東急電鉄で平日夕方の一部急行に導入されている有料座席指定サービス「Q SEAT」。
普段はロングシートとして配置されている座席が2+2列のクロスシートに変わり、追加料金を払えば絶対に座れるようになる、お疲れの時にありがたいサービスです。
2018(平成30)年から大井町線で実施されていましたが、2023(令和5)年8月10日から東横線でも「Q SEAT」サービスが開始します!
ロングシートの「Q SEAT」車両に乗ったことはあるものの、座席指定サービス適用中の同車には、実は私はまだ乗ったことがありません。
そこで今回は、東横線で「Q SEAT」が導入される直前に大井町線の「Q SEAT」に乗車し、記録を取ってきました。
※撮影の都合上、写真の車両はごちゃ混ぜで掲載しています。「Q SEAT」を連結してない列車も含みます
もくじ
お帰り時の大井町から長津田へ
改めまして、東急電鉄の有料座席指定サービス「Q SEAT」は、2018年から大井町線で実施されています。
「Q SEAT」サービスを適用した急行は大井町駅を始発とし、二子玉川駅から田園都市線に乗り入れ長津田駅まで運行します。
もちろん「Q SEAT」以外は一般車両です。
JRでいうところの普通列車グリーン車に近い感覚で良いんじゃないかと。
その運行本数は、大井町17時0分発の「Q SEAT 171号」(長津田17時40分着)から大井町21時40分発「Q SEAT 213号」(長津田22時19分着)まで、1日9本。
30分~45分間隔で運行されてます。
大井町線の「Q SEAT」には、大井町線の急行停車駅(旗の台駅、大岡山駅、自由が丘駅、二子玉川駅)で乗車可能ですが、田園都市線では全停車駅が降車専用になります。
田園都市線の急行停車駅(溝の口駅、鷺沼駅、たまプラーザ駅、あざみ野駅、青葉台駅)から「Q SEAT」に乗車することはできないので注意してください。
というか、以前は指定券料金は400円でたまプラーザ以西もフリー乗降になってたはずですが、2023年3月18日のダイヤ改正で指定券500円とフリー区間降車専用化に変更されてました。
7両急行の3号車にQシート
車両は、普段から大井町線で急行運用を担っている6000系・6020系。
6000系は6001編成・6002編成に連結されています。
6020系は、2編成とも「Q SEAT」連結編成です。
どちらも3号車(大井町方から3両目)が「Q SEAT」になっており、この号車だけロングシート・クロスシートが切り替わるようになっています。
「Q SEAT」サービス適用時はクロスシート、それ以外の時はロングシートで使用されます。
「Q SEAT」車内は暖色照明で、無料Wi-Fiも使えます。
さらに各席に電源も用意されている他、一部座席にドリンクホルダーも。
座席は明るい緑色ですが、ロング・クロス両方に対応するためヘッドレストも備わっています。
これが硬すぎず柔らかすぎずでちょうど良く、最長40分程度の乗車なら十分快適に過ごせるんじゃないかなと。
乗車には事前に座席指定を
「Q SEAT」乗車には、事前購入した座席指定券が必要です。
その料金は、大人・子ども一律で500円。
大井町駅から長津田駅まで乗り通そうにも自由が丘駅から溝の口駅まで乗ろうにも、誰でも平等に500円かかります。
そして指定券は、乗車当日に大井町線の急行停車駅窓口で購入できます。
前売りはやってないそうです。
私は大井町駅の窓口で指定券を購入しました。
カウンター越しのホワイトボードに当日の空席状況も掲示されていました。
乗車予定の列車に空席の余裕があれば、席の希望も聞いてくれるかも。
詳しくは駅窓口でお尋ねください。
ちなみに駅窓口発行の指定券はきっぷより薄くペラッペラですが、これが無いと座席指定適用中の「Q SEAT」には入れません。
自動券売機では買えないので注意しましょう!
