鉄道模型・プラモデルをよりリアルにグレードアップするテクニックに、スミ入れ、及びウェザリングがあります。
薄めた塗料を溝に流して線を強調するとスミ入れ、もっと広い範囲でいう汚し表現がウェザリングです。
そんなウェザリング専用の塗料が、全国のホビーショップで販売されています。

しかし、ウェザリング専用塗料にはプラスチックを傷めるリスクもあります。
とくにエナメル塗料・エナメル溶剤は気を付けないといけません。

プラスチックのヒビ割れを気にせずできる方法として水性アクリル塗料を考えていたところ、あの家庭用洗剤を一緒に使うことで実現しました!
水性アクリル塗料は溶剤成分が控えめなので、プラスチックを傷めにくく、比較的安全にスミ入れを行えます。

今回は、水性アクリル塗料で鉄道模型へスミ入れする加工例をご紹介!
乗降ドアの戸当たりゴムを黒でスミ入れしていきます。
エナメル塗料や極細マーカーともメリット・デメリットを比較してみましょう。

ちなみに、ガンダムマーカー極細でドアゴムを塗装したことも過去にあります。
マーカースミ入れについては↑のリンクからご覧ください。

※鉄道模型の改造・加工は自己責任で行ってください

薄めた水性アクリル塗料にアルカリ洗剤を!

水性スミ入れのためには自力で塗料を調合しないといけません。
今回は、水性ホビーカラー(溶剤系水性アクリル塗料)つや消しブラックを精製水で希釈します。
他の塗料(ラッカー・エナメル)より控えめですが有機溶剤が含まれることをお忘れなく!

人によって最適解は異なりますが、私は塗料1:水2に落ち着きました。
本来ならアクリル溶剤での希釈が好ましいものを、スミ入れ用と割り切って水で薄めました。

こうして3倍に希釈した水性アクリルにさらに加えるのが、水性スミ入れの要!
弱アルカリ性洗剤のかんたんマイペット!
おそらく多くの家庭にあるあのリビング用洗剤です。

塗料皿に2滴ほど垂らしてしっかり混ぜます。

毛細管現象ですぐに流れるエナメル塗料とは違い、水性アクリルはただ薄めるだけでは流れないと思ってください。
そこで、洗剤に含まれている界面活性剤を活用するのです。
これが塗料成分の結びつきを分解し、薄めた塗料を流れやすくする効果があります。

元々のボトルはスプレーになっているので模型用としては扱いづらいです(そもそも本来は模型用じゃない)。
いくらかスペアボトルに移しておきました。

同じくアルカリ性の洗剤としては、キッチンマジックリンも水性アクリル塗料に使えます。
ただしマジックリンは強アルカリ性です。
むしろこっちのほうがモデラーには有名かもしれませんね。

また、水性アクリルの下地に水性塗料スミ入れは避けるほうが良いです。
拭き取る時に下の塗料まで剥がれる可能性があります。
この場合は水で薄めたアクリルガッシュなど、水性エマルジョンで応用してください。

ちなみに、撮影前に試した組み合わせは以下の通りで、これらにマイペットを加えました。

  • 水性アクリル塗料+アクリル溶剤
  • 水性アクリル塗料+精製水
  • アクリルガッシュ+(アクリル溶剤+精製水)
  • アクリルガッシュ+精製水単体

試験段階では使用感にあまり変化はありませんでしたが、下地の素材や、塗装済み・未塗装かによって調合を変えても良いと思います。

細い筆を置く感じで溝に塗料を流す

では、水性アクリルの調合塗料でNゲージ車両のドアゴムを再現してみましょう。
撮影外でしれっと手に入れていた京阪大津線車両の新塗装を加工します!

塗る直前に調合塗料を撹拌し、塗料を筆(面相筆推奨)に取ってください。
取り過ぎたら塗料皿のフチやティッシュで調整します。
そして、スミ入れ箇所に筆を置く要領で色を乗せていってください。

正直なところ、アルカリ性洗剤を混ぜたところで流動性はエナメル塗料が上です。
一箇所から流そうとせず、ラインの2・3箇所に筆先を置くように。
いっそ細筆で溝をなぞるのも良いです。

通常の塗装以上に薄めているものの、10分もあれば乾燥します。
乾いたら水に濡らした綿棒を用意して、溝からはみ出た塗料を拭き取ってください。

薄めたアクリルガッシュなら水で落ちますが、水性アクリルは薄めても水だけじゃ落ちないかもしれません。
水だけでダメならマイペットまたはマジックリンに浸した綿棒で拭き取りましょう。
溝に入った塗料だけが残ったら成功です!

