。