現代のNゲージ鉄道模型は、もはや当たり前のように、買った時点でヘッドライト・テールライトが点灯します。
「鉄道コレクション」は例外ですけれども。
しかし、昔の製品は構造上ライト非対応なことも多くありました。
むしろそういう車両のほうが多かったのではないかと思います。
そんな、集電非対応なNゲージ旧製品に室内灯を自作して点灯させることができたら、最高に面白いと思いませんか?
私の手元にも、KATOが何十年と前に発売していた旧製品の客車がいくつかあります。
今回はKATO旧製品のオハ31形旧型客車を例に、台車や床板を集電化させ、自力でライト点灯化(今回は室内灯のみ)させる加工例を解説していきます。
なお、本稿は「KATOのオハ31旧型客車を江若鉄道風に改造してみた」の番外編です。
よろしければ、その制作工程と一緒にぜひご覧ください。
※鉄道模型の分解・加工は自己責任でお願いします
もくじ
旧製品客車は非点灯だった
KATO旧製品の客車のように、古いNゲージには集電機構が搭載されていないことがあります。
そういった車両には以下の特徴がみられます。
- 床板に集電板用の穴がない
- 台車に集電板が組まれていない
- そもそも台車自体に集電板を通す穴がない
下の写真は以前に当サイトで記事にした20系客車の旧製品ですが、床板に集電板がありません。
台車の集電シューを床板に引き通す穴も開いていません。
台車には集電板用の穴がありましたが、それでも集電板はありませんでした。
決して苦情ではなく、昔のNゲージはこういう仕様でした。
そのかわり今よりずっと安く手に入ったんだと思います。
逆に言えば、ユーザーの加工次第で点灯化はできるはず!
ここからは、制作記の一環で掲載しているオハ31形旧型客車に写真を替えて、加工方法を実演しましょう。
台車・床板・車体の順に加工をしていきます。
旧製品の20系客車にもいずれ室内灯を入れたいですね。
台車の集電化加工
では、最初に台車の加工をしていきます。
オハ31はピン留め台車なので、床板から台車を斜めに引き下げて外してください。
ピンが硬ければ、車体を床板を分解した後に上からピンを押し出しても良いと思います。
ビス留めの場合はドライバーでビスを回して分解しましょう。
台車からは車輪もカプラーも全て外してください。
車輪は、台枠を少し広げて車軸を外します。
カプラーも台車マウントなので、クルッと90度ひねれば外れます。
この台車は、集電板用の穴が開いていない旧製品でした。
ということは、それも自力で開口しなければなりません。
台枠上部に穴を開ける前に、台枠・横梁間の斜めの梁を削る必要があります。
横梁とツライチになる程度まで、カッターやヤスリで梁を落としてください。
やり過ぎると台枠が割れる(とくにニッパーはNG)ので、様子を見ながら進めてください。
上の写真くらいまで行けば十分です。
そうしたら次は、削った梁の間で台枠内側スレスレに、1.0mmの穴を2個開けてください。
隣り合う穴同士をカッターで切り繋ぐとこうなります。
この状態になってやっと台車集電板を組み込めるようになります。
ここで登場するのはKATO「新幹線用台車集電板4625」(品番:29-952-4)。
「新幹線用」と明記されているものの、旧型客車の軸間距離16mmにも対応します。
その上で、床板集電板へ接する部分が低いのがこのタイプです。
床板集電板への接地部を台枠上部の穴から出しつつ、軸受け部分に嵌め込んでください。
したら車輪も交換しましょう。
今回使うのは「中空軸車輪(スナップ式台車用)<車軸短>」(品番:11-611)です。
台枠が黒いので黒染め車輪を使います。
文字通りピボットが短くなっていて、「中空軸車輪(ビス留め台車用)」と比べるとこんな感じ。
上が車軸短、下が車軸長です。
ピボットの長さの違いは、台車に集電板を仕込む場合に大きく影響してきます。
というわけで、スナップ式用車輪を取り付けましょう。
先に台車集電板に車軸を嵌め込み、車軸と組み合わせた集電板を台枠に取り付けると上手くいきます。
上から見るとこんな感じ。
この状態で、台枠が無理に広がっていない、車輪がスムーズに転がる、と確認出来たら台車の加工は終わりです。
穴あけ度合いによっては集電板がゆるくなるので、車輪の脱落に気を付けましょう。
台枠の状態や車輪の転がりが問題なかったら、カプラーも取り付けておきましょう。
アーノルドカプラー以外に交換する場合も今がチャンス!