駅窓口の他には、オンラインの会員登録制「Qシートチケットレスサービス」からも購入可能です。
オンライン購入はクレジットカード決済のみ対応しています。
なお、指定券を買ったけど要らなくなった場合、指定した列車の発車1分前までは払い戻しもできます。
利用者都合の場合は手数料100円を引いた上で払い戻し。
荒天または東急側の都合で「Q SEAT」運行が中止になった場合、手数料なしで現金が払い戻されます。
2席買った場合は両方払い戻しになり、片方だけ残すのはできません。
きっぷで購入した時は、大井町~中央林間の急行停車駅窓口にご相談ください。
オンライン購入の場合、スマートフォンかPCの画面から払い戻し手続きを行いましょう(東急都合による払い戻し時は何もしなくてOK)。
ちなみに東横線の「Q SEAT」対応駅も同線内の急行停車駅になるとのこと。
月曜夜の大井町駅から
前置きはこの辺にして、そろそろ大井町駅に向かいます。
東横線でのサービス開始前に、大井町線では「Q SEAT」がどんな感じなのか、乗り鉄記録を取ってみましょう。
今回は、大井町19時15分発の長津田行き急行「Q SEAT 191号」に乗車します!
乗車日は7月31日。
夏本番とはいえ、とっくに夏至を過ぎているので日暮れが早まってきました。
当日の利用状況ですが、17時30分の時点で18時0分発「Q SEAT181号」が残りわずかで、18時45分発「Q SEAT183号」は完売。
「Q SEAT191号」も19時時点で完売してました。
大井町駅ホームの3号車付近には、「Q SEAT」利用者専用のウェイティングスペースもあります。
待合室とまではいかないものの、私を含めて6人くらい並んでいました。
帰路につく通勤客が続々と歩いている中、19時9分頃に、折り返しの急行が2番線に入線。
今回は、6000系6001編成に乗ります!
なお掲載写真はいずれも日中に撮り溜めましたが乗車したのは夜です、あしからず。
ここまで乗ってた乗客が全員降りた後、係員が2・4番ドアを横断幕で封鎖。
「Q SEAT」利用者は1・3番ドアから指定券を見せて乗ることになります。
クロスシートの後ろ2列にホルダー
今回の私は、5D(1・2番ドアの間で、進行方向左の窓側)に着席しました。
この席にはドリンクホルダーがあります(結局使わなかった)!
「Q SEAT」適用中にドリンクホルダーを使える座席は、クロスシートの4・5番列、7・8番列、10・11番列。
いずれもクロスシートの中央列と後方列になります。
車内を見てみると、大井町駅の時点でほとんどの窓側座席が埋まっていました。
もちろん空席もありましたが、そこにもこれから利用者が乗ってきます。
くれぐれも、空いてるからといって荷物を置いて占領するのはやめてくださいまし。
途中駅からも続々乗ってくる
さぁ、19時15分に大井町駅を発車!
下神明駅でJR横須賀線・湘南新宿ラインの蛇窪信号場付近と交差し、戸越公園駅付近で地上区間に。
速度面では正直あまり速くないですが、通過運転してる分の速達性は体感しています。
なお「Q SEAT」以外は一般車両で、それより多くの利用者がいます。
間違えられないよう、車掌や係員が「この電車の3号車は座席指定車両『Q SEAT』です」と促していました。
結構なアップダウンを繰り返しながら、3分程度で旗の台駅に停車。
池上線との乗換及び緩急接続が可能な駅で、1本前に発車していた各駅停車の9020系をここで追い抜きます。
ここから「Q SEAT」に乗る人もそれなりにいて、私の隣の座席もさっそく埋まりました。
なお、旗の台駅からの乗車口は1番ドア(大井町寄り)のみ。
添乗している係員から案内があると思いますが、途中駅から乗る場合は乗車位置に気を付けてください。
北千束駅を通過してトンネルに入ったら、目黒線と接続する大岡山駅に到着。
旗の台駅からだいたい3分くらいです。
相鉄・東急直通線が開業したのもあり、海老名行きの急行、しかも相鉄21000系とすれ違いました。
次は緑が丘駅を通過して、またまた3分程度で自由が丘駅に停車。
東横線と乗り換えできます。
「Q SEAT」にも利用者が乗って来ましたが、前後の一般車両にもかなりの混雑がうかがえました。
そして自由が丘駅の時点で、半分くらいの座席は通路側まで埋まりました。
Qシート乗車駅は二子玉川まで
自由が丘駅を発車した大井町線急行は約7~8分間、二子玉川駅まで停まりません。
ドアカットで有名な九品仏駅ももちろん通過していきます。
等々力渓谷の最寄りである等々力駅付近では、溝の口方面に向かって左側、線路と住宅に挟まれた渓谷が垣間見えます。
夜はさすがに真っ暗ですが、日中に通ると街中の小さな自然に目を惹かれるかもしれません。
上野毛駅を通過すると間もなく高架区間に入り、左急カーブで上から田園都市線に割り込むように二子玉川駅に到着(19時33分着)。
渋谷方面から来た各停中央林間行きの東急5000系に接続しました。
座席指定サービス中の「Q SEAT」に乗れるのは二子玉川駅まで!