ドアとドア枠の段差は普通の綿棒では拭きづらいです。
普通と細めの綿棒を併用しましょう。
余裕があれば、洗剤付き綿棒で塗料を落として、水拭き綿棒で洗剤を拭き取り、最後に乾拭き綿棒を転がして表面の水分を取る、の順番でやってあげると確実です。

これで、水性塗料でもスミ入れができました!
しかもガンダムマーカーでやった時より線がシャープ!
個人的にはこっちのほうが気に入りました。

戸当たりゴムだけでなく、非常扉や点検蓋、貫通扉・幌枠などの強調や影にも使えます。
彫りが浅いと一緒に拭き取っちゃうこともあるので根気よく行きましょう。

うちだと京津線800系に前面非常扉があります。
今年の初めにようやく新塗装を導入できました。

このように、「薄めの塗料を流して、乾いたら濡らした綿棒で余分を拭き取る」の流れ自体はエナメルスミ入れと全く同じです。
私はウェザリングはあまりしないタイプですが、戸当たりゴムやグリルへの色差しはしたいもの。
もっといろいろやってみても良いと思いました。

液体塗料なので屋根やグリル・ルーバーへのウェザリングもできます。
加工する位置・設定・範囲にあわせて筆幅や色も変えてみてください。

水性塗料スミ入れのメリットデメリット

加工例をお見せできたところで、今回行った水性アクリルによるスミ入れのメリットとデメリットを考えてみます。

何よりのメリットは、溶剤系塗料の中でも安全寄りなこと。
溶剤の臭いが控えめですし、プラスチックが割れる心配もほぼないと考えて良いでしょう。
また、拭き取り後に線がシャープに際立ったのも好印象でした。

一方、デメリットとしてはエナメル塗料より流れにくい、水で薄めるほどプラスチックに弾かれやすいことでしょうか。
とはいえ自力で調合するので、下地の状況を見て塗料や希釈材料を選んで対処しましょう。
自前で調合するのも手間ですが、転じてメリットにもなり得ると思っています。

もし、これからも同じ調合で使う見込みがあれば多めに作り置きしましょう。
その際に混ぜる塗料・溶剤・洗剤の量は適宜調整してください。
調合した素材もメモしておくと後で困りません。

他のスミ入れ方法も考える

次は、以前にやったガンダムマーカー極細でのスミ入れについて。
コピックマルチライナーや、その他の極細ペンも使いどころがあるでしょう。
溝をペンでなぞるだけで簡単に色が入り、はみ出たら消しゴムで消せます。

マーカースミ入れのメリットで思い付くのは、とにかくお手軽なこと。
調合なんかしなくて良い上に片付けの手間もないですもの。
思い立った時にすぐ始められて、作業後もペンをしまうだけです。

デメリットとしては、マーカーと溝の太さに注意したいです。
ガンダムマーカーも十分細いですが、溝の奥まで色が入りにくいこともあり得ます。
そうなると気持ち太めの線になるやもしれません。

また、広範囲に汚れを表現するウェザリングにも向きません。
細いペンは溝専用と割り切るくらいがちょうど良いでしょう。

そして、スミ入れ素材の王道とも呼べるウェザリング専用塗料について。
タミヤエナメルのスミ入れ塗料や、クレオスの油彩系「Mr.ウェザリングカラー」などが挙げられます。
どちらもスミ入れ専用として複数カラーが展開され、拭き取りも各種専用うすめ液で行います。

ウェザリング塗料のメリットは、やはり流動性の高さでしょう。
筆を溝に置くだけでスムーズに流れるのはやはりウェザリング塗料の良さですね。
サラサラな塗料ですので広範囲のウェザリングもOK!

デメリットは、プラスチックにヒビが入って最悪割れるリスクがあります。
未塗装や、薄いまたは彫りが深いプラ素材、塗料や溶剤の流しすぎには注意しましょう。
鉄道模型のプラならたぶん大丈夫だと思いますが念のため。

もう一つ考えられるデメリットはコストですね。
ウェザリング専用に調合済みで確かに楽ですが、塗料とうすめ液が両方要ります。
塗料1色とうすめ液だけならまだしも、色を増やすとさらに少しずつ費用がかかります。

水性塗料の調合、マーカースミ入れ、ウェザリング塗料、どれも利点と注意点があります。
ウェザリング控えめな私には、極細ガンダムマーカーと調合塗料がなじみました。
自身のやりたいことや、よく使っている塗料に合わせてスミ入れ方法もご研究ください。

さいごに

なんにせよ、これで水性塗料スミ入れの私なりの最適解が整いました!
水性ホビーカラーベースのスミ入れ塗料は作り置きしたので、ちょくちょく使っていこうと思います。

水性塗料スミ入れもやることはエナメル塗料と一緒!
薄めた塗料を流して、乾いたら溶剤濡らし綿棒で拭き取る。
溝の中にだけ塗料が残って、より実感的な見た目を再現できます。

私が検討していた水性塗料の調合は、水性アクリル塗料または水性エマルジョン+アクリルうすめ液または水。
鉄道模型で水性塗料をもっと活用できたら良いなと。
薄めた水性アクリルは、水・マジックリン・マイペットで拭き取れるのでぜひご検討ください。

ということで今回はここまで!
ありがとうございました!