集電板組み込み穴がすでにある時は
ロットによっては、デフォルトで台枠上部に集電板用の穴が開いている台車もあります。
この台車だったらラッキー!
元々の車輪を取り外し、短車軸の車輪に交換するだけで台車集電板を組み込み可能です!
ただ、いずれにせよ床板の穴あけ加工はやらなければなりません。
そっちが少し大変なので根気よく進めていきましょう。
床板の集電化加工
次は床板に手を加えていきます。
集電非対応の床板に、台車集電板を引き通す穴を開口しましょう。
右側の台車可動部に白い円弧を一部描き出していますが、これこそが台車の加工でやりたいことです。
ピン受けの突起の外周から数えて3~4mmの位置に、ペンで目印を付けていきます。
写真ではイラスト向けの白ペンを使っていますが、見づらくならなければ何色でもかまいません。
点線を実線で弧状にしましょう。
写真の位置くらい線を引けば十分です。
したら、引いた線に沿って1mm径のドリルで開口しましょう。
開けた後は、カッターまたはデザインナイフで穴を切り繋いでください。
床板に穴を開けることで、集電板付きの台車がやっと取り付けできるようになります。
ピンで台車を固定し、首を振らせてみましょう。
干渉せずスムーズに台車が回れば成功です。
引っかかりがある場合は、集電板の動きが良くなるまで該当箇所を削ってください。
この作業が1台車につき2箇所、1両で4箇所開けます。
3両で12穴必要です。
地味な作業ですが確実に進めていきましょう。
床板集電板は銅板で作れる
床板への穴開けが終わっても、床板の作業は続きます。
今度は集電板の組み込みをやります!
完成品のNゲージであれば、それ用の純正集電板が交換用に販売されていますが、すでに加工されたものなので多少の値段がかかります。
自作の点灯化であれば、銅板を自力で切り出しましょう!
そっちのほうが車両に合わせて作りやすいですし、何より安上がりです。
ということで、1mm厚のリン青銅板を4mm幅で2枚切り出しました。
フチが鋭いのでケガに注意してください。
床板によっては、ウェイト位置決め用の突起が床板に設けられています。
突起を避けるように銅板を切り欠くと良いでしょう。
マスキングテープなど、絶縁体のテープで銅板を固定します。
床板の3分の1程度の長さにテープを切り出し、銅板中央を留めると良いと思います。
銅板が動かない、すべての接点が触れていることを確認しながら進めてください。
組み立てる際にはウェイトも組み込むのですが、元々のウェイトは床板いっぱいの長さがあり、そのまま組み戻すとショートの恐れがあります。
床板集電板の遊びを阻害することにもなりかねません。
元々のウェイトのかわりに、釣具屋で手に入る板オモリを使いましょう。
今回は0.2mm厚の板オモリを、マスキングテープとほぼ同じ長さで切り出し、約3等分に折り畳みました。
板オモリの素材は鉛なので、このままだとやっぱりショートします。
床板側の面全体をマスキングテープで絶縁してください。
テープの余りは折り返すと良いです。
片面を絶縁した板オモリを、絶縁した床板中央にマスキングテープ等で固定します。
絶縁した面を床板側にし、銅板に触れないようにしっかり留めてください。
これで、元々のウェイトほどではないものの、重さを出しつつ集電化にも対応できました。
室内灯の集電方法が銅板集電の場合はもう少しやることがあります。
が、いったん次に進みます。
車両に銅板を引き通す
最後に車両(内装)の加工をしましょう。
元から銅板集電向けに設計されているKATO完成品と違って、旧製品の自力加工なら銅板集電もスプリング集電もどっちもできます。
それを踏まえた上で、今回は銅板集電を選びました。
