Nゲージ鉄道模型をより良く楽しむためには、時に電子工作の技術が必要な時もあります。
昨年は初めて室内灯を自作したり、電球ライトユニットをLEDに交換したりと試してみて、見事に成功しました!
今なら次のチャレンジに進めそうな気がします。

ということで、今回から数回に分けて、Nゲージのパワーパック(コントローラー)の自作についてご紹介します!
実はNゲージのパワーパックも自分で作れちゃうんです。

とはいえ、イチから回路を考えて基盤をプリントして…、というのは私には無理です。
そこで、秋葉原の大手電子部品ショップ秋月電子通商が販売している、PWM制御のDCモーター制御キットを利用しました。

本稿では、秋月電子のPWM制御キットを組むところ(一部応用あり)と、今後の作業で必須になる、電線の被覆の剥き方を解説します。
どう考えても鉄道模型メーカー等が意図しない遊び方だと思うので、全て自己責任で作業願います。



秋葉原でお安く手に入る回路キット

まずは、そのキットがどういうものかを簡単にご覧いただきましょう。
秋月電子通商「PWM(スイッチング)方式 DCモーター速度可変キット」です。
なんとこれがたったの500円

これを開けると、専用基盤と付属部品に加え、両面まで丁寧な説明書が揃いぶみ。
簡易回路ということで、意外に少ないパーツとコンパクトな基盤で、モーター制御用のユニットを組み上げることができます。
「本キットで駆動できるモーターはDC(直流)ブラシモーター」と説明書にありますが、鉄道模型のモーターも直流モーターなので、これで動かすことができちゃいます。

NゲージにおけるPWM制御

PWM(Pulse Width Modulation)制御とは、パルス幅変調制御のこと。
回路に組み込んだトランジスタをオンオフのスイッチとして機能させ、1周期中のオンオフの比率(デューティ比)を操作することで、実質的な出力電圧をコントロールする方式です。
実車の鉄道でいうとチョッパ制御に近い感じです。

子どもの頃、部屋のスイッチを点けては消して点けては消して「カチカチカチカチ×n…」ってやりまくって、親に怒られた経験はありませんか?
あのスイッチカチカチを超スピードで行うのがPWM制御と考えれば分かりやすいでしょう。

鉄道模型のパワーパックでいえば、KATO「スタンダードSX」「ハイパーDX」TOMIX「N-1001-CL」(ダイヤル型)「N-DU101-CL」(ワンハンドル型)などに、PWM制御が採用されています。
ダイヤルを回した時、旧型のパワーパックでは線路に流す電圧を調節していましたが、PWM制御パワーパックではデューティ比を調節します。

電源の電圧が12Vで、デューティ比が例えば50%の場合、実質的には6Vとしてレールに出力します。
一応12Vだけど実質的には◯V」これが重要です。
このおかげで、列車が止まっていてもライトは光る常点灯機能が実現しています。

もっと複雑な回路構成ならデューティ比を0から100%まで操作できると思いますが、秋月のPWMキットは簡易回路のため、デューティ比の範囲は約2~99%
完全なオンオフはできません

が、鉄道模型では常点灯機能が重宝されます。
「車両は停止してるけどライトは点灯」を実現させられるので、デューティの完全なオンオフができない仕様鉄道模型にはむしろ好都合でしょう。

説明書に従って部品をはんだ付け

キットの組み立て方は、専用基盤に指定された位置に、該当する部品をはんだ付けしていくだけ。
はんだごてとはんだがあればあっさり終わってしまいます。
ダイオードなど、極性がある部品の向きは間違えないように注意しましょう。

キットの説明通りに、途中まで組んだ様子がこちら。
鉄道模型への利用にあたって素組みから変更する部分があります。

それがボリューム(VR1)
キットに付属しているVRは、青い小型の半固定抵抗(100kΩ)です。
基盤に直接はんだ付けし、ちっちゃいダイヤルを回して抵抗値を可変させる部品です。
そうするとモーターの速度を制御できるようになります。

しかし、鉄道模型のパワーパックにはケースが必要で、そのケースにダイヤルを取り付けなければなりません。
基盤に直接はんだ付けする半固定抵抗は残念ながら使えません。

そこで用意するのが、パネル取付用ボリューム(Bカーブ100kΩ)です。
抵抗値の変化パターンによってA・B・Cのカーブがありますが、鉄道模型にはBカーブが最適です。

穴の開いた接点3箇所に1本ずつ電線をはんだ付けし、その電線を基板の「VR1」にはんだ付けしましょう。
その際、ダイヤルを時計回りに回した時に速度が上がるように取り付けてください。
これで元々の部品と同じ機能を有しつつ、パネルへの取付もできるようになりました!