この先、田園都市線内の停車駅で「Q SEAT」は降車専用となり、あとは利用者がだんだん降りていくのみになります。
多摩川を渡りながら転線
田園都市線の各停に先んじてこの急行が先に二子玉川駅を発車!
真っ暗になった多摩川を囲むような、遠方の街灯と川沿いを走る車のライトと町の夜景がエモい。
ここまでで今日の「Q SEAT 191号」の利用者が全員乗車したことになります。
私から見える範囲の人はだいたいスマホでゲームとか動画視聴とか(たぶん)してたと思います。
一部は新聞を読んでるおっちゃんやフラペチーノを手に持つ若手サラリーマンがいたり、お菓子の袋を開ける音が聴こえたりも。
乗客層はパッと見ですが、30代以降のお仕事帰りの人が多いように見受けられました。
そんなことを考えているうちに複々線区間をあっという間に通り過ぎ、約2分で溝の口駅に到着です。
田園都市線に転線したため右側のドアが開き、私が見えた範囲で2人ほど降りました。
進行方向右側のドアは、横断幕による封鎖はされていないものの、間違えて乗り込む人がいないように係員がドア前についています。
それでも間違えて乗っちゃった人がいたので、すぐに後ろの車両に移っていきました。
が、貫通路に留まるしかできないレベルで混んでたように見えました。
多摩田園都市をトップスピードで
溝の口駅発車後に線路が複線に戻り、田園都市線はここから本番!
区間・状況にもよりますが、大井町線から一転して全速力でぶっ飛ばします!
大井町線折り返し用の引き上げ線を横目にトンネルに入り、抜けたところで梶が谷駅を通過。
各停中央林間行きの東京メトロ08系を追い抜きました。
田園都市線には、実は踏切が一つもないのですが、そのかわり勾配が非常に多いです。
宮崎台駅を通過したら、宮前平駅に向かってキッツい下り勾配を駆け下りることに。
そして宮前平駅を通過すると、今度は鷺沼駅に向かって上り勾配を駆け上がる、なんとも激しいアップダウン。
たぶん体感で分かるレベルの急坂にもかかわらず、急行はトップスピードで難なく超えていきます。
鷺沼駅から先は左側のドアが開きましたが、左側ドアからの降車は1番ドア(大井町寄り)からのみでした。
厚木街道へ駆け下りる
鷺沼駅を出ますと、たまプラーザ駅、あざみ野駅に続いて停まります。
たまプラーザは駅と商業施設が一体化したベッドタウン、続くあざみ野駅は横浜市営地下鉄ブルーラインとの乗り換え駅。
ということで、どちらの駅でも「Q SEAT」から4~6人ほど利用者が降りていきました。
一般車両からも多くの利用者が降りていきます。
たまプラーザ駅を出て、トンネルを抜けたあたりから下り急勾配を降り続け、保線車両基地の脇を大きく右にカーブして江田駅を通過。
各停中央林間行きの50050系を追い抜きました。
そして少しの間、厚木街道と並行します。
あちらは片側2車線で多数の車が往来していますが、それをも追い抜くハイスピードで夜の青葉区を快走!
厚木街道をアンダークロスしてまもなく、ホームが半分トンネル内の市が尾駅を通過します。
夏の夜なら花火も見える!?
ところで、この「Q SEAT 191号」に乗車したのは7月31日。
みなとみらいでは花火大会が盛大に行われていたそうですね。
なんと、市が尾~藤が丘間でも花火が見えました!