屋根・床下の爪でガラスを保持して車体にしている旧製品において、取り外しやすくするために屋根の爪を削っています。
スプリング集電にするとバネの圧力で屋根が外れるリスクがあるので、銅板集電にしました。
そうすると、床下の電気を引き込むために車体にも穴を開ける必要があります。
1mm径のドリルで、2個隣り合わせに穴を開けてください。
開ける位置は、座席や仕切りなどの内装に干渉しない部分が良いです。
開けた穴を切り繋ぐとこうなります。
そうしたら、室内灯用の銅板を別パーツで床板に取り付けます。
車体に開けた穴を通れる幅(今回は2mm幅)に銅板を切り出し、直角に折り曲げ、穴に通しながら位置合わせ・長さ調整をしましょう。
ガラスは付けなくて良いので、車体・床板を合わせながら調整してください。
銅板の位置を決めたら、その箇所に銅テープで貼り付け。
しっかり電気が流れるように銅テープを使います。
テープ両端に縦に切り込みを入れ、その片方ずつを折り込むと、追加した銅板にも電気が流れやすくなります。
銅テープはしっかり貼り付くとはいえ、中途半端に留めると粘着力よわよわなのでピッチリ密着させてください。
旧型客車の点灯化はこんな感じ
最後の最後に室内灯を組み込みましょう。
基本的には自作室内灯を使う前提で進めます。
今回は銅板集電なので、それに対応させた集電方式の室内灯を用意してください。
基本的な作り方はこちらと同じで、ブリッジダイオードの入力部分に銅板をはんだ付けします。
これを屋根に貼り付けたら、屋根・床板両側の銅板を合わせながら車体を組み立てて完成です!
通電状態が問題ないか、適宜テストしながら作業を行ってください。
銅板の位置や長さが合わない場合も、ちょっと折り曲げたり切り詰めたり作り直したりで調整しましょう。
旧製品の室内も明るくできる
それなりに時間はかかりましたが、なんとか集電化・点灯化を終えることができました。
線路に通電させるとこうなります!
電球色の暖かな光りが車内に灯りました!
車内が明るく光ることで、内装表現も一層引き立つというもの。
このために座席を塗り分けておいてよかった!
ただし成形色が黒以外の場合は遮光処理もしておきましょう。
一方、屋根から外す構造上、車体・屋根の境目から若干の光漏れが起きる可能性はあります。
夜景にしないと目立たないので、よほどのことでもなければ気にしなくても良いでしょう。
また、床板集電板に曲げ癖が残っていると台車集電板と上手く触れない可能性もあります。
車体を組んだ後で上手く光らない場合は、各集電板の位置や曲げ癖などを微調整してやってください。
さいごに
今回は、KATO旧製品のオハ31形を例に、集電非対応な旧製品を集電化・点灯化させ、室内灯を組み込む方法をご紹介しました。
やはり室内が光るのは見た目に効果絶大!
雰囲気が大きく変わりました。
基本的には、台枠上部や床板のピン周囲を開口し、穴を切り繋いで集電板を仕込むことになります。
その際は以下に気を付けて作業すると良いでしょう。
- 集電板を組み込んだ台車がストレスなく首を振るか
- 台車・床板・室内灯用の各集電板が正しく触れ合っているか
- ウェイトはしっかり絶縁できているか
- 先端尖りや銅板フチでのケガ注意
台車の首振りが損なわれれば走行に支障をきたしますし、絶縁できていないウェイトが銅板同士の橋渡しをしてしまうとショートを起こします。
全てが上手くいった時の満足感は大きいですが、リスクも付きまとうので自己責任かつ安全に作業願います。
本稿はこれだけでも完結しますが、オハ31形の江若鉄道タイプの製作工程は次回が最終回となります。
KATO旧製品ならではの作業が一つ残っているので、それをご紹介しようと思います。
今回はここまで!
ありがとうございました!