交換・増設可能な部品もある

必須ではありませんが、「C1」に取り付ける積層セラミックコンデンサーも別売品に交換しました。
PWMキット中には3つの積層セラミックコンデンサー(リード線のついた青い部品)が同封されており、「C1」のコンデンサーは1,000pFの静電容量を有します。
それにより、出力されるパルスの周波数は約10kヘルツ(Hz)となります。

メーカーにもよりますが、10kHzはモーターノイズの可聴域内になるため、モーターから発生する音が気になるかもしれません。
そこで、「C1」に取り付けるコンデンサーを560pFに交換してみました。

単純計算ですが1,000pF÷560pF=約1.7810kHzの1.78倍は約17.8kHzになるので、周波数を上げることができます。
逆に、1,000pFより静電容量の大きいコンデンサーに替えると周波数が下がるらしいです。

後で手持ちの車両を走らせたところ、マイクロエースの一部車両のモーターのみごくわずかにモーターノイズが聴こえましたが、私の環境ではほとんどの車両のモーターのノイズは聴こえなくなりました。

あとは、Nゲージ向けなら付ける必要はないかもですが、小型のヒートシンクトランジスタにネジ留めしました。
これがあるとトランジスタの排熱を逃がしやすくなるのですが、Nゲージ用の電源電流は1A前後だと思うので、それならヒートシンクは無くても良いかもしれません。
心配ならつけてみても悪くないかも。

電源は集約できる

そうして、基本となるPWMユニットが完成しました!

青いブロック状の部品が端子台になっており、モーター用電源(POWER)PWMユニット用電源(LOGIC)出力(OUTPUT)の各部分にそれぞれプラスマイナスの電線を差し込み端子台上部のネジを回して固定すれば電気が流れるようになります。
主に9V電池ACアダプター電源に使うことになるでしょう。

このままでは電源が2つ必要になり、コスパが悪いです。
しかし、POWERとLOGICは短絡させてもOKです。
そうするとモーター用電源とPWM用電源を同じにできるので、一つの電源だけで動かせますよね。

POWERとLOGICを短絡させるには両者のプラマイ端子を電線で繋ぐのですが、端子台に電線を突っ込むと後が控えているので、裏面に電線を追加ではんだ付けすると良いでしょう。

一応、このキットのモーター用電源は1~30VPWM用電源は7~15Vが指定されており、動かすモーターの最大電流は3A以下と指定されています。
が、Nゲージの出力電圧は最大約12V電流も1A前後がほとんどなので、Nゲージ向けなら定格は難なくクリアできるはずです。



電線の被覆の剥き方

さて、これでPWM制御の根幹は出来上がりましたが、これをどうやって接続すれば良いんでしょうか?

もちろん、電線(リード線)を介して別部品などと入出力端子を接続させれば良いのです。

では、その電線ってどうやって部品と繋げば良いのでしょうか…?

ということで少し話を逸らして、電線の被覆の剥き方も覚えていきましょう。
これができなければ先には進めません。
ワイヤーストリッパーがあると楽ですが、ニッパーでもできます。
ニッパーに加えて私はカッターを併用しました。

あらかじめカットしておいた電線の、端から3~5mmくらいの位置をニッパーで挟みましょう。
この時に力を入れると切断してしまいます。
電線を回しながら、弱い力で、甘噛み程度でニッパーをはみはみしてやってください。

被覆にニッパーの噛み跡が付いたらカッターに持ち替え。
電線を回しながら、噛み跡を刃でなぞってください。

刃を通していくと、通電する芯線が隙間からチラ見えしてくると思います。
したら被覆の端を引っ張り、被覆を引き抜いてください。

気になるなら、剥いた後の被覆を縦に真っ二つに切ってみて、芯線の切れ端が無ければ成功です。
被覆が上手く引き抜けない場合は、再度ニッパーやカッターの刃を被覆に入れ、徐々に切れ込みを入れていってください。

そうして剥き出しになった金属線を別の部品に付けたり、引っ掛けたり、巻き付けたりして、それをはんだを流すことで、電気の通り道ができていきます。
芯線はめちゃくちゃ細い線が束になっており、バラバラになりやすいので、ねじってまとめておくとバラバラになりにくく済みますよ。