港湾部からだいぶ離れてるはずの青葉区で、混雑から解放されて、座席指定のクロスシートから車窓に花火を眺められるありがたみ。
花火が高く上がらないと難しそうですが、こんな体験が「Q SEAT」でできるとは正直思ってませんでした。
日中はとても見晴らしがよく、鶴見川を渡った後の築堤から眼下に田園風景を臨みつつ、通り過ぎてきた住宅街を後方遠くに見送り、藤が丘駅を通過します。
東名高速道路の横浜青葉ジャンクションもこの付近です。
そして、最後の途中停車駅である青葉台駅に停車。
私の周囲の人もだいぶ降りていき、ずいぶん人が減りました。
それでもだいたい3分の1くらいの利用者が残り、長津田駅まで乗り通す人もそれなりにいることがうかがえました。
そして長津田へ
青葉台駅を出ますと、田奈駅を隔てて次が終点の長津田駅。
後ろの一般車両も、座席が埋まる程度の乗車率に落ち着いていました。
係員が、2~4番ドアにかけていた横断幕を外し、全てのドアからの降車できるようにしていました。
速度を落としながらJR横浜線に近づいていき、19時55分に「Q SEAT 191号」は長津田駅4番線に到着。
3番線の中央林間行き各停に接続しました。
大井町駅からここまで約40分。
通常の運賃(大人)は350円なので、指定券と合算すると850円かかります。
人によっては高いと感じるかもしれませんね。
しかし、平日夕方・夜の一般車両の混雑はかなりのもので、貫通路から車内に進めない人もこの時いました。
500円で混雑から解放されるだけでなく、クロスシートへの着席も保障されるとあらば、毎日ではなくとも利用価値はあると思います。
実際に、空席残りわずか及び完売の列車もありましたもの。
急行停車駅には他社線が乗り入れない駅もあり(乗り入れても座席指定列車がない)、そこまで確実に座って帰れるということで、大井町線の「Q SEAT」はパッと見好調ではないかと思えました。
覚えておきたいこと
1日少しの間見ただけでもそれなりの利用者数がうかがえた「Q SEAT」ですが、注意しておきたいこともあります。
まずは先ほどの繰り返しですが、座席指定券を駅で購入する場合、自動券売機では指定券は買えないこと。
大井町駅で自動券売機を見たところ、指定券を購入できるメニューがそもそもありませんでした。
そのため、駅での指定券購入は必ず窓口に申し出ることになります。
窓口で駅員に対応してもらうということは、場合によっては待ち時間が発生するということ。
時間に余裕を持って「Q SEAT」を指定するか、会員登録してオンラインで指定券を買いましょう。
次が特に重要で、指定券を購入すると座席の変更ができません。
どうしてもな場合は一度払い戻した上で別の空席を買い直す必要があります。
その際に手数料100円がかかるので、別席を確保できても余分に100円のロスが発生します。
よほどのことが無い限り座席の変更はほぼないと思いますが、買い間違いには十分注意してください。
最後に一般車両につきまして。
「Q SEAT」サービス適用中、追加料金不要で乗れる車両が1両(東横線では2両)減少します。
その1両分の利用者が別の号車に流れるため、一般車両では混雑が予想されます。
ですので「Q SEAT」を使わない場合、乗る電車の時間をずらすか、急行に乗りたいところを各停で帰るなど、こちらが混雑を避けるように対策しましょう。
現在のサービスを特に変更なく東横線に持ち込むため、東横線の「Q SEAT」でも同じデメリットが発生すると予想できます。
しかし利便性も十分にあるので、ぜひ体感してみてください。
さいごに
今回は、東急東横線で導入直前の座席指定サービス「Q SEAT」に、大井町線急行で乗ってみました。
乗車時間が1時間もないところに追加料金も発生するけど、基本混雑しがちな東急線で着席保障の恩恵は大きいと思います。
私が乗った列車も最終的に満席になったので、大井町線での「Q SEAT」は乗れればかなり便利に帰れるのではないかなと。
8月10日からはいよいよ東横線でも「Q SEAT」がサービス開始になります。
座席指定車両が2両に増えますが、渋谷~横浜間ならJRも使えますし、あちらには普通列車グリーン車があります。
なお料金は東急が若干有利。
大井町線・田園都市線とは環境が違うので、利用状況や利用者層がどう定着していくか、引き続き目を向けたいところです。
長くなったけど今回はここまで!
ありがとうございました!
参考
東急電鉄公式サイト
有料座席指定サービス Qシート
2023年2月17日 大井町線有料座席指定サービス「QSEAT」サービス内容の変更について
関連実績
マイナビニュース 2023年8月9日
東急東横線「Q SEAT」に体験乗車 – 8/10スタート、乗車率70%見込む