一方、刃を入れ過ぎてしまうと、被覆を剥いた時に芯線の一部も一緒に切れてしまいます。
そうなったら残念ですがやり直しです。
作業を進めながら何度もトライしてみてください。

このように、電線の被覆を剥く作業は、鉄道模型の電子工作においても必ずやらねばならない、基本だけど重要なタスクではないでしょうか。
そういえば、学校の技術の授業で、はんだ付けや被覆剥きなどをやったことがありませんか?
当時は授業だから仕方なくやってたかもしれませんが、鉄道模型に意欲をお持ちの今なら、当時よりもっと上手くなれると思います。

延長コードを自作アダプターに改造

電線の被覆剥きがある程度できれば、次のステップに進めると思います。
KATO・TOMIXそれぞれのフィーダー延長コードを、自作パワーパック向けの出力ケーブルに改造しちゃいましょう!
本稿はKATOの延長コードの写真で進めます。

詳しくは後日解説しますが、今回私が作ったパワーパックは、2社のレールどちらにも使える代わりに、フィーダーコードがそのままでは使えない作りにしています。
そのため、各社の延長コードを短く切り、電線の芯を剥き出しにした状態アダプターコードを作る必要があります。

さて、延長コードの片方の端部には、フィーダー端子の差込口(メス端子)が取り付けられていますよね。
その差込口側の電線を、自分が使いやすい長さでバツっと切断しましょう。
ひと思いにやっちゃいましょう!

両社とも、延長コードの大部分はプラスマイナスがくっついて離れていません。
それを適度に割いてプラマイ独立させ、それぞれ被覆を剥いてください。
正しく被覆を剥けたら、芯線をねじれば完成です!

ちなみにこの時、被覆を剥いた先端をほんの少し曲げ、はんだでコーティングすると、芯線がバラバラにならないだけでなく、出力端子から抜けにくくなります。
この一手間があると後で扱いやすくなると思うので、面倒でも試してみると良いでしょう。



できたばかりの回路を動かしてみよう

話をPWMキットに戻しまして。
実は、この状態で既にモーターが動くようになっています。
試しにNゲージを動かしてみましょう。

まだお試しなので、電線同士はクリップでつなぎ止め、9V電池の端子にクリップを直接挟む方法で通電させますのでご了承を。
それぞれの端子に電線を介してコードを接続し、電池の先にクリップを挟んで通電させると・・・?

おぉぉ!!
点いた!
ダイヤルは回していない時、デューティ比は最低値の約2%です。
この状態ではモーターは動きませんが、電圧自体は9Vなので各種ライトが明るく点灯しました!

さらにダイヤルを回してみたら、無事にNゲージが走行しました!
しかも割と低速走行が効いています。
ここまでの工程は成功です!

いろいろなメーカーで試してみたところ、TOMIX、マイクロエースと、意外にもMODEMOの車両と相性がよく、しっかり点灯して低速走行も良くできています。
車両の個体差やレールの状態も関わるので、一概には言えませんがね。

また、今回は試験的に9V電池を使っていますが、最終的にはACアダプター(12V・1.0A)も使います。
そうしたらまた使用感は変わってくるんじゃないでしょうか。

ケース加工に続く

自作パワーパックを作るためにはまだまだやることがありますが、長くなりすぎるのでいったん区切りましょう。
今回は、秋月電子通商が販売している「PWM方式 DCモーター速度可変キット」を一部応用の上組み立てた手順と、これから必須になる電線の被覆の剥き方を解説しました。

比較的簡単なキットとはいえ、自分で作ったPWMユニットで列車に光が灯り走り始めた瞬間の感動は筆舌に尽くしがたい!
ただし、今のままでは進行方向の切り替えはできないのと、トラブル時に回路の安全を保つ保護回路もない状態です。

ここから鉄道模型向けに電子部品を追加し、それらを収めるケースを加工していくことになります。
やることは多いですが、チャレンジする価値はあると思います。

とりあえず今は、自分で作ったPWMユニットで車両が走る感動を味わえれば十分!
今回はここまで!
ありがとうございました!

参考

秋月電子通商公式サイト
トップページ
※キットそのものに関してはサイト内で「PWM(スイッチング方式) DCモーター速度可変キット」と検